--Linuxのライセンス規約にGPLを採用したのはなぜですか。GPLの次期バージョンに期待するものを教えてください。
私が本当に欲しているのは、2つのことに特化したライセンスです。1つはコードを第三者に自由に提供できるようにすること、もう1つは改変されたコードも同じように第三者に自由に提供できるようにすること--この2つに尽きます。それ以上でも、以下でもない。その他のことは重要ではありません。
何でもないことのように思えるかもしれませんが、ほとんどのオープンソース・ライセンスはきわめて根本的な部分で私の基準に達していません。何らかの形で、改変されたコードを第三者に提供することを制限できるようになっているからです。
それに、「現実味のない計画は立てられない」あいまいな私は、GPLの次期バージョンがどうなるかをそれほど心配していません。私は法律家ではないし、細かい文言までは気にしていない。さまざまな意味で、GPLに関する私の唯一の不満は、とても単純なことを難しくいいすぎている気がすることです。もっとも、これは法律の世界では珍しいことではないのかもしれません。
--カーネル開発プロセスの変更は順調ですか。
おそらく、最大の変化はカーネル2.7(編集部注:カーネル2.6に続く実験的な新バージョン)の開発が予想通りに始まらなかったことでしょう。2.7の分岐を強力に主張する者がなく、2.6.xの開発版でも十分に機能しているという見方が大勢を占めていました。
だからといって、2.7.xが登場しないわけではありません。あと数カ月でしょう。重要なのは、安定した製品版への期待が、開発版を圧迫し始めていることです。これは成熟の証であると同時に、安定した製品版の存在が多くの人にとって非常に大きな意味を持つようになり、簡単にはそれを捨てて、前に進むことができなくなったことを示していると思います。
--新しい開発プロセスでは、Linuxをもっと迅速に改良できるようになるのですか。
そうです。それがこのモデルの利点の1つです--これまでよりもずっと短い時間で新しいことができる。2年という開発サイクルについては、かねてから批判がありました。このことは2.6.xの新機能が、ベンダーが待ちきれなかったために、結局2.4.xにバックポートされたことからも明らかです。
--2.7系の登場を促すものは何でしょうか。
私にも分かりません。突き詰めれば、「他の部分がこれまで通りに機能しなくなる危険を冒してでも、根本的な部分に変化を加える必要があるか」ということだと思います。過去の開発サイクルでも、修正が必要なことは分かっているが、他の部分に多大な混乱をもたらす可能性のある問題が存在しました。
--現在、Linuxに関わっている開発者はどれくらいいるのですか。実際の作業の大半は、ごく一部のプログラマによって行われているのでは。
確かに、かなり偏りがあります。カーネルに限っていえば、かなり活発に作業している人が約200人。変更ログをみると、この1年で約1000人が参加したことになっていますが、その多くは試しに参加してみたという人々です。この他、試験や(品質保証や)フィードバックに参加してくれた開発者が大勢います。
--Linux市場でRed HatとNovellが存在感を強めていることをどう思いますか。自分ではなく、この2社がユーザーとの接点になり始めていることは気になりますか。
まさか。顧客対応の時間が減るなら、それに越したことはありません。商用ベンダーの参入がもたらす最大のメリットは、ベンダーが顧客と開発者の接点となること、そして純粋に技術的な問題と、純粋にマーケティング的な問題のバランスがはかられることだと思います。オープンソースですから、ベンダーは誠実に行動せざるを得ません(これは開発者も同じです)。
--Linuxという列車を運転しているのはベンダーで、あなたはどちらかといえば、乗客になりつつあるのでしょうか。
そうは思っていません。ベンダーも同じでしょう。しかし、ベンダーがLinuxに多大な貢献をしていることは確かですし、そうあるべきです。誰もが自分はLinuxの進化に寄与していると感じる必要がある・・・他人を見て、あれはただの乗客だと思うようなことがあれば、それは誰にとっても好ましいことではありません。
--デスクトップLinuxの発展を阻んでいるのは技術的な要因ですか、それともマーケティング的な要因ですか。
さまざまな要因がからみあっています。技術面でも改善の余地は多々あるでしょうし、マーケティングや認知の面でもそうです。しかし、最大の問題は「ユーザーの惰性」です。
人間は慣れたものを使い続ける(そして好む)傾向があります。これが、この一年あまりの間、デスクトップLinuxの普及を阻んできた最大の要因であり、この傾向は今後さらに強まるでしょう--良い技術が存在しても、ユーザー側がそれに切り替えるための心の準備ができていないのです。私が商用デスクトップを重要だと考えている理由はここにあります。人々がDOS(後にはWindows)を身近に感じるようになったのは商用製品によるところが大きい。デスクトップLinuxの導入は、最終的にはこの分野で進むと思います。しかし、そのためには長い年月が必要です。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス