5. 軽量なプログラミングモデル
「ウェブサービス」が流行り言葉になると、大企業はわれ先に複雑なウェブサービススタックを構築し、分散アプリケーションを実現するための安定したプログラミング環境を提供しようとした。
しかし、ウェブがハイパーテキスト理論の大半を無視し、理論上の正しさよりも、シンプルな実用主義を重んじたことによって成功したように、RSSはその単純さによって、おそらくは最も広範囲に配備されたウェブサービスとなった。それに対して、企業が構築した複雑なウェブサービススタックは、まだ限定的にしか利用されていない。
同様に、Amazonのウェブサービスも2つの方法で提供されている。ひとつは、SOAP(Simple Object Access Protocol)を採用した、厳密な構成を持つウェブサービススタック、もうひとつはHTTP経由でHTMLデータを提供する単純で軽量なアプローチだ。後者の方法はREST(Representational State Transfer)と呼ばれることもある。複雑なB2B接続(AmazonとToysRUsなどの小売りパートナーを結ぶ接続など)にはSOAPスタックが利用されているが、Amazonのウェブサービスの95%は、軽量なRESTインターフェースを通して利用されているという。
単純さを追求する傾向は、その他の「有機的」なウェブサービスにも見受けられる。先日発表されたGoogle Mapsはその好例だ。Google MapsはAJAX(JavascriptとXML)を利用した単純なインターフェースを採用しているため、ハッカーたちはすぐさまそれを解読し、データをリミックスして、新しいサービスを作り上げた。
地図関連のウェブサービスは、すでにMapQuest、MicrosoftのMapPoint、そしてESRIなどのGISベンダーからも提供されていた。それにも関わらず、Google Mapsが熱狂的に受け入れられたのは、これが非常に単純なサービスだったからにほかならない。ベンダーが提供するウェブサービスを利用して、新しい試みを行うためには、そのベンダーと正式な契約を結ぶ必要があったのに対し、Google Mapsはユーザーがデータを自由に利用できるようにした。このため、ハッカーたちはGoogle Mapsのデータを再利用して、すぐに創造的な試みを行うことができた。
この事例は、次のような重要な教訓を示している。
組み合わせによる革新
軽量なプログラミングとつながりには、軽量なビジネスモデルが伴うものだ。Web 2.0の考え方は、再利用に適している。たとえば、housingmaps.comのような新サービスは、単に既存のサービスを組み合わせることで実現したものだ。Housingmaps.comは(まだ)ビジネスモデルを持っていないが、Google AdSense(あるいはAmazonのアソシエイト収入、またはその両方)を利用すれば、こうした小規模なサービスでも容易に収益を確保することができる。
これらの事例は、Web 2.0のもうひとつの重要な原則である「組み合わせによる革新」を理解する助けになるだろう。コモディティ化したコンポーネントが大量に存在するときは、これらのコンポーネントを新しい方法、または効果的な方法で組み合わせることによって、新しい価値を生み出すことができる。PC革命は、コモディティ化したハードウェアを組み合わせることで革新を起こすことを可能にした。Dellが組み立て事業によって、技術革新に依存したビジネスモデルを持つ企業を打ち負かしたように、Web 2.0は他社のサービスを利用し、それを統合することによって、市場競争を勝ち抜く機会を企業に提供する。
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