iRobotの最高経営責任者(CEO)でスーパーギークのColin Angle氏が「スター・ウォーズ」ファンなのは、意外なことではない。
しかし、勇敢なR2-D2やヒト型ロボットのC-3POが賞賛される中で、Angle氏は平凡な「MSE-6」に感心する。MSE-6は床の上を走り回って修理をしたり、「デス・スター」で大勢のストームトルーパーを先導したりする小型の箱形ドロイドだ。
それはなぜか。Angle氏は、「われわれはあのロボットを作れるからだ」と言う。R2-D2やC-3POを崇拝するのではなく、たとえありふれていて、美しくなく、危険なものだったとしても、実際の問題を解決することにロボット業界が注力すれば、世界は今よりもずっとよい形になるかもしれない。
Angle氏は先週ボストンで開催のRoboBusinessカンファレンスで開会のスピーチを行い、起業家やエンジニアに対して、現実的になり、ビジネスの実際的知識を得るよう促した。
そうしたアプローチがiRobotによい結果をもたらした例は枚挙に暇がない。同社は膨大な数の「Roomba」掃除機を販売したことに加え、イラクで道端の爆弾から信管を取り除いたり、アフガニスタンで洞窟内を捜索したりする「PackBot」ロボットも数多く配備している。
また同社エンジニアは、2010年のメキシコ湾原油流出事故の後に深海部の原油プルームを探したり、福島原子力発電所で部分的炉心溶融が発生した後に調査を行ったりするために、カスタマイズしたロボットを提供した。
だからといって、消費者向けのロボットに道がないというわけではない。それどころか、iRobotはロボットが可能にする未来の家がどのようなものになるのか積極的に想像をめぐらせている。この分野で注目すべき製品はiRobotの「AVA」だ。AVAはロボットの台座部分に「iPad」や「Android」タブレットを「頭部」として取り付けることができ、人間と機械のインターフェースとなる。
Angle氏は講演の後、筆者に対し、モバイルコンピューティングやゲーム分野の革新によってロボット開発が急速に進歩していくと述べた。ただし、そのためには、人々がC3POや「宇宙家族ジェットソン」のメイド型ロボット「ロージー」を追い求めるのをやめる必要があるという。
--あなたはC-3POとR2-D2に対して、なぜそこまで厳しいのですか。
Angle氏:ロボット工学は古くから存在しており、ずっと「次なる大きな潮流」というものでした。非常に刺激的で魅力的な分野なので、簡単に心を奪われてしまいます。ほとんど常に人々を魅了していますが、それは業界の成長を抑えてきた要素の1つでもあります。この映画(スター・ウォーズ)を見た誰もが、C-3PO、あるいは少なくともR2-D2を作るという実現不可能なリアリティを追い求めたい気持ちになるのは事実であり、同時に重要なことでもあります。日本においては、どれほど手の込んだエンジニアリングデモを作れるか、という芸術形式にまでなろうとしています。しかし、それは現実的なロボット業界の構築とは無関係なことです。今は、会社を作って壮大なデモに大金をかけることができるという、変わった時代です。どこにニーズがあるのか(を発見すること)にはそれほど多くのお金が使われていません。そのニーズに対して、最初から失敗する運命にはないアプローチを考え出すには、どうすればいいのでしょうか。
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