NTTドコモは、子ども向け腕時計型デバイス「ドコッチ01」を4月4日に発売した。ウェアラブルデバイスに対する世の中の関心が高まる中、子どもとその保護者にターゲットを絞った製品という新しさが注目されて発表直後から話題になったが、ドコモはどのような狙いでこの端末を開発したのだろうか。同社M2Mビジネス部担当部長の村山啓二郎氏に聞いた。
ドコッチは、“ケータイを持たせるのはまだ早いが、子どもの見守りにICTを活用したい”という、未就学児や小学校低学年の子どもをお持ちの保護者のニーズに応えた結果、生まれた商品です。
ドコモでは以前から、小学生を主なターゲットとした「キッズケータイ」や「スマートフォン for ジュニア」を展開してきましたが、契約を検討されている保護者からは、「(防犯面などの点から)子どもに通信端末を持たせる必要性を感じているが、ケータイを持たせるのはまだ早いのではないか」「子どもが(ケータイの)必要性を感じてくれない」といった声が多く挙がっていました。
遊ぶことに夢中な幼い子どもは、まずケータイを持って出かけてくれません。それに、落として壊してしまったり、(ケータイを持ってきたことを忘れて)すぐになくしてしまったりといった懸念も多いのです。
保護者は、子どもの見守りに通信サービスを活用したい。そのためには、子どもがいつでも身につけたくなるアイテムでなければならない。そうした課題を解決できるものとして、この「腕時計」という形に辿り着いたのです。子どもにとって、腕時計は“ちょっと背伸びして大人になった気分”が味わえるアイテムで、興味関心も高い。子どもが気に入って身につけてくれれば、“見守り”という製品の目標が実現できるのではと考えたのです。
ちなみに、子どもの居場所検索といった見守りサービスはさまざまな事業者が出していますが、ドコッチはSIMカードを直接挿すことによって、製品単体でモバイルネットワークを活用することができるので、リアルタイムな見守りサービスを提供できる点が強みではないかと思います。
未就学児や小学校低学年の子どもは、まず電話で上手にコミュニケーションすることができません。メールを自分で作ることも難しいでしょう。そのため、子どもにはあくまで“腕時計”として活用してもらおうと、通話機能は省いて必要最低限の機能にしました。ゲームやデジタルコンテンツなども一切搭載していません。時計といえばアラーム機能ですが、これはドコッチ側からも保護者のスマートフォン側からも設定することができるので、夕方の家に帰る時間を設定しておくといった活用が可能です。
また、子どものリテラシーでも簡単にできるコミュニケーションとして、「むかえにきて」「ころんだ」「いまからかえる」「ぐあいがわるい」など12種類の定型文から選んだメッセージを送信することができるSMS機能を搭載しています。定型文は自由に追加登録や編集をすることができるので、親子で「習いごとが終わったらこのメッセージを送る」といった約束事を決めていくといいでしょう。もちろん、SMSは保護者のスマートフォンからも送信することができます。
そして、もしものための機能として、「SOSボタン」を搭載しています。これは、ボタンを長押しすると、事前に登録しておいた最大6つのスマートフォンに自動的に子どもの居場所をメール通知することができる機能で、子どもが迷子になった際やトラブルに遭った際などに保護者や親戚の方がすぐに居場所を把握することが可能です。
ちなみに、時計のスキンは子どもの好みに合わせて数種類から選ぶことができます。アナログ時計のスキンを多く用意しているので、子どもにとって「時計の見方を学ぶ」「時間を把握する」という学習につながればいいですね。ベルト素材は長時間腕につけてもムレにくいTPU(熱可塑性ポリウレタン)を採用しています。また、好みに合わせて市販の腕時計用ベルトに交換したり、ベルトをストラップに替えてランドセルに取り付けたり、ペンダントのように使ったりすることも可能です。防水防塵に対応しており、スマートフォンとほぼ同等の耐久性能を満たしています。
保護者には、ドコッチのサービスを活用するためのスマートフォンサイトやメール通知機能が用意されており、子どもの活動状態や子どもがいる環境の温度・湿度などを確認できる機能、「イマドコサーチ」と連動して現在地を確認できる機能などを利用できます。保護者にとってもドコッチに関連する各サービスが使いやすいよう、専門家の声も取り入れるなどスマートフォンサイトはこだわって開発しました。
ドコッチには、加速度センサや温湿度センサ、GPSが搭載されており、これらがモニタリングしたデータを基に子どもの様子をスマートフォンサイトやメールで把握することができるのです。たとえば、熱中症のリスクが高い状態で遊んでいても、夢中になっている子どもは気づかなかったり、仮に暑くて苦しくても保護者には遠慮して言わなかったりします。そうした状況でも、保護者が先回りして子どもの状態を把握して対処することができます。なお、子どもの状態に基づいたアドバイスメッセージの内容については、NTT東日本関東病院と連携して作成しました。
また、Bluetoothを活用した機能として「みまもりアラート」を搭載しています。これは、ドコッチと保護者のスマートフォンをBluetoothでペアリングして、ドコッチを付けた子どもが保護者から一定の距離を離れると、ドコッチとスマートフォン両方でアラートが鳴って知らせてくれるという機能です。多くの人が集まる商業施設やレジャー施設などで迷子を防止する目的で活用できると考えています。
ただ大事なのは、こうした機能は保護者が子どもを監視するためのものではないということです。子どもの安全のためには、子どもに付きっきりになりたくなるという親心も分かります。しかし一方で、子どもの自主性や自立心を育むためには、子どもを自由に遊ばせることも大事なのです。このドコッチは、子どもを自由に遊ばせながら、子どもの状態を把握して危機管理をすることができるソリューションになればと考えています。
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