矢野経済研究所は11月12日、「情報セキュリティ機器ツール市場に関する調査結果2008」を発表した。年率10%で成長し、2011年度には2856億円を超える規模になるという。
この調査は、6月から10月にかけセキュリティ専業ベンダーおよびシステムインテグレーターを対象に、矢野経済研究所の専門研究員による直接面談、アンケートによるヒアリング、文献調査を併用して実施した。
調査結果によると、2007年度の情報セキュリティ機器ツール市場は金額ベースで前年度比14.8%増の1714億4300万円となった。2008年度は同16.4%増の1995億6000万円となる見込み。2009年度以降は年率10%程度で拡大し、2011年度には2856億4600万円に達すると予測している。
2008年度の需要分野構成比を金額ベースでみると、一般ユーザーが22.5%、製造業が16.3%、金融、保険が12.0%、流通が11.3%、通信が9.4%、公共が9.0%、サービスが7.5%、医療福祉が6.3%となった。矢野経済研究所では今後の取り組みの鍵として、新技術を用いた新製品による大企業向けの追加需要の掘り起こし、中小企業などに焦点を当てたソフトウェアやハードウェアの開発を挙げている。
大企業向けの需要の掘り起こしに期待がかかる新技術の一例として、フィンガープリント技術を用いた機密情報漏洩対策「Data Loss Prevention(DLP)」などが挙げられるという。実際、2006年頃から2008年にかけて大手セキュリティ専業ベンダーによるDLPベンダーの買収事例が相次いでいる。
中小企業については、セキュリティに対する危機意識の甘さや投資資金確保の難しさ、さらには人材不足などの側面からセキュリティ対策が十分になされていない状況がある。また、セキュリティ専任者が不在なことなどから、たとえ対策に有効な機器ツールを導入していても正しく運用できていないケースもある。このため、ベンダーによっては中小企業向けの機器ツールを開発するよりも、サービスとしてセキュリティ機能を提供する方が効果的とも考えられる。
中小企業のセキュリティ対策需要を取り込んでいくには、セキュリティ環境を新たに構築する際のコストメリットの訴求や、セキュリティの重要性を啓発し、危機意識を向上させる取り組みなども重要になるとしている。
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