盛り上がるブログスフェア--米で新たなゴールドラッシュが進行中 - (page 2)

坂和敏(編集部)2006年08月24日 18時43分
  • Arringtonは先ごろ、「Gizmodo」--先月末に日本語版もスタートしたガジェット系ブログ--やEngadget--こちらも日本語版があるのはご存じの通り--と競合する「CrunchGear」を、Gizmodoの主要なメンバーだったJohn Biggsという人物を引き抜いて立ち上げた。このニュースを採り上げたBusinessWeekのブログ「The Tech Beat」のエントリーのなかには、ArringtonがTechCrunchのほかすでに「MobileCrunch」(モバイル系情報)「CrunchTalk」(ポッドキャスト)「Crunchboard」(Web 2.0系の仕事にフォーカスした求人サイト)などのサイトを運営していることに触れながら、Arringtonがゆくゆくは10〜15のサイト--できれば、それぞれの分野でトップのもの--を持つネットワークをつくるという目標を掲げている、と書かれている。さらに、本人の口から出た言葉として「分散型のCNETのようなものをつくりたい("he says he hopes to create a sort of 'distributed CNET'")」と考えているという記述もある。
  • TechCrunchの広告を扱っているFMは、昨年秋に元Wired誌編集者であり、Industry Standard誌を創刊したJohn Battelleという人物が創業。なお、このための資金はNew York Timesと、eBay創業者のPierre Omidyarが出したという。FMには現在8人の営業担当者がおり、TechCrunchなどのほかあわせて75サイトの人気ブログを取り扱う。これらのサイトの平均広告料金は過去6カ月間でほぼ倍になり、CPMは現在約8ドル。FMではこのCPMを、CNETやNYTimes.com並みの20〜30ドルまで引き上げたいと考えているそうだ。
  • FMの取引先のなかには、TechCrunch以外に、「GigaOm」(元Business 2.0記者のOm Malikが運営)や「Fark.com」、「Boing Boing」といった人気ブログもある。そして、Fark.comの場合は3人、Boing Boingのほうも4人という小所帯でオペレーションを回している。そして、ここが肝心だが、Fark.comはまもなく月間の広告売上が60万〜80万ドルに達する勢いで、(FMの)Battelleは「Farkが1年に100万ドルの利益を稼ぎ出す最初の独立系ブロガーになるだろう」とコメントしている。また、Boing Boingについても、今年1年間の広告売上が100万ドルを超えそうだという。
  • こうしたブログネットワークの「草分け」的存在であるGawker Mediaでは、現在13のブログを運営。全体でのPVはこの6月に6600万を数え、今年の売上(外部の推定による)は最大300万ドルになるという。なお、Gawker MediaサイトのCPMは平均で8〜10ドル。これに対し、Google AdSenseや競合する自動広告配信システムのCPMは50セント〜数ドルだということだ。
  •  この記事のなかでは、広告売上という収益基盤の弱さ--景気が後退期に入ればすぐに影響を被る--について触れ、さらにプロフェッショナル(?)ブロガーの増加による競争激化で広告単価が低下するおそれがあるとも指摘している。だが、それでもこれらのブログの運営経費が既存のメディアに比べて極めて少ないため、厳しい時期でもその分しのぎやすいのではないか、と楽観的な見方をしている。

     最後に。これもArringtonがブックマークしているものだが、(先述の)「When Does a Blog Become a Magazine?」というブログのエントリには、「TechCrunch」が雑誌を出せば、うまく行くのではないかという考えが書かれている。この「Personified」というブログの運営者は、TechCrunchのRSSフィード登録者約8万5000人という数字をベースに、「雑誌を出せば、すぐにでも2万人くらいの購読契約がとれるだろう」と延べ、さらにブログの広告枠がすでに埋まっている現状で「雑誌のほうにでも広告を出したいというウェブ系企業が多くあるはずだ」、「ブログには馴染まない、深みのある/質の高い/ジャーナリスティックな記事も紙媒体なら扱える」といった点を挙げている......。

     すでにケータイ発の小説が書籍化している日本では、とくに目新しいアイデアでもないが、このウェブから紙媒体へという可能性について、本人がどう考えているかは定かではない。しかし、TechCrunch/Augustus Capitalのパーティに500人とも700人ともいわれる参加者を集め、一晩で5万ドルも稼ぎ出したというMichael Arringtonがこの「飛ぶ鳥落とす勢い」を利用して新たな分野に進出するとしても、いっこうに不思議はないと思える。

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