ウェブを通じてライブで伝えられた「CNETエディターの遭難と死」

坂和敏(編集部)2006年12月08日 20時01分

 米国のCNET Networks関連サイトでは現在ページ最上部に置かれた黒い帯の上に「In memoriam: James Kim, CNET senior editor, 1971 - 2006」という白抜きの文字が並んでいる。この感謝祭の休日に、家族とともにオレゴン山中の雪の中で遭難し、そのまま(本人だけが)帰らぬ人となったJames Kimという編集者の死を悼んでのものである。

 このKim一家の遭難とそれに続く一連の動きは、News.comをはじめとするオンラインメディアのほか、NBCABCなどのテレビ各局のニュース番組でも報じられ、またさまざまブログなどでも大きな話題となっていた。

 なかでも、diggでの動きは非常に活発だったと思う(このリンクをたどって今月のランキングを見てみれば、関心の高さは一目瞭然だろう)。一家が行方不明になった時点から、捜索状況のアップデート、妻とふたりの幼児(4歳と7カ月)の救出(写真)、そして本人の遺体の発見まで、ほぼ2週間にわたってさまざまな情報が投稿され、共有された。そのなかには、雪の中、救援を求めてKim本人がたどった道筋を示すGoogle Earthのマッシュアップや、さまざまなビデオに関する情報なども混じっている。

 この一件に関しては、文字通り膨大な情報が溢れているため、それらを整理して簡潔に伝えることは私にはかなわない。「その代わりに・・・」といっては何だが、Firefoxの開発者であるBlake Rossが自らのブログに記した以下の一文を紹介することで、この記事のまとめとしたい。

 世の中には、James KimがIT業界で有名だったからこそ、彼の一家の話が、毎日行方知れずになっている他の多くの人の話に比べて、桁違いの注目を集めたという人もいる。だが、私がJamesの名前を耳にしたことも、彼の出演したビデオや彼の手になる記事を読んだことは、これまで一度もなかった。
 今回の悲劇が私のまわりを取り巻いているが、これは過去7日間に私がKim一家のことをよく知るようになったからで、「行方不明の家族」あるいは「ある旅行者」として知ったわけではない。私は(ウェブを通じて)Jamesの出ているビデオを観たり、彼の妻のKatiが経営するブティックをのぞいたり、彼らの生活に入り込んだ("trespassed")。CNETの同僚からのコメントを読み、救出の模様を(テレビを通じて)リアルタイムで眺めた。Kimのスラックスや人々が見つかるたびに、私の希望はしぼんだり、膨らんだりした。・・・
 ・・・メディアのせいでわれわれが思いやりの心を失ったという人々は、人間の精神(spirit)を過小評価している。われわれがほかの仲間のことを気に掛けるその思いは、これまでと同じくらい強い。ただ、時間や空間の点で制約があるメディアでは、わたしたちが気に掛けるべき人々のことが伝えられない(だけだ)。
 ・・・かつて私たちを隔離していた(sheltered)これらの制約--それは人間の生活を、印刷されたパラグラフやテレビのスポットに押し込めてきた--から私たちは解放され、そしてそれらの制約はいま私たちの目の前で容赦なく崩壊しつつある。ウェブの登場と普及により、私たちと私たちが愛する人々の関係はずっと近しいものになったが、それだけでなく私たちのほうも(ウェブのおかげで)より身近に感じられるようになった人々を愛せるようにもなったのだ。(「How I Knew James Kim」より)

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