一方、ウェブ解析担当者という人材を十分に生かすには、経営層の「エグゼクティブスポンサー」をウェブ解析プロジェクトに巻き込む必要がある。というのも、情報に基づいて意思決定を行うことが重要なのだという認識を組織に浸透させるには、トップダウンからの指示が最も有効だからだ。
第3の原則が「仕組み化」である。仕組み化によって、現場担当者がウェブ解析データをもとに問題点を発見し、行動への自主判断ができるような自立性を促進することができる。では、どんな仕組み化が必要なのか?
まずひとつ目にあげられるのが、ウェブ解析データのレポート配布の仕組み化である。ウェブ解析データを活用するためには、現場担当者が全員ウェブ解析ツールのエキスパートになる必要はない。
現場担当者の役割に応じて、適切なタイミング、例えば週次や月次の定期ミーティングや、広告キャンペーン終了時などに、今まで慣れ親しんだエクセルなどのフォーマットでKPIのレポートを配布してあげることで、データを見るという習慣を促すことができる。
次にあげられるのが、社内ポータルなどによる社内の情報共有の仕組み化だ。社内でウェブ解析データの活用が浸透するほど、ウェブ解析の理解度にばらつきが出て、たくさんの質問にウェブ解析担当者が時間を割くことになりかねない。そこで、ウェブ解析初心者向けの入門ドキュメントや、FAQ、過去プロジェクトのサマリー、新しく追加されたウェブ解析の機能の紹介など、現場担当者が自由に情報を吸収できる環境を整えることで、社内浸透の加速度をあげることができる。
本編では、ウェブ解析担当者の重要性が繰り返し述べられているが、ウェブ解析を経験したことのある人材を確保することはなかなか難しい。となると、社内で育成する必要があるが、どんなバックグラウンドを持っている人材がウェブ解析担当者に向いているのか?
以前、米国本社のコンサルティンググループのトップに、次のような質問をしたことがある。「もし、ウェブ解析の経験者を雇うことができなかった場合、どのような経歴を持った人材を雇えばよいのか?例えば、ウェブマスター経験者と、ウェブの経験の無いマーケッターがいた場合、どちらを雇うべきか?」彼は迷うことなく「マーケッターを選ぶ」と答えた。その理由はこうだ。「ウェブ解析に必要な技術的な知識などは、後からでも詰め込ませることはできるが、ビジネスの理解や洞察力というものは、すぐに身につくものではない。」
すなわち、ウェブ解析で取得できるデータというのは、ビジネスを最適化するために活用されなくてはならないので、ビジネスとしてどんなデータが必要なのかを考えられる人間が必要だということだ。システムの導入など、より技術的な知識が必要な時には、技術担当者のサポートを得られれば良いという訳だ。
とは言え、これからウェブ解析を担当する方にとっては、具体的に何を勉強すべきなのかは、気になるところだと思う。そこで、最後に私が日頃コンサルティングする際に、スムーズに仕事が進むと感じられる担当者の方々に共通している知識・スキルを箇条書きで紹介したい。
先日、とあるウェブコンサルティング会社の方々との会話の中で、「クライアントの担当者だった方で、うち(コンサルティング会社)に転職したがる人が少なくない」という話を伺った。
というのも、数年かけてコンサルティング会社との窓口となり、一生懸命ウェブについて勉強し、ようやく結果も出て仕事が面白くなってきた時に、社内人事で全く関係ない部署への異動を命じられた方が、もっとウェブの仕事がしたいと専門会社へ転職を希望するのだという。
企業ウェブサイト活用の際の障害として、「専任の人材を置く余裕がない(45.2%)」「社員の活用意欲やスキルリタラシーが足りない(20.2%)」(インターネット白書2007)というデータがあるが、根本的な原因として企業、特に経営層のウェブに対する価値の理解の欠如と、スペシャリストではなくジェネラリストを育てる日本企業の風潮が、貴重なウェブ解析専任者の芽を摘んでいる可能性があるという事を、残念に思ってならない。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力
すべての業務を革新する
NPUを搭載したレノボAIパソコンの実力
日本のインターステラテクノロジズが挑む
「世界初」の衛星通信ビジネス
先端分野に挑み続けるセックが語る
チャレンジする企業風土と人材のつくり方
NTT Comのオープンイノベーション
「ExTorch」5年間の軌跡