ケータイのアドレス変更は苦か楽か
SFCの学生に聞いたところ、変更しようと思わないのはパソコンと同じで「通知が面倒」という理由が多かった。ただし、ケータイの場合はパソコン以上に不自由だ。ケータイは入力環境が限られていることもさることながら、メール機能上の制約でCcやBccで一斉に変更を通知することはできない。この点もまたケータイのアドレス変更を避ける理由になっている。それだけではなく、ケータイ向けメールマガジンをいくつか取っているなら、各サービスのページに行っていちいち登録内容を変更しなければならない。確かに骨が折れる。
そうは言いながらも、ケータイのアドレスを頻繁に変更する人もいる。その人に理由を聞くと、以前のように迷惑メールが押し寄せてきたからではなく「気軽に、何となく気分で変えた」という答えが返ってきた。SFCの学生にとってメインのメールアドレスはパソコン向けという意識が強いせいか、サブの連絡先としてのケータイのメールアドレスの変更をためらわない感覚も存在するようだ。
新しいアドレスも気分で決めたと言っており、そのアドレスもまた気分が変われば変更してしまう、あくまで一時的なものだそうだ。アドレスを変更したら苦労してでも電話帳の中の人に変更を知らせると言う。相手にアドレス変更登録の面倒を強いることになるが「相手が変更しなければそれはそれでいい」そうだ。
僕もつい先日ケータイのアドレスを変更してみた。アドレス変更の話を聞いて試しにやってみようと思い立ったこともあるし、年が変わってちょうどよいからという理由もあった。電話帳の中の人に変更したことを通知するのは、それは大変な作業だった。僕が使っている端末では5件までしか同報送信できないため、何度くり返したことか。先に話を聞いた人が、なぜこんな苦労をしながらも気分でメールアドレスを変えようと思うのか、よっぽどマメな人でなければそうは思わないのではないか、とすら思った。
しかし、アドレス変更のお知らせをし終わってからの数日間で、アドレス変更をする1つの理由がわかった気がする。変更の通知に対して、普段あまりメールをやりとりしない古い友人から返事が返ってきて近況報告をし合ったり、久々にご飯でも食べに行こうと約束したりするなど、アドレス変更をきっかけにしたコミュニケーションがいくつも生まれたのだ。これはちょうど新年に年賀状を送り合って久々に会って話をする感覚、グリーティングに近いと思った。年賀状をコミュニケーションのきっかけとして捉えるならば、はがきでもメールでも同じ意味がありそうだ。
それと同時に、ケータイのメールアドレス変更は、このコラムで以前触れたメッセンジャーのステータスの変更にも近い感覚を覚えた。そのときの状況や気分によって頻繁にステータスを変更し、その内容に反応することをきっかけにしてチャットのコミュニケーションが発生する。
ケータイのメールアドレス変更は、変わったアドレスそのものに反応するわけではない。しかし、気分でアドレスを決め、変更・通知をすることでコミュニケーションのきっかけを生み出す様子は、その通知に相当な労力が割かれるとはいえ、メッセンジャーのステータスを変えることと何ら変わらない。パソコン向けのメールアドレス変更が引っ越しならば、ケータイのアドレス変更は心変わり程度の感覚。ケータイでより手軽に心変わりを表現できるステータス表示やメッセンジャー機能の実装は可能性を持っているはずだ。
最後に僕が今回メールアドレスを変更したときに気付いた豆知識を紹介しよう。もしあなたがNTTドコモのケータイユーザーでアドレスを変更しようと思ったら、22〜23時頃に変更してお知らせのメールを送り始めるとよい。ドコモのケータイは迷惑メール対策として、特に設定を変えない限り1日200通以上を送信した端末からのメールを自動的に受信しないようになっているからだ。
そのため、アドレス変更の通知を大量に送信すると、ドコモユーザーにはメールが送信できなくなってしまう。ちなみに他のキャリアへのメールには影響がない。午前0時にカウントがリセットされるようなので、日付が変わる前から変更通知を送り始めれば、翌日メールが送れないなんて言うことにはならないだろう。
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