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HP-コンパック買収の裏側に迫る

2003/03/13 10:00
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 ライバルのCompaq Computer買収計画が発表されたとき、一部から非難を浴びることはHewlett-Packard(HP)も承知していた。

 しかしHP幹部は、強硬な反対派が自社役員会のメンバーにいるとはまったく予想していなかった。ましてそれが会社を構成する関連財団の御曹司、つまりHP共同創始者William Hewlettの息子であるWalter Hewlettとは誰が予測できたであろう。

 Hewlettは、自分の反対意見を述べるために何百万ドルも費やし、買収計画に強く反対した。その争いはすぐに醜い様相を呈し、泥沼の戦いが始まった。

 数カ月の戦いの後、HPのCEO、Carly Fiorinaは3月の株主総会で勝利を宣言した。しかしWalter Hewlettは納得せず、ついにHPを訴えた。苦々しい委任状での決戦や、何百万ドルもかけた広告キャンペーンの結果、やっとの思いでFiorinaは勝利を勝ち取った。

 しかしこの論争は終わったわけではない。この合併は正しかったのか?HPが最後の数日間に取った行動が、HPの精神として知られる「HP Way」に基づいた投票に株主を導いたのだろうか?HP-Conpaqの併合について、まったく異なった視点で書かれた2冊の新刊が、この議論に再び火を付けることだろう。それは、米Fast Company編集者のGeorge Anders氏による「Perfect Enough」と、米Business Week編集者のPeter Burrows氏による「BackFire」の2冊である。CNET News.comではこの2冊の著者の対談を実現することに成功した。

――なぜ理事会はHewlett氏の反対運動を見逃していたのでしょうか?理事会メンバーは彼が強く反対するとは思っていなかったと語っていますが、彼が合併承認の署名をしていなかったことは明らかです。

George Anders:理事会としてはHewlettが基本的に賛成派だと思っていました。また、反対派として運動したとしても大きな抵抗勢力にはならないとみていたのです。実際の彼の反対運動はとても根深く、時が経つにつれどんどん大きなものに変貌していきました。しかし、それでも理事会は自分たちの行動が正しいのだから、Hewlettもすぐに自分たちに賛同すると思っていたのでしょう。そうして、彼のあいまいな公式発表を「賛同したも同然」とみなしたのです。

Peter Burrows:大筋その通りだと思います。幹部はHewlettが賛成派にまわるだろうと思っていたのです。その一方で、彼は議会で「この合併の話を進めるべきか?」と問いかける機会が3回あり、常に「No」と言っていたことも事実です。彼が合併の取引を支持しないとHewlett財団に伝えた可能性について、幹部も一度は検討していたはずです。FiorinaはHewlettに「役員の一員として、反対運動をするべきでない」と真っ向から言い放たねばならなかったのですから。理事会は、口ではあまり反対の深さを理解していなかったと言いますが、実際はさらに深く、Hewlettの恐ろしさを感じていたはずです。

――Fiorinaが女性だという点に関しては、どのくらいの批判が向けられたのでしょう?

Anders:私たちがFiorinaについて話すとき、女性のCEOというバックグランドなしでは語れません。彼女が女性であるということで彼女のすべてを支持し、彼女を次期代表にしたいと考える人もいます。その対極として、女性のCEOを好まない人も確かに存在します。こういった両極端な見解は、男性であるJohn Chambers (Cisco Systems CEO)やNed Barnholt(Agilent Technologies CEO)について起こることはありません。女性CEOであるからこそ起こる話です。

Burrows:私はよく分かりません。程度の問題ではないでしょうか。性差別に関する問題に鈍感な企業であれば話は別ですが、HPでは多数の女性社員が抜擢されています。Carolyn TicknorはHPのレーザージェット・グループを任せられており、Ann Livermoreは次期CEOと言われています。HPは、その斬新な人事から進歩的な会社として認識されています。

George Andres著「Perfect Enough

――もし、この合併が現在行われたとしたら、今は難しい時期にあたりますか?それとも比較的スムーズに運べる時期なのでしょうか?

Burrows:特にスムーズに運べる時期というのはないと思います。Hewlettらの反対勢力の出現がなくても、合併発表会見後の、あのかなり悲惨な市場の反応を覚えているでしょう。HPの株価は9月10日に23%下がり、2週間後には35%下がったのですから。

――彼らの委任状闘争は、たしかに醜いものでした。それでも両陣営の戦いは公正でクリーンなものでしたか?

Anders:確かに私は著書の中で、委任状闘争はまるでカゴの中の泥試合のようだったと書きました。しかし実際、泥試合が進むにつれて、戦いの様相はフェアで公平なものになっていったのです。私はHewlettが裁判で提出した証拠がとても少なかったことを知って驚きました。わずかの差で戦いに負けたことに、彼はとても悔しがっていたのではないかと思っています。

Burrows:私は、委任状闘争は公正なものだったと思います。「品質保証企業」というブランドを掲げるHPは、自社が泥試合を巻き起こすとは夢にも思っていなかったのではないでしょうか。もちろん、非難されるべき点はいくつかあります。私がひとつ批判材料を上げるとすれば、Michael Capellas(前Compaq Computer CEO)がHPの幹部としてFiorinaの完全な右腕となると、投資家に印象付けてしまったことです。実際には、Capellasは一年も経たないうちにHPを離れてしまいました。

――HP幹部はHP Wayの理念を引き続き継承するとし、そのために合併を実行するのだと主張しました。逆にHewlettは、合併はHP Wayに反すると主張しました。HP Wayが今日も価値あるものであるかどうかは別として、両者のどちらかがそれを受け継いでいると思いますか?

Anders:この論争が忘れられてしまうころに、おそらくHP Wayというものは今までほど意義を持たなくなるでしょう。HP Wayという言葉は、あらゆるものを正当化するために使われてしまっています。もはやHPは袋小路に迷い込んでいるのです。

Burrows:私は違う意見を持っています。私はこの論争を、HP Wayがかつての輝きを取り戻す機会だと見ています。大部分の社員は、HP WayがHPの価値を高めていると捉えているのです。これは、感傷的もしくは社会主義的な見方ではありません。HP Wayというのは、会社が軌道に乗っていた時期のものでは決してありませんから。

Peter Burrows著「Backfire」

――本の執筆のための調査で一番驚いたことは何でしたか?

Anders:Hewlett以上にFiorinaが強く勝ちたいという意思を持っていたことです。もちろん、Hewlettは人生をかけて合併を断固反対しました。彼はHPについて他の誰よりも気にかけていました。彼のファミリーネームが会社のドアに明記されているのですから、それは当然です。けれど、私が驚いたのは、HewlettよりもむしろFiorinaのほうがその気持ちが強かったことです。例えば、委任状を依頼するために電話をかけるべき人のリストを目にしたとしましょう。Hewlettはこのリストを見て、「なんてことだ。まさか、私がこのリストのすべてに電話しなくてはならないのか?」と嘆き、「仕方ない」と言って電話をかけることに応じるでしょう。しかしFiorinaの場合は、彼女のリストを見て、「このリストからもれている人の名前はないの?」と念を押すはずです。

Burrows:委任状闘争の最後の数日間に、Hewlettのアドバイザー(この戦いで勝利すれば、彼らには多くの成功報酬が約束されていた)は、5億ドル相当の株を買うことを持ちかけていたそうです。彼らは融資枠を用意していました。株だけでなく、議決権を得るための取引も試みようとしたのです。しかし、アドバイザーによると、またHewlett自身も語っていましたが、彼は「それをするつもりはない」と拒否したといいます。この時点ではまだ彼が勝つかどうか分からなかったはずなのに、です。Hewlettの目的はただひとつ、Fiorinaを追い出すことでも、理事会を乗っ取ることでもなく、この買収を破談にすることだったのです。彼は同じような意見を持つ投資家に選択肢を提示したかったのです。私にとって、彼がお金で議決権を買おうとしなかったことは驚きです。

Anders:それから、12世紀のフランスの恋愛物語であるエロイーズ(Heloise)とアベラールの話がありますね(編集部注:大学で中世西洋史を専攻したFiorinaが、Compaqを買収するペーパーカンパニーをこの物語になぞらえて「Heloise Merger Corporation」と呼んだ一件)。

――アベラールは最終的に去勢されてしまうことから、前Compaq Computer CEOのMichael Capellasをアベラールに当てはめて考えられますね。けれどもエロイーズが最後どうなるかについてはあまり語られていません。

Anders:彼女は結局修道院で生涯を終えるのです。彼女もあまり幸せな運命ではありませんでした。

Burrows:確かにとても面白い話ですね。一連の合併をやりとげるに至ったFiorinaの決心だけでなく、彼女のパーソナリティーについてもうまく言い得ていると思います。これは非常にリスキーなことです。もしCompaq Computerの6万人の社員の中に、エロイーズとは誰のことかと気づいた人がいたら、この合併はどうなっていたことでしょう。

Anders:何ともはらはらさせる大胆な話です。大衆がとても大きな掛け金をかけたくなるような悪ふざけですね。ここ何年かで、私たちはFiorinaが茶目っ気のある、いたずら好きの性格であると知りました。彼女をまじめな普通の大企業のCEOに変身させてしまうのは、Fiorinaの素晴らしい一面を失うことであり、なんとも惜しいことですね。

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