10月19日から22日までロサンゼルス近郊のサンタモニカで開催されたDigital Hollywood Fall 2009は、ハリウッドの映画スタジオ、テレビ局、広告代理店などが集まるコンテンツ、メディア関連のカンファレンスだ。現在、米国のコンテンツサプライヤーが注目しているのは、インターネット動画配信をいかにマネタイズするかという点である。
インターネットの動画配信市場では、YouTubeが圧倒的なシェアを保持している。米国調査会社comScoreによると、YouTubeの動画視聴回数は2009年8月の1カ月間で100億回を超えた。2008年7月は月間約50億回だったので、1年で2倍に増えていることになる。オンライン動画視聴が増加するにつれ、動画サイトへの広告需要も高まっている。存在感を増すYouTubeの動向を取材するために、Googleが出席するセッションにいくつか参加し、その動画配信のビジネス戦略について聞いた。
Googleの動画コンテンツをアグリゲート(集約)し、広告配信するアド・ネットワークを主管するGoogle Content Network部門のマネージャー、Bruce Falck氏は、「インターネットメディアが拡大する現在、重要なビジネスコンセプトはターゲティングである」と語る。オンライン上で増加する動画コンテンツの中から自分の好みのものを探し出す検索サービスが重要性を増し、検索連動広告市場の成長を牽引するだろうと考えている。Googleは、動画広告市場でもAdWordsと同じような仕組みによる収益化を考えているようだ。
データの収集、分析への偏重に疑問を投げかける人もいた。Googleのマーケティング部門ヘッドであるDavang Shah氏は、「データ分析に重きを置き、出稿広告の費用対効果を厳しく評価する広告クラアイントが増えている」としながら、「広告出稿する目的やゴールが明確でないと、データ分析に価値はない」と指摘する。広告出稿の目的やターゲットが代理店やメディアと共有されていないと、数値評価だけに終わってしまい、反省点を生かしたビジネス拡大につながらないと懸念しているようだ。
Falck氏は、「Googleの役目は、理論武装した広告クライアントに的確な広告枠を提供することだ」と語る。彼は、アドエクスチェンジ(広告取引市場)機能がGoogleにとって重要だと考えている。「アドエクスチェンジは、広告クライアントのニーズに最適化した広告枠を提供できるし、メディアにも適正なクライアントを紹介できる」と語っていた。
YouTubeのStrategic Partnerships部門ディレクターであるKevin Yen氏は、動画コンテンツ自体がプロモーションツールになるという見解を示し、Promote Videoという動画のリスティング広告機能を紹介した。彼は、コンテンツサプライヤーは、デジタル流通の多様化をビジネスチャンスとしてとらえるべきと主張し、そのために「コンテンツの著作権は、シンプルにしたほうがよい」と語った。
企業の動画コンテンツが広告ツールになってしまうと、現在の広告の概念が変化するのではないかという議論もあった。たとえば、広告枠を販売するメディアの役割が低下するのでは、といったものだ。Shah氏は、「今我々が見ているような広告手法は徐々に減少するだろう。次世代広告では、コミュニケーションが重要になる。効率的なコミュニケーションツールを開発した企業が、広告市場の覇権を握るだろう」とし、広告業界が現状のままでは生き延びることができないと予測した。また、Falck氏も、「今後2年間で広告のビジネスモデルは大きく変わるだろう」と述べていた。
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