無料のフルブラウザアプリケーションとして2005年1月に登場し、高い注目を集めたScope。しかしそのScopeが今、その機能以外の面で話題となっている。
7月に配布されたバージョンにおいて、メール送受信機能を利用するとユーザーのユーザー名やパスワード、POP3サーバ名が漏洩するバグがあるという指摘が2ちゃんねるで書き込まれた。Scopeを提供するプログラマーズファクトリはこの問題について口をつぐんだままで、一切の公式な説明をしていない。このことが逆に、インターネットでの議論に火をつけた。
さらに9月には、エキサイトとの提携関係を解消した。エキサイトはScopeと独占契約を結び、エキサイトバージョンのScopeを配布する計画だった。
Scopeの開発者であるプログラマーズファクトリ代表取締役社長の小林将之氏に、メール送受信機能のバグ疑惑やエキサイトとの提携解消について話を聞いた。
--2ちゃんねるを中心に、Scopeのメール送受信機能による個人情報漏洩疑惑が大きな議論となっています。実際のところ、この問題は本当に起きたのでしょうか。
この件について、当社では一切コメントするつもりはありません。ただ1つ言えるのは、ユーザーの方から実際に被害があったという報告は受けていませんし、現在当該バージョンを使っても、指摘されたような問題は起きません。
--実際にユーザーから被害があったという報告は来ていないと?
国民生活センターに対して、「こういう問題が起きているので調べて欲しい」という依頼はあったそうです。しかしそのメールが匿名だったため、身元を明らかにして問い合わせて欲しいと国民生活センターを通じて申し入れたのですが、その返事は戻ってきませんでした。
我々は自社サーバのログをすべて管理しており、何が起きたかは全部わかっています。ただ、ここで何かを話すと、その一部だけが拡大解釈されて、またネットでの議論を呼んでしまう。だからこそ、この件についてはコメントするつもりはありません。
問題とされているメール機能は、実際に使っている人は全体の1%以下なんですよ。この機能を正しく使えていない人が多い。期待して投入したサービスの割には、あまり使われていない機能なんです。
--「問い合わせのメールを送っても返事がない」とか、「掲示板への書き込みが削除されてアクセスすることもできないようになった」というプログラマーズファクトリ側の対応に対する不満の声も多く見受けられます。実際に、ユーザーから今回の問題に対する問い合わせのメールは届いていますか。
それは責任者に聞いてみないと分かりません。当社にはさまざまな問い合わせのメールが数多く届いており、私がすべてのメールを見ているわけではないからです。問い合わせのメールに対して、例えばソニーや松下電器産業の社長宛てにメールを書いたからといって、社長から返事が来るわけではないでしょう。それと同じことです。
対応すべきメールには対応しますが、そうでない内容のものには対応しません。Scopeは無償で提供していますので、サポートはできる範囲でしかできませんし、それ以上のことを要求されても困ります。
掲示板についても、他人に不快感を与えるような書き込みや、他社の宣伝をするような書き込みは削除します。ほかのユーザーから「困っている」という声も届いていますので。それは掲示板の運営方針で、当たり前の事をしているだけです。これはほかの企業も変わらないと思います。
ウェブでの議論を見ていて不思議なのは、Scopeが嫌いだということで騒ぎになっているようですが、なぜそこまでScopeに執着するのかということです。Scopeを気に入らないのであれば使わなければいい。無料のアプリですし、ほかにもフルブラウザアプリはありますから。
もしかしたら、Scopeを本当に好きでいてくれて、それなのに当社の対応にまずい部分があって、裏切られた気持ちになっているのかもしれない。「あんなに大好きなScopeが、どうして自分に対してこんなにひどいことをするんだ」と。そうであれば、非常に申し訳ないとは思っています。
しかし当社は無料でScopeを提供しており、人員には限りがあります。サポートにも、当然限界があるんです。サポートを有償にしない限り、期待されるような対応はできないというのが正直なところです。
もう1つ言えるのは、今回の騒動があったからといってScopeのダウンロード数やアクセス数は落ちていないんです。むしろ、騒ぎになることで逆に伸びていて、リリース以降最高のアクセス数を記録しています。騒がれることで、これまでScopeを知らなかった人が「どんなものなんだろう?」と気になったんでしょうね。これが下がっていれば問題ですが、当社の営業に障害は出ていないので、当社からは何も言うことはありません。
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