ニフティは1月27日、「ニフティクラウド」の提供を開始した。同社のサービス基盤を利用した本格的な大規模クラウドサービスだ。
ニフティはこれまでコンシューマー向けサービスの提供を主な事業としてきたが、新たにクラウドサービス事業への参入を決断したのはなぜなのか。その背景や、ニフティクラウドの優位性、今後の展開などについて、同社IT統括本部 基盤システム部 課長の上野貴也氏に話を聞いた。
上野氏によれば、ニフティは2006年より社内向けインフラの仮想化に取り組んできた。同社ではコンシューマー向けに多数のサービスを展開しているため、それを支えるITリソースは実に膨大になる。その中でコストを抑えつつ効率的にネットサービスを立ち上げるためには、サーバの仮想化が避けて通れない道だった。2006年からスタートした仮想化への取り組みは順調に進み、現在ではほぼ全ての新規サービスが仮想環境上で展開されるようになり、従来のサービスも一部を除いてほとんどが仮想環境に移行しているという。
ITインフラを効率化した結果、ニフティは新サービスを極めて迅速に展開できるようになり、ハードウェアリソースの最適化やコスト削減を実現したという。ニフティクラウドはこうした試みの延長であり、最適化されたITリソースを外部の顧客にも使ってもらいたかったことから実現したと上野氏は語っている。
「ネットサービスは市場の変化が激しく、規模などの予測が極めて難しい面があります。そのような条件に対し、私たちインフラ部門がどう対応していくかと考えたとき、仮想化がひとつの答えになりました。ニフティクラウドは『5分でセットアップできます』を売り文句にしていますが、これはもともと社内におけるニーズでもありました。ニフティクラウドは、ニフティが戦っていくために必要なインフラだったのです」(上野氏)
しかしニフティにとっては、クラウドのようなインフラサービスは全く新しいチャレンジであり、Amazon Web Servicesなどの強力な先行サービスも存在する。なぜ今回、もともとの得意分野であったプラットフォームをサービスとして提供する形態「PaaS」(Platform as a Service)や、ソフトウェアを提供するSaaS(Software as a Service)でなく、あえてインフラを提供する「IaaS」(Infrastructure as a Service)という新領域を選択したのだろうか。上野氏は次のように説明してくれた。
「それは単純に優先順位の問題で、まずは私たちインフラ部門が特にノウハウを持つ分野から始めたということです。ただ、おっしゃるようにネットサービスのための素材はニフティの強みなので、インフラの上で提供するサービスの提供にも順次取り組んでいきたいと考えています」(上野氏)
では、他社のサービスに対してニフティクラウドが特に優位な点は何だろう。「やはり一番は国産であることです」と述べる。ニフティクラウドを支えるデータセンターは国内に設置されており、海外サーバにアクセスする場合に比べれば極めてレイテンシが低い。この点は実際に利用しているユーザーからも極めて高い評価を得ているという。その他、日本語で使えることやシンプルで使いやすいことなども大きなイニシアチブである。
「ニフティクラウドでは、エンジニアが新しいトレーニングをする必要なく利用を始められます。UIの開発などでも使いやすさについては特に重点を置いています。ごく小規模な環境から、時間単位で利用を始めることができるので、テストや開発環境として利用しているケースもあります。新しいITの使い方が見えてくるような気がします」
上記のような運用面でのメリットに加えて、サービスやアプリケーションの開発者に対しても、ノウハウの提供などのサポートを積極的に行っていく予定だという。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力