デジタルマーケティングの世界的イベント「ad:tech tokyo」初日の9月2日、ブログのマーケティング活用に関するパネルディスカッションが開かれた。パネリストはライブドア 執行役員 メディア事業部長の田端信太郎氏、サイバーエージェント アメーバ事業本部ゼネラルマネージャーの小池政秀氏、ブログウォッチャー 代表取締役社長の羽野仁彦氏。モデレーターはアジャイルメディア・ネットワーク 代表取締役の徳力基彦氏が務めた。
企業によるブログ活用を推進する立場の4人が登壇したため、徳力氏はあえてネガティブな話題をパネリストに振った。ブログといえば、コメント欄が炎上して逆に企業のイメージが崩れてしまうという不安もつきまとう。企業が100%コントロールできないメディアをあえて活用するメリットはどこにあるのか。というのが最初の質問だ。
これに対してライブドアの田端氏は、旧来の雑誌や専門誌、テレビなどのメディアが消費者の共感を喚起できなくなってきており、そこを埋めるのがブログの役割だと主張した。
「たとえば最近、若者に車が売れないという話があるが、テレビCMを流したり、広報が自動車ライターを接待をして自動車専門誌にいい意見を出してもらったりしても、実際の生活者である若者にはほとんど影響力ゼロだし、認知していない。例えばCMでおすぎが映画を褒めている。これはどう見たって業界のインサイダーだと、よほどの馬鹿な人じゃない限り、ほとんどの人が見抜いている。そんな中で結局どの意見が一番信頼できるのかというときに、消去法かもしれないが、ブロガーが浮上してきている。特にデジタル系のガジェットなどは、いま日本で一番詳しい、あるいは愛情を持って本当のことを書いている人はブロガーだ」(田端氏)
ブログといえば炎上。炎上が怖いからブログは嫌だ。以前はこのような思考停止に陥る人が多かったが、最近は減ってきたという。「結局、何か新製品を出したらネット上で書かれる。どうせなら、陰口をたたかれるよりは積極的にその場に行って、少なくとも欠席裁判にしなければいい」(田端氏)
サイバーエージェントの小池氏は、月間ページビュー100億、月間利用者数2000万人、ブログ開設者600万人という規模の大きさをアピールした。「それぞれのブロガーがインフルエンサーになっており、我々はインフルエンサーに情報を届ける場の整理をしている。そこに情報を提供することは非常に効率がいいのではないか」(小池氏)
小池氏も田端氏と同様に、企業がブログに理解を示し始めたと感じている。「ここ1年を見てみると、企業側も非常に寛容になっている。というか、昔よりも慣れてきていて、悪い結果も良い結果もマーケティングに生かすいう文化が根づいてきた」(小池氏)
ライブドアとサイバーエージェントは自社のブログサービスを利用しているブロガーに、広告主とのタイアップで記事執筆を持ちかける。それをブロガーが取り上げると、企業のプロモーションにつながるというビジネスだ。広告主からの案件をブロガーへ告知する際に広告掲載料が発生するため、ブログ記事自体を販売しているわけではない。
ブログウォッチャーは上記の2社とは異なり、ブログ事業者ではない。すでに存在するブログ記事をまとめて、企業のプロモーションに活用している。点在するクチコミ情報を一カ所に集約することで企業の商品やサービスにスポットライトを当てる。
ブログウォッチャーの羽野氏は、インターネット上のクチコミに対するユーザーの反応が大きく変わってきたと実感しているそうだ。「口コミの元が、知人や友人の本当のリアルな口コミから、だんだんとインターネットのブログ、口コミサイトに移ってきた。そういったユーザーの変遷が、企業がブログを使い始めようとしているきっかけになっている」
羽野氏は2006年10月のインフォプラントによる調査データを紹介した。「友人、家族の次に口コミサイトが信頼されている。お店の店員の言葉よりも、実はインターネット上のサイトに載っている情報を信じる。ブログが日本に上陸して3年ぐらいたってから、インターネット上の口コミがユーザーに対して大きなインパクトを与えるようになってきた」(羽野氏)
続いてパネルディスカッションは、企業とブログの関係において避けて通れない「重い話」(徳力氏)、ブログのやらせ問題に移っていった。ブログ記事の影に企業の存在が見え隠れするとトラブルに発展することもある。ブログ事業者はどうやってこの問題をクリアすべきなのかと、徳力氏が質問を投げかけた。
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