今日は古いけれど新しいお話を。
いまから10年以上前、「24 Hours in Cyberspace」というプロジェクトがウェブ上で展開されたことがあった。当時のニューメディア(CD-ROMや、ネット)を使って先進的な試みを行っていたRick Smolanという写真家を中心に実施されたこのプロジェクトを、古くからのネットユーザーの方はご記憶かもしれない(いま、改めて調べてみると、このプロジェクトで集まった画像データを元にした同名の書籍は、Amazon.comのMarketplaceで売りに出されているものの、拠点となったウェブサイト(http://www.cyber24.com)自体はすでになくなっていることが分かった。
「ある一日(実施されたのは1996年2月8日)を選んで、その日の世界各地の様子やそこで起こった出来事を写真に撮影し、そのデータを一箇所に集めて公開する」という「24 Hours in Cyberspace」では、世界中に散らばるたくさんの協力者の尽力により実現したのだが、それとともにどんどん集まってくるデータを処理・公開するためのコンテンツ管理システム(CMS)他のツール類も重要な役目を果たしたと聞く。実際に、このプロジェクトのために開発されたウェブオーサリングツールをベースとする「NetObjects」という製品も後に登場した。
話は脱線するが、このNetObjectsを開発・販売していた同名の会社の創業者、Samir Aroraとは、97年秋に幕張で会話を交わした記憶がある。自分が制作に関わり、その頃ちょうど世に出た書籍(ムック)のスポンサーとして、NetObjectsに(日本の代理店を通じて)協賛してもらった関係からだった。ちなみに、この時にはCold Fusionを世に出して間もないJeremy Allaireも来日し、同じ会場で製品の売り込みをしていた。Allaireは、その後Cold FusionがMacromediaに買収されたのに伴いMacromediaのCTOに就任。さらにMacromediaを離れた後、サバティカルを経て立ち上げたBrightcoveのCEOとして現在も業界の第一線で活躍していることは改めていうまでもない。
さて。今日、TechCrunchの「Glam Media Gets $18.5 Million And A CNET Chairman」(日本語版はこちら)というエントリを眺めていて、ひさしぶりにSamir Aroraの目にした。いまはこのGlam Mediaというウェブ版ファッション誌の会長職を務めているとのこと。 ちなみに、TechCrunchのエントリの内容は、このGlam Mediaが複数のベンチャーキャピタルから合わせて1850ドルの資金を調達、あわせて米CNET会長のJarl Mohnも投資家兼戦略アドバイザーとして、Glam Mediaの経営に力を貸すことになったというものだ。
このエントリの詳しい内容については、上記日本語版をお読みいただければと思うが、なかで1つ興味深かったのは「米国では、他のオフラインメディアの不振を尻目に、紙の雑誌は過去5年間ほぼ一定(17%平均)の売上の伸びを記録している」という部分。さらに、「2004年には、女性をターゲットにしたオンライン広告は全体の半分以下に過ぎなかったが、現実の生活(=オフラインメディアを指す?)では80%以上が女性向けのものだ」という指摘もみられる。Aroraの考えでは、今後オンラインの広告比率もオフラインのそれに近づくという。そして、すでに月間700万人が訪問し、上位10以内に数えられる自分たちのウェブサイト(でのビジネス)にはそれだけ大きな成長の可能性があるといいたいのだろう。
なお、Glamのアイデア自体は2002年に生まれたもので、それを実現するきっかけとなったのは、PC Forumで有名なEsther Dysonの「議論ばかりしてないで、じっさいにやってみせなさいよ("Well, don't just stand there talking about it- go make it happen.")」という鶴の一声(?)だったと同社のウェブサイトには記されている(この声を受けてプロジェクトが動き出し、2003年にはGlamの最初のバージョンが公開されたという)。
日本でも先ごろ、女性誌と提携し、紙面に掲載された洋服が買えるというサービスを提供する「マガシーク」が上場した。女性向けアパレル販売サービスで成功を収めてところ、ほかにもいくつかあると聞く。AroraらのGlam.comも、概ね同様のビジネスが期待できるだろう。ウェブオーサリングツールとオンライン女性誌と聞くとかなり異質な取り合わせに思えるが、やはりシリアル・アントレプレナーとよばれる人々は、その時々に有望なチャンスの芽を見つけ出す優れた嗅覚を持っているということだろうか。
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