サイバーエージェントが運営するブログ事業、通称「アメブロ」の「Ameba(アメーバブログ)」が、ここにきて収益を伴う有力事業としての存在感を高めてきた。
2008年に入ってから月間30億ページビューを突破。国内サイトでトップ10入りする可能性も現実味を帯びてきた。4月にはこれまでの広告事業に加え、課金事業も開始。同社社長の藤田晋氏は「収益改善に本腰で取り組み始めた」と自信を見せる。
業界関係者の試算では国内の著名人ブログは約2000あるとされるが、すでに約1500の著名人ブログを抱えるという強力なキラーコンテンツホルダーになったことも注目されている。
これまで、「成功しない」「赤字の垂れ流し」など批判的な声が多かったアメブロは黒字化を果たし、同社の有力事業として定着するのか──。藤田氏に聞いた。
ページビューの伸びは予想および目標値を大幅に上回っています。2007年の秋頃から収益改善にも取り組んでいます。
まず、我々の得意とする広告で収益基盤を固め、これに課金事業を加えて、最終的にはeコマース展開まで考えています。現状は特に、広告の中でも人気ブロガーの公式ブログを多数抱えている強みを生かしたクチコミ促進サービス「AmebaPR」に注力しており、アメーバ関連事業は今後も四半期(2008年9月期第1四半期は7億4300万円の売り上げ)ごとに高い右肩上がりが続くと織り込んでいます。
4月18日から「リクエスチョン」という各ブロガーの得意分野の知識(ナレッジ)を売買するサービスを始めました。
「個人的な相談に個人的に答えてくれる」というサービスで、例えばアイドルに対し個人的な自分だけの質問をしたとして、自分だけに答えてくれるというわけです。当初はアイドル等の有名人と個人的な話がしたいというニーズが多いかと思いますが、最終的には貴重な知識を持っている人達同士のナレッジ売買市場に育てたいです。
2008年は3つの課金形式を考えております。「リクエスチョン」のほか、2つ目に7月をメドに始める「デジタルアイテム」、3つ目がその後始まる有料課金による「機能拡張サービス」です。ただ、収益面への本格的な寄与は来期以降になるでしょう。
一言で言えば「プレゼント機能」です。価格設定は50円〜200円までを考えていて、自分にもプレゼントできるのですが、他のブロガーに贈るのが主目的です。
例えば、釣りが趣味のブロガーにデジタルアイテムの釣竿をプレゼントするなど、自分でやってみた結果、プレゼントをもらうと結構嬉しいということが分かってきたので、売り上げ見込み額は読み切れませんが、収益への貢献にかなり期待しています。
ネットのメディア事業は「10:0」だと思っています。成功すればすごい価値となりますが、失敗すればゼロです。だから赤字が10億円だろうが50億円だろうが関係なく、ネットメディアは最終的に成功すれば良いのです。
当初はモバイルへの対応やページビュー増加策、技術力などあらゆる面が弱く、我々の誤算が続きました。確かに、「本当に成功するかどうか分からない」という時期もありましたが、そこは抜けたと思っております。
2005年ぐらいに「技術のサイバーエージェントにする」と宣言し、技術者の大量採用と技術者優遇策(フロアスペースや椅子・机も違う)を徹底しました。我々はネット広告の会社なので、よっぽど話題性のあることをしなければ優秀な技術者が雇えなかった。
しかしそれから社内の意識も変わり、2007年の夏ぐらいからその効果が見られるようになってきました。
昔はブログ事業を一生懸命やっているフリばかりしていましたが、2007年の夏ぐらいに統括していた幹部3人を異動させ、旧幹部は私だけが残るという背水の陣を敷きました。それからは技術的な細かいところ、例えば「絵文字を入れろ」とか「パーツデザインを変えろ」という命令まで私が直接下しています。
今ではネットサービス制作のプロデューサーとしてかなりの自信があります。ページビューというたった一つの指標を追いかけながら、毎日会議ばかりしているわけですから。凡庸な企画が出てくるわけがない。
そこは要素の1つでしかないです。赤字の原因が著名人に対しお金を払っているからだと指摘する方もいらっしゃるようですが、そこに対しては一切お金を支払っていません。
「ぺタ」「メッセージ」「ルーム」などコミュニケーション機能の強化や、PCと異なる使用感のモバイルの使い勝手を向上させたことも大きな要素です。私自身がブロガーなので、使えるか使えないかの判断は間違えませんし、初心者の利用に主眼を置いて常に進化し続けていることが重要な成長要因だと考えています。
広報予算が5.8億円、システム費用が7億円、人件費(150人)と販売管理費で15億円です。ほとんどが人件費とサーバ運営コストとなります。「livedoor Blog」のように縮小均衡を狙っているように映るメディアであれば、人数が少なく、売り上げも少ないが利益は確実に出るビジネスモデルは可能です。
しかし、我々はブログ事業を基幹メディアにしようとしているので、そんな気はさらさらなく、大成功するかやらないかの2つに1つなのです。我々はネットメディアを扱う代理店でもあるので、中途半端では厳しくて生き残れないという事実を良く分かっているつもりです。
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