SFCに関係する情報を提供するメール・ウェブマガジン「SFC CLIP」が、自分たちからSFC関係者のBlogにトラックバックを送ろうとしている。SFC CLIPは2001年3月に中島洋研究室(当時)で生まれたプロジェクトで、編集部を組織している学生が毎週SFC内の情報を記事にして、メールマガジンとウェブマガジンとして配信している。
SFC CLIP |
SFCの事務室があるα館には、試験や休講、補講情報など授業に関係する内容、奨学金や論文募集のお知らせ、イベントの告知ポスターなどが貼られる巨大な掲示パネルがある。3mにもなる高さがあり、時々職員が紙を貼り付ける作業をしているが、当然はしごを使わなければならないほどの高さだ。
貼り付ける方が大変なら読む方も大変。大きな文字の掲示だったり、目の良い人が見るのだったら、何とか読み取ることが出来るかも知れないという状況だ。重要な情報があるかも知れないのに、多くの学生は見ないで素通りしていく。デジタルキャンパスにおける非効率な情報流通へのソリューションとしてSFC CLIPは学生教員問わず重宝しているメディアになった。
最近では掲示パネルの内容も、キャンパスのオフィシャルページで情報を提供したり、授業情報専用のシステムが導入されたりして電子化されつつあるが、掲示パネルの告知が全て網羅されているわけではない。SFC CLIP代表の泉谷由梨子氏によると「今でもデジタルカメラの望遠ズームを使って写真を撮り、文字におこしている」そうだ。SFC CLIPが配信する情報は掲示パネルの情報に留まらない。六大学野球早慶戦の試合速報や授業でのゲストレクチャー、サークルのイベントの告知やレポートなど、キャンパス生活に関係する内容の多岐に渡る。
SFC CLIPは2004年春からは独自の編集システムを構築し、コメントとトラックバックの受付に対応を果たした。「湘南コミュニティバス」計画の中止の記事には、計画を進めていた本人からの詳細な経緯のコメントが寄せられた。またキャンパス内ネットワーク担当者へのインタビュー記事にも、インタビューに応えた本人が追加のコメントを書き込んでいる。このように、いったん発行した記事が成長する効果が見られる。
「コメント機能はスタート当時から入れたかった機能。記事の当事者や関係者からの書き込みが盛んで、より深い情報が集まる。トラックバックは記事への注目度や読者の意見を測る事ができる。媒体として記事にした情報に加えて、その先に何があるかまで提供できるようになった」(泉谷代表)と効果を語った。
しかし成長していく中で、マスメディアになる事への苦悩も抱えている。「今まで規模が小さかった頃は、取材させてもらうという立場だったが、現在では「SFC CLIPが取材に来てくれるなんて驚き」という反応が帰ってくるようになってきた。あるいは当然SFC CLIPは情報を持っているだろうという前提が敷かれ、草の根の情報が集まらなくなってしまう」と反応の変化に困惑を隠さない。身近なメディアを維持する方法をあれこれ考えたという。
そこで出てきたアイディアが、SFC CLIPからBlog記事などへのトラックバック送信だ。トラックバックを受け付けるニュースサイトは依然としてごく少数に留まっているが、トラックバックを送るニュースサイトとなると皆無ではないだろうか。トラックバックを送る相手はSFCなどのBlog。SFCのBlogには、日記的なものに紛れて、研究や活動の詳細な情報をフォローしたり、リリースそのものを自分のBlogで行う事もある。
泉谷代表は一次情報がBlogに現れているSFCの環境について、「SFC内のBlogが情報源である事が増えてきた。SFC CLIPで取り挙げる際に参照先・引用先を明示する事によって、Blogを書いている学生や教員にはSFC CLIPに取り挙げられるかも知れないという意識ができる。今にも増して、SFCのBlogから有益な情報が与えられるようになるかも知れない」と指摘した。
今まではメールマガジンを送信するかウェブサイトで来てもらうしかなかった。しかしトラックバックを送る事で、そのリンクから記事にアクセスしてもらう流れを作る事ができる。SFC CLIP独自のシステム開発を手がける渡辺裕作さんは「アクセス方法の多様化が実現できる」としている。
皆が信頼を寄せているキャンパスのメディアがトラックバックを打ち始めるとどうなるか。いったん無秩序に蓄積され始めたキャンパス内のBlogを編集する役割を担い始める可能性がある。また記事に対して本人や関係者から直接情報を引き出しながら議論が進むその様子を、記事の読者もリアルタイムに見ていく事になる。記事が議論によって育っていく新しいスタイルを作れれば、今まで以上に内外の人がSFCに関心を向けるきっかけとなる媒体になるのではないか。
ただしインターネット上の全てのニュースサイトからトラックバックが送られてくるような“トラックバックスパム”が流行するようになるというのは望まないけれど。
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