IBMより優位な点は「シンプルさとパートナー戦略」:BEAスコット・ディッゼン氏に聞く - (page 2)

藤本京子(CNET Japan編集部)2004年03月03日 17時35分

EAI分野にも注力

---アプリケーションサーバ以外にBEAではEAI製品にも力を入れていますね。

 1年半前にBEAはこの分野で5位とされていました。今の状況は、この分野でトップを走るIBMに言わせるとBEAが2位とのことで、IBMはBEAを一番の競合と考えているようです。実際EAI製品はBEAの中で最も伸びている分野で、EAI専業ベンダーのVitria Technology、webMethods、SeeBeyond Technologyなどを抜いたとされています。Tibco Softwareも抜いたかもしれません。SeeBeyondの元CTOやVitriaの主要アーキテクト2人も現在BEAで働いています。webMethodsの技術者も5〜6人雇いました。元Tibcoの開発マネージャーもBEAにいますよ。このように才能のある人材を雇い入れ、同時にシェアも拡大しているというわけです。

---BEA以外にも、多くのソフトウェアベンダーがEAI製品を次々に発表しています。このトレンドをどう見ますか。

 必要に迫られてのことでしょう。顧客によりよいIT環境を提供するには、どうしてもシステム統合が必要となります。例えば金融機関のサービスで、株取引口座や普通預金など、種類の違う口座でその都度ログインしなくてはならないサービスなど考えられません。

 このように必然性はあるのですが、現在使われているシステムは大変高価でプロプライエタリなものです。これまでの製品を見てみても、IBMが買収したCrossWorlds Softwareをはじめ、Tibco、webMethods、Vitriaなどが提供するものは、すべてがプロプライエタリな技術となっています。自社のシステムを特定ベンダーの製品で揃えなければならないのはもちろん、パートナーに至っても同一ベンダーのものでなくてはならないのです。このようなモデルでは、顧客ニーズに応じることができません。そこでBEAでは、MicrosoftやIBMと共に、ウェブをインテグレーションプラットフォームにしようと取り組んできました。XMLやWebサービスの原点はそこにあります。アプリケーションをウェブ上で統合させ、プロプライエタリなシステムを断ち切ろうということです。BEAが顧客に受け入れられたのは、インテグレーションをプロプライエタリなものではなく標準規格で行えるようにしたためでしょう。

---EAI専業ベンダーなどは、長年の経験があるため他社には負けないと主張しています。

 もちろん、そういった専業ベンダーも標準規格を採用していれば問題ないでしょう。しかし実際には、Tibco、webMethods、Vitria、SeeBeyondなど、EAI専業ベンダーの多くが標準の採用に関して非常に遅れを取っています。例えばこういった企業のシステムはXMLクエリをサポートしておらず、すべてプロプライエタリな方法で同様の機能を提供しています。Javaスタンダードのアダプタに関しても、プロプライエタリなものを用意しています。問題は、標準に準拠していないと市場についていけなくなる場合があるということです。

 いまでもウェブ標準の代わりとなるプロプライエタリな製品を売り続ける企業がありますが、それが顧客に受け入れられるかどうかは疑問です。特にMicrosoftのような企業がウェブ標準を推進しているのですから、他社がプロプライエタリなシステムを推進するのは厳しいでしょう。実際、こういった企業のシェアは縮小しているはずです。ソフトウェア企業にとってシェア縮小は致命的です。

---もし専業ベンダーが標準準拠の製品を出した場合、今後伸びる可能性はあるでしょうか。

 可能性はありますが、その際にはBEAやIBMがすでに提供しているメッセージングのインフラやEJB、ウェブコンテナ、Javaアダプタ、XMLクエリなどすべての機能を実装する必要があります。それには大変な手間と時間がかかるでしょう。

 実際に私も過去に専業ベンダーのCTOと会って、標準化の話をしたことがあるのですが、半分以上は標準化に積極的な姿勢を示しませんでした。「どちらにしろ我々の製品が世界中のサーバ上で走ることになるのだから、標準準拠である必要はない」と。あの判断はビジネスに大きな打撃を与えたと思いますね。最終的に勝つのは標準です。インテグレーションは大変な作業ですから。それもウェブベースのインテグレーションでなくてはいけないのです。それでこそ投資が保護されるのです。

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