ウェブサイトを設計する際には、ユーザーが求めている情報に早くたどり着けるようにするために、情報の配置などに注意する必要があります。この連載では、実際に被験者に課題を与えた上でサイトを閲覧してもらい、アイトラッキングツールを利用してユーザーの直感的な行動を分析します。ツールはTobii Technologyの「Tobii Eye Tracker」を利用します。
アイトラッキングとは、ユーザーの視線の動きを感知してモニターのどこを見ているのかを記録するシステムです。ウェブサイトのユーザビリティ改善として使われることも多くなってきましたが、視線の動きが可視化されるというインパクトの強さに惑わされているケースもありそうです。
たしかに被験者の視線はウソをついていませんが、被験者の属性、心理状態、リテラシーなどによってその結果は異なってきます。たとえば、ウェブページを見る視線はF字型に流れるという分析結果があり、左上から右へ水平方向に動いて、次にその下の段を左から右へと移っていく、と言われています。たしかにデータを平均化するとそのような結果になるのかもしれませんが、ユーザーのリテラシーの差は想像以上に大きく、ユーザー属性によってアイトラッキングの結果は異なってくるのではないか、というのが今回の調査の出発点です。
今回のアイトラッキング分析では、「ある本をネットで探して購入する」(古本やオークションは不可)という課題を2人の被験者に行ってもらいました。探してもらった本は絶版のものでAmazon.co.jpでは取り扱っていませんが、一部のオンライン書店や出版社サイトでは今でも購入できます。
ネットユーザーの大きな支持を得ているAmazonで欲しい本がなかったときにユーザーはどのような行動を取るのでしょうか。
まずは下記の動画をご覧ください。これは被験者A(20代、男、検索リテラシー低)の実際の検索行動の様子です。青い丸と線は視線の動きを、赤い×印はクリックした場所を示しています。視線の滞留時間が長いほど青い丸は大きくなります。なお、動画に音声はついていません。
まずGoogle検索で書籍名を入力しAmazonにアクセスしたものの、在庫がなかったため一度検索結果画面に戻りました。検索結果を上から順番に見ていけば、上位3番目のサイトから取り扱っているオンライン書店に行き着くことになるのですが、そういった地道なことはせずに、上からさらりと見て自分が知っているサイトや興味を惹かれたところにアクセスするという、ほとんど勘に任せた検索行動を取っています。
その後「書籍名 新品」などで検索するものの、なかなか購入できるサイトが見つかりません。以前利用したことがあったセブンアンドワイを思い出し、「書籍名 セブン」で検索したところ、運良く在庫があり、それを注文したところで課題をクリアしました。なお、要した時間はおよそ8分です。
ほかの検索リテラシーの低いユーザーに同じタスクをしてもらったところ、同様の特徴が見られ、必ずしも丹念に検索結果の1位から見ていくわけではないことが分かりました。これらのユーザーにとって重要なのは、自分に馴染みのあるキーワードや興味の惹かれたキーワードであり、検索結果の順番はさほど影響を与えていないようです。
続いて、検索リテラシーの高いユーザーの検索行動を見ていきます。
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