一時はモバイルゲームの会社という印象が強かったディー・エヌ・エー(DeNA)だが、ここ数年は遺伝子検査や自動運転、さらにはAIなど、ゲームとのシナジーにこだわらない幅広い事業領域に次々と参入している。
そんな同社を率いる代表取締役社長の守安功氏とはどのような人物なのか。最先端の領域に挑み続ける「事業」、連結で2000人を超える「組織」、そして多趣味な「日常」について深堀りすることで、同氏の素顔に迫った。(全3回)。
第2回は「組織」について。同社が全社員に求める5つの行動規範「DeNA Quality」や、守安氏と創業者・南場智子氏との関係などについて聞いた。
※「DeNA Quality」:(1)顧客のことを第一に考え、感謝の気持ちをもって顧客の期待を超える努力をする「デライト」、(2)常に最後の砦として高いプロフェッショナル意識を持ち、DeNAを代表する気概と責任感を持って仕事をする「球の表面積」、(3)2ランクアップの目線で、組織と個人の成長のために全力を尽くす「全力コミット」、(4)チームワークとコミュニケーションを大切にし、仲間への責任を果たす「透明性」、(5)階層にこだわらず、のびのびしっかりと自分の考えを示す「発言責任」。
私は1999年の創業時からほぼいるのですが、あまりルールなどを明文化してこなかったんですね。みんな、ある一定の価値観に基づいて“阿吽の呼吸”で仕事ができるだろうと、あえてそういうものは作らないで運営をしてきました。ですが、組織が急拡大し、300人を超えたころから、みんなの顔が見えなくなってきて、仕事の進め方や考え方が違う人も出てきました。その結果、スムーズに仕事を進めることが難しくなり、余計なところにエネルギーを使うようになりました。
そこで、仕事をするうえで気持ちよく、余計な摩擦をなくすために、最低限これだけは守ろうよということで、DeNA Qualityという5つのルールを決めました。それは、エンジニアやカスタマーサポートなど職種によっては難しいものや、新卒1年目だから難しいというものではなく、社会人であればみんなできるよねという内容です。逆にいえば、その価値観で仕事ができない人は、DeNAの会社の中にいてもらっては困りますよというものです。
価値観を同じにすることで、会議などでも「これは、DeNA Qualityに反しているのではないか」ということは、日々言い合うようになりましたので、一定の仕事のプロトコルを形成する上では非常に役に立ったと思っています。
じゃあ、すべての人が実現できているかというと、意識をするのは簡単なんだけれど難しいところもあります。たとえば「全力コミット」という言葉があります。それだけ聞くと全力で仕事をしましょうということなんですが、求めているのは個人の成果だけでなく、組織の成功のために全力を尽くしましょうということです。
言葉として、あまり聞き慣れないかもしれませんが、“2ランクアップ”の目線で物事を考えてくださいと。たとえば、自分が通常のメンバーだった場合に、グループリーダーがいて、その上に部長がいるとします。組織全体のパフォーマンスを最大限出しましょうという時に、2階層上の人の立場だったら、自分にどういう行動をしてほしいのか。そういう視点で考えましょうということなんですね。
ただ、組織で最大のパフォーマンスを出すとしたら、そうやって動いた方がいいよね、というのは分かるけれど、上の目線が本当に持てるのかというと、やはりその立場になったことがない中で、実践できているかどうかは、若干難しいところがあるのかなと思います。
あとは、たとえば「発言責任」というものもあります。言ったことが正しいかどうかの責任を持つというよりは、自分が思ったことはちゃんと発言しなさいということです。会議でたまに一言も発しないメンバーがいるのですが、そういう人は“ノーバリュー”だと。参加はしていたけれど、この会議には何の貢献もしていないじゃないかという話をします。
旧来型の企業だと、経営会議で社長や取締役がいる中で、平社員がちょっと発言すると、「お前なんかが発言するのは10年早い」と言われることもありますよね。でも、われわれはそうじゃなくて、せっかく会議に出ているなら、自分の思いを言わないとノーバリューだし、後でごにょごにょ言われても困るので、その場でちゃんと自分の考えを言ってくださいと言っています。これも頭では分かっていても、なかなか変われない人もいますので、実現しようとした場合には、骨が折れる時もありますね。
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