「マーフィーの法則」という本をご存じだろうか。「失敗する可能性のあるものは、失敗する」というフレーズから始まるこの本はArthur Blochによって書かれ、1993年に発売された。当時ベストセラーになっていたので家にあると言う方も少なからずいるのではないか。僕もまさにその1人である。1993年といえば僕が初めてパソコンに触れた年で、今から実に10年以上も前の話だ。最近イマイチ納得できないことが続いていて、何となく本棚を眺めていたらこの本が目に入ってきたからついつい紹介してしまった。
マーフィーの法則は世の中には2つあり、片方は成功法則が書かれているが、この本はむしろ技術者の間で広まった失敗談に近い。1949年にアメリカ・エドワード空軍基地でエンジニアとして働いていたエドワード・マーフィーが「人は、いくつかの方法のうちの1つが最も悲惨な結末になるならば、それを選ぶ」と言ったそうだ。それが紹介され、エンジニアの間で広まったのがきっかけとされており、日常の中で遭遇するとても偶然とは思えない皮肉な現象を、どきっとするようなイキイキとした名言風の口調で綴られている本だ。
さてこの1年を振り返ると、イマイチ納得できないことが多々あった。今年これで最後になるであろう法則から紹介する。
「年賀状を印刷しようとすると、プリンタが壊れる」
これはまさに昨日起きた出来事だ。やや出遅れ感もあるが、我が家で年賀状印刷をせっせと始めようとした時に、プリンタが上手く動かなくなって印刷が出来なくなってしまった。プリンタが故障したと分かったのは午後8時。まだ間に合う、と急いで家電量販店へ行って新しいプリンタを購入した。
壊れてしまったプリンタの保証書によると、前回プリンタを買い換えたのも12月、年の瀬だった。そのときのシチュエーションまでは記憶していないが、12月に買ったと言うことは、年賀状を印刷しようとしてプリンタが壊れてしまったのではないか。今年と全く同じ状況だ。経験として「年賀状印刷をしようとするとプリンタが故障する」という予感というか、潜在的な意識がそうさせているのだろうか。
プリンタに関して言えば、今まで使っていた機種が1998年か1999年のモデルだったため、5年前後もったことになる。使う頻度にも依るのかもしれないが、僕の使い方だとケータイは1年、ノートパソコンは2年周期で買い換えているので、これらに比べれば長持ちする種類の商品だ。そのため一番良い機種を買うことにした。5年前に比べればどのメーカーのものでも画質では勝っている。
今までがEPSONのプリンタだったため、EPSONでも良かったのだが、プリンタ売り場の陳列を眺めていてデザイン的に部屋に置きたいと直感的に思ったCanon PIXUS iP8600を購入してきた。今もバックグラウンドで、快調に年賀状印刷をしている。比べてはいけないと分かっていながら、今までよりも早くて静かでキレイだし、カセット給紙と自動両面印刷も便利だ。とても満足している。以下の2つのことが起きないことを祈るばかりだ。
「最上位機種を買った直後に、さらに性能の良い新シリーズがリリースされる」
「部屋の雰囲気とコーディネートすると、すぐに模様替えをするか、引っ越す」
かねてからCD-Rの表面の印刷をしたいと思っていて、新しいプリンタはCD-R印刷に対応。トレイにセットすれば良いようになっている。これはとてもうれしいのだが、実は既に残念なことが起きている事に今さっき気付いた。壊れたプリンタはCD-Rに対応していない最後の機種だった。11月末、前のプリンタは快調に動いていた時にCD-Rが切れてしまい、当然のようにプリンタブルではない50枚入りCD-Rを購入している。まだ3枚ほどしか使っていないので、あと47枚使い切るまでは、念願のCD-R印刷が出来ない。
理不尽は何も家の中だけで起きているわけではない。出先でも色々な理不尽に遭っている。これは理不尽と言うよりは自分のおっちょこちょいに起因するものだ。
「新しいCDもしくは編集したてのプレイリストを聴こうとすると、iPodの電池が切れる」
これは悔しい。新しいCDを買ってきて、iTunesに読み込み、翌日学校に行く間に聴こうと意気込んでいる時に電池が切れていると、その電車内での1時間ちょっとは、手持ちぶさたになってしまう。音楽を聴こうと思っているので、本を持ち合わせていないからだ。席が空いていれば寝ていられるかもしれない。しかし、
「iPodの電池が切れているときに乗り合わせる電車は、混んでいる」とたたみかけられてしまうと、文字通り呆然と立ちつくしているしかない。新しいCDを読み込むならば、キチンとフルになるまで充電しておくべきだ。あるいは学校でiPod友達を見つけておくと良いかもしれない。中にはiPodを充電することが出来るケーブルを持ち合わせているかもしれないから。
もしもクルマに乗るのなら、Monster iCarPlay Wirelessがオススメだ。iPodの音楽をFMトランスミッターでカーラジオに受信させて聴く、というオプションはいくつか出ているが、iPodから給電するタイプの場合は電池が切れていれば聴くことが出来ない。つまり上に挙げた法則しかしこのケーブルはクルマのシガレットから給電し、iPodを充電しながらFMトランスミッターで音楽を飛ばしてくれるため、電池切れの心配はない。iPod電池切れの法則については、少なくともクルマの中では解放された気がして気持ちが良い。
以前も書いた通り、修士論文を書いている身である。ちょうど10月末に中間発表会があったが、これは冷や冷やものだった。秋学期(10月始まり)の始めから、どうもPowerBookの挙動がおかしかった。電池は満タンなのにスリープ状態から復帰しようとふたを開けると電源が落ちていたり、使っているときに急に電源が切れたり。強制的に再起動をしなければならないようなものだ。
再現性があったりなかったりと不規則だったため、そのまま中間発表に突入した。発表前におかしくなって再起動をしなければならなくなっては困るため、発表の会場に着いてから1度再起動し、プレゼンテーションソフトだけを起動した。アニメーションがかくかくしては格好が悪いので、再起動してから一度通しでスライドショーを実行してからプレゼンテーションに臨んだ。無事に発表は終わったのだが、その数日後に一切PowerBookが起動しなくなってしまった。最悪な事態は免れたものの、
「極度に緊張する作業を経ると、パソコンが壊れる」という法則はありそうだ。
プリンタの時と似ているが、以前ノートパソコンを買い換えたのは、大学院の入試の研究計画書を作成して提出し終わった時に、それまで使っていたノートパソコンが壊れたからだった。毎日持ち歩いていると、持ち主のストレスが何らかの形で伝わってしまうのだろうか。11月に買ったのはPowerBook G4 12"。PowerBook G5の噂をチラホラ聞きながらも、ノートパソコンがないと困るので購入した。DVDも焼けるスーパードライブモデルではなくコンボドライブにしたのが良かったのかもしれない。最上位機種ではないので、「最上位機種を買った直後に、さらに性能の良い新シリーズがリリースされる」の法則は適用されなかったようだ。
SFCの学生はノートパソコンを常に持ち歩いているが、普通はケータイも常に持ち歩いている。常に持ち歩いているものへ降りかかる悲劇は連動するかもしれない。
「ノートパソコンが壊れると、ケータイも壊れる」それまで使っていたPowerBookが壊れてしまったのとちょうど時を同じくして、DoCoMoのFOMA P900iの調子が悪くなった。バイブレーションが動かなくなってしまったのだ。外出したり学校へ行ったりすれば、1日中ほぼ常にマナーモードにせざるを得ないため、着信は不在着信、メールはことごとく無視、といった状況になってしまった。さすがに困るため、銀座のApple StoreでPowerBookを梱包してもらっている間に、DoCoMoショップに行って交換してもらった。
それにしても、2004年はたくさんのものが理不尽なタイミングで壊れたものだ。しかしこう考えてはどうだろう。買い換えるべき時期が来ているものが、自分から壊れて知らせてくれるととらえれば、書籍「マーフィーの法則」にある通り「絶好のチャンスは、最悪のタイミングでやってくる」わけだ。そして買い換えるときには、残念な理不尽から学んでこれを防ぐもしくは克服するような買い物をすれば、それが良い買い物ということになるのではないか。
そんな僕は、気付けば今年厄年だった。この程度のやっかいで済んだ事をありがたく思うべきだろうか。
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