ビッグデータと人工知能を活用し、あらゆるビジネスの自動化と効率化を進めることを経営戦略として掲げるメタップス。同社は創業から約8年となる2015年8月末に東証マザーズに上場した。「業界が変わっても、やっていることは変わらない」――そう語る同社代表取締役CEOの佐藤航陽氏に、これまでの事業展開や、同氏が考えるリーダーとしての役割、このタイミングで上場した狙いなどを聞いた。
metapsを始めたのは2011年です。当時はガラケーが中心でしたが、アメリカと中国に行くことがあって、その際に今後はスマホがインターネットの中心になると確信しました。ただ、皆さんその頃はアプリで儲かっていなかったので、マネタイズが一番の課題になるだろうということで、その需要を満たすソリューションを作ることにしたのが始まりです。
もし、アプリがコンテンツの主流になるのなら、ボタン1つでアプリを世界中に届けられるようになるだろうと。外資企業もどんどん入ってくるし、日系企業もいろいろな国に出られるので、経済的な国境のようなものが消えていくことに拍車をかけるだろうと思いました。もし、グローバル展開するのであれば、このタイミングが最後だと思い、一気に海外にも広げました。そこは短期的な利益ではなく、長期的なスケールと今後の時代の流れを読んだうえでの判断で、それから3年くらいは投資期間でしたね。
最終的にはこのスマートフォンというデバイスで、ニュースを読んだりゲームをしたりするだけでなく、お金の移動から資産の管理まであらゆることが可能になると考えていましたが、結果そうなってきています。私はもともと金融領域をターゲットにしていたので、まずはデバイスの方を押さえようということで、マネタイズプラットフォームをいろいろな会社に提供したということですね。
そうですね。SPIKEをリリースした当時(2014年4月)は、FinTech(フィンテック)なんて言葉は誰も使っていませんでした。昔からネット証券はありましたが、それは既存の金融会社のネット版を作っただけで、概念的には変わっていませんよね。私は通貨も含めて経済システムそのものが大きく変わる時がくるだろうと思っていたので、ここは投資すべきだと。むしろここを取らないと、スケールは求められないと思っていました。
金融の領域にどこから入ろうかと探る中で、決済が早いだろうと。私もECをやっていた経験から、決済が一番問題で、かつ手数料が課題になっていることは分かっていたので、まずはここを取っ払ってしまおうと考えました。現金からデジタルの世界に通貨や資産を移してもらうことで、完全にバーチャルな世界で経済を完結させる環境を作りたいと思ったからです。
テクノロジの流れに沿って事業展開しているところがメタップスの一番の強みです。逆にどの産業で勝負するかというところには、まったくこだわりはないです。産業が変わっても、使うテクノロジはほとんど変わりません。分析や解析から入って、企業の黒子としてマーケティングを手伝ったり、非効率な部分をスマートにしていく。私たちが得意なのはそこなので、このやり方は自動車業界だろうと銀行業界だろうと今後も変わらないと思います。
(新たな業界への参入について)グローバル展開というのは、すごくいい防御だと思っています。1カ国だけでやっていると、何かしらの政治的な理由で、事業を停止しなければいけないこともあります。それが世界に8拠点もあると、一応分散できるんですよ。1つの国がダメになっても、全体としてはダメージが少ない体制は作れているので、そこは防御という意味ではすごく有効だなと。
逆に攻めという意味では、他社に追随してもらうのが一番早いと思っています。自分たちのビジネスモデルがうまくいくかどうかが分からないから怖いのであって、私たちが小さな事例を作ってちゃんと儲かることを証明できれば、いろいろな企業が参入して一気に業界のスタンダードが置き換わると思っています。
視野を広げていることでしょうか。いろいろな国へ実際に行って、ビジネスや商習慣を学ぶことで、世の中がどのようにして動いているのかを学習しています。2011年と2014年では持っている視点はまったく別物ですし、いまも変わっています。
グローバル展開をする前は、世界経済がどうやって動いているのか、よく理解できていなかったんです。経済は191カ国がバランスを取りながら動いていると思っていたのですが、実際にいろいろな人に会ったり取引をしていると、数カ所に偏っていることに気づきました。
そこが大きなキャッシュを持っていて、世界中にそれが振りまかれて、いくつかの勢力がぶつかっているという話であって、すべての国でバランスを取っているわけではないんだなと。そうすると、どこにフォーカスするかという起点が分かるので、物事の偏りを捉えていけるようになります。
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