JASRACは「放送通信融合」の敵か味方か--菅原常任理事に聞く - (page 2)

高瀬徹朗、島田昇(編集部)2007年12月26日 15時29分

 かねてよりユーザーレベルでの細かな批判の声が挙がっていたとはいえ、現在、広くメディアでJASRACの名前が取り上げられるようになる一因となったのは、一連のYouTube対応だろう。

 「円滑な流通」を目的とするJASRACにとってYouTube、ニコニコ動画とは敵にしかなりえないのだろうか。

■「YouTube問題」の決着は

 長い歴史を経て優れたビジネスモデルを構築した放送事業に対し、ネット関連事業はようやく欧米に追いつこうかというレベル。信頼度という視点では大きな差がある両者ですが、最初にお話したとおり、それによって許諾を拒否する、という考えはありません。

 ただし、あくまでも正式な契約が必要です。その前提として、まず違法コンテンツの削除。次に、協会が権利者に対して使用料金を分配するために必要な情報提供システムの構築です。それらをどのような仕組みで整え、またいつから運用するのかが明らかになれば、その時点で正式契約を結ぶ考えです。

 契約体系については、地上波テレビ局同様、総収入の2%をお支払いいだだく形になります。理屈的には個人複製をオープンしたユーザー個人に料金を収めていただくのが正式ですが、それを運営主体であるYouTube、ないしはニコニコ動画が本人にかわって処理する、という形式を採用することになるでしょう。

 サービスとしてはコンテンツ個別に使用料が発生するビデオオンデマンドではなく、動画ストリームとみなして一括徴収する方針です。これによって、正式契約後にアップロードされたコンテンツは「違法」という概念もなくなります。

 その上で、数量に応じて権利者配分を行うため、関連情報を即座に提供していただけるシステムの構築を求めているのです。

 JASRACが正式契約を結ぶことでベースが出来上がれば、あとは個々のホルダーがどのようにビジネス展開を考えるか、という状況が整うことになるでしょう。アップロードコンテンツの情報提供も求めているため、コンテンツホルダーも自らのビジネススキームにはめ込むことができるはずです。

 そこから先は個々の考えになりますが、コンテンツ内容によって可否を判断するなど使い分けるケースも出てくるのではないでしょうか。

 正式契約に向けたステップやその後の契約体系は、一見すると解決の日が近いことを、さらにはその後の明るい未来までも予感させる。しかし、すぐにそれが「一見の印象」に過ぎないことに気がつく。

 前提としてあげた「すべての違法コンテンツを削除すること」。実演家著作隣接権センター(CPRA)運営委員会の松武秀樹運営委員は、2007年8月におこなわれた権利者団体・事業者の会見で「まずは一度、リセットせよ」と発言して話題を呼んだ。果たして、そんなことが可能なのだろうか。

■win-winのビジネスモデル構築せよ

 「リセット」という言葉は、いっそ「一度、サービスを閉じてくれ」という権利者の本音が込められています。もちろん、それが困難な作業であることは承知しており、いかに軟着陸させるかがポイントとなるでしょう。

 現実的に求めている内容は「違法なコンテンツを排除するスキーム」の作成です。その方法論、および実施のタイミングを明確にした時点で、契約に向けた判断、および調整を行うことになるでしょう。

 正直に申し上げて、JASRACとしても正式契約できるに越したことはないのです。近年、音楽関係のビジネス成功例としては「着メロ」が挙げられますが、JASRACに入った手数料だけでも70億円規模に達しました。動画共有サイトについても、同様の展開を望んでいます。

 そうなれば、うちは必ず儲かるわけですから。

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