G・ムーアが語る「ムーアの法則の40年」 - (page 3)

Michael Kanellos (CNET News.com)2005年04月20日 09時54分

--これまでを振り返って、「あれは完璧だった」と思う製品はありますか。

 私が画期的だと思う製品は、必ずしも完璧なものではありませんでしたが、経済的には意味のあるものでした。世界初のダイナミックRAM--懐かしの1103も、このカテゴリに属する製品です。1103は1KのDRAMで、Intelにとっては初のドル箱商品となりました。世界初のマイクロプロセッサも、このカテゴリに属する製品といえます。処理速度は大変遅いものでしたが、与えられた役割はきちんとこなしました。経済的重要性の高い製品は、他にもたくさんあります。私はこれらの製品を、進化の途上にあるものだと考える傾向があります。

--ムーアの法則に従ってコンピューティングパワーが増大していくと、いずれは人間の知能に匹敵するコンピュータが実現するのでしょうか。

 人間の知能はVon Neumann型計算機とはまったく異なる仕組みで働いている、というのが私の考えです。コンピュータが現在の方向性で開発されている限り、人間の知能に匹敵するものを生み出すことはできないでしょう。

 しかし、われわれはいずれアプローチを変更し、生物の思考方法を模倣するようになると思います。そうなれば、人間の知能のような、意図と目的を持った何かを生み出すことができる。しかし、これは単純なアプローチではありません。現在のやり方では、人間の脳を完全に模倣するだけのコンピューティングパワーを作り出すことはできないでしょう。

--チップの価格が下がる一方で、生産工場の建設費は上がり続けています。これは業界を脅かす問題になるのでしょうか。

 1960年代には工場を比較的安価に建設することができたので、建設費はさほど問題ではありませんでした。莫大なコストがかかるようになったのは80年代です--それ以前は、人件費や技術の方が大きな問題でした。今は、工場を作ろうと思ったら25億ドルから30億ドルは見積もらなければなりません。その一方で、チップの生産量も劇的に増えました。1968年にIntelが設立されたとき、われわれは直径2インチのウェハーを実現して、他社をあっといわせました。ところが、現在のウェハーは平均12インチです。直径は6倍、面積は36 倍--つまり、ひとつのウェハーから、はるかにたくさんのチップを生産することができるようになったのです。利益もしかりです。

--あなたはムーアの法則の考案者であるだけでなく、ジョブ・ホッピング(転職を繰り返すこと)の先駆者でもあります。ShockleyからFairchildへ、そしてIntelへ。当時としては大変珍しいことだったのではありませんか。

 Shockleyは変わった会社でした。Shockley本人は大変優れた物理学者でしたが、仕事仲間について、とても変わった考えを持っていました。破壊的な行動に出ることもありました。私とは結構うまくいっていましたが、それは私が化学者で、私の知っていることはすべて知っていなければならないと思う必要がなかったからでしょう。

 Shockleyのふるまいに困り果てたわれわれは、会社のスポンサーだったArnold Beckmanのもとを訪れ、Shockleyを何とか経営から外してほしいと頼みました。顧問のような形で残ってもらうことは賛成でしたが、経営には別の人物を迎えるべきだと考えていました。

 この話は進んでいるものと思っていましたが、そのような行為はShockleyの経歴に泥をぬることだと進言する人がいて、土壇場でBeckmanは心を変えてしまいました。

 もう会社には残れない--そう思ったわれわれは、新しい仕事を探しはじめました。あるとき、仲間のひとりだったEugene Kleinerが、父親の知り合いの投資銀行家に手紙を書いたところ、その会社が2人のパートナーを送ってくれました。そのひとりが、ハーバード大学の若きMBAだったArthur Rockです(Rockは後にIntelやApple Computerに出資することになる)。

 われわれの話を聞くと、Rockはこういいました。「なるほど。では、あなた方が働くことの出来る会社を作りましょう」。こうして、われわれは新しい会社--(Fairchild Corp傘下の)Fairchild Semiconductorを設立することになりました。社員はわれわれ8人でした。

 しかし、大企業の中で若い技術者が肩を並べて働くというのは、生やさしいことではありませんでした。Fairchildはわずか6カ月の間に2人のCEOを迎えることになりました。CEOを社内から選ぶなら、当然Bob Noyceが候補になるはずでしたが、会社は彼を候補から外しました。彼はこのような仕打ちに腹を立て、退社を決意しました。私も自分の仕事が大きく変わってしまうと感じたので、「ここを辞めてIntelを作る」といいました。

 Fairchildからは数多くの会社が生まれました。Fairchildは用途など考えずに、闇雲に技術開発を進めていたため、私が「シリコンバレー効果」と呼ぶもの--つまり、新しいアイディアを持っている技術者が、自然と起業を考える環境が出来上がりました。

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