低予算で起業するための王道はあるのか?新興企業をブートストラップする方法

文:Matt Rogers 翻訳校正:吉井美有2007年10月09日 08時00分

 新興企業をどのように運営し、製品を開発するか。この記事は、このテーマでAroxoのMattRogers氏がゲストとして寄稿する。Aroxoは消費者用電化製品、コンピュータ関連製品、白物家電などの個人間取引を行うサービスである。

 多くの起業家は、ビジネス上のアイデアを、できるだけ低い予算でプロフェッショナルの機能するビジネスに変えることを狙っている。これは通常「ブートストラップ」と呼ばれており、落とし穴や危険を伴うものだ。上手に行われれば、企業は素早く、プロフェッショナルな形で立ち上げることができ、創立者は財産を失わずに住み、破産も避けられる。

 これに続く数本の記事では、これまでわたしが辿ってきたいくつかの企業でのプロセスを概説して、下記のようなことがらを説明する。ブートストラップにはどのような要件があるのか、開発者やデザイナーをどう調達するか、どれだけの予算が必要なのか、開発契約をどのように結ぶべきか、ベンダーをどのように管理すればよいのか、リリースをどのように計画するか、必要なものをどう文書化するかなどだ。

ブートストラップとは何か

 ブートストラップは企業にとってどういう意味を持つのだろうか。ブートストラップには、ビジネスを低予算で立ち上げるという意味合いがある。実際には、これは設計と開発をアウトソースし(国外である場合が多いだろう)、サーバは借り上げで、オフィスを持たず、起業家には給料が出ないということを意味している。立ち上げ以前に買う必要のある唯一の高価で専門的なサービスは、法的な助言と会計監査業務だけだ。他のものはすべて、仕事を進めて行くにつれて起業家が自分で選ばなくてはならない。

 なぜブートストラップなのか。企業が市場参入の際にブートストラップの選択を考えるべき理由は2つある。創立者は自分の資産を失わずに済むかもしれないと思えるかもしれない。あるいは創立者が市場に参入するために最低限の資金しか調達しなくて済む。どちらの場合も、ブートストラップは適切なモデルだ。

ブートストラップのプロセスの概要

 このシリーズの最初として、ブートストラップのプロセス全体を見てみよう。今後の記事では、各プロセスの詳細について詳しく見ていく。

 ブートストラップは、起業家にとっては非常に刺激的な進め方だ。しかし、それにはリスクがつきまとうし、その中でも最大のものはソフトウェア開発の失敗に対する対策だ。アウトソースされたプロジェクトの3分の2は失敗するため、失敗の可能性は高い。主要な理由は次のようなものだ。

  1. クライアントがベンダーに対して要件を適切に伝えることができない
  2. クライアントが開発プロセスの間に考えを変え続ける
  3. 開発契約に不備がある

 成功の可能性を最大化するには、次のようなブートストラッププロセスを踏むべきだ。

 1.戦略:自分のアイデアを文書化された戦略にする。狙っていく市場、現在のサービスのどこが問題か、それをどう改善していくのかを書き留めておく。また、潜在的なユーザーにどのように情報を伝えていくのか、彼らがオンライン上のどこにいるのか、彼らにどのようにアプローチするかについても絞り込んでおく。自分のアイデアが正しいかどうかをテストする。

 2.モックアップ:自分の欲しいシステムのモックアップを作る。モックアップの画面には、最終的なシステムが持っているべき情報やナビゲーションが含まれているべきである。これを正しく行うためには、いくつかのモックアップが必要であり、単純ではない。

 3.機能仕様:機能仕様と呼ばれる文書を作成する。機能仕様は、開発者に対しモックアップの各画面がどのような動作をし、モックアップの各ボタンやリンクがどのような機能を持つかを記述したものだ。

 4.ベンダの候補リスト:発注を行う可能性のあるソフトウェアベンダの候補リストを作り、それぞれとNDA(秘密保持契約)を結ぶ。ただし、それに依存しないこと(これについては後に詳述する)。

 5.提案依頼(RFI):RFIプロセスを書き、実行することで、ベンダの候補リストをふるいにかけ、4〜10の少数のベンダに絞り込む。

 6.見積依頼(RFQ):各ベンダが従うべきアプローチ、費用、期間、条件を定めるRFQプロセスを書き、実行することで、ベンダを選択する。同時に契約交渉の間に問題が生じた場合の予備のベンダも選択する。

 7.契約:ソフトウェア開発契約の交渉を行う。契約でふれておくべきことは後述する。

 8.一回目の訪問:国外から調達した場合には、現地に行き、スタートにあたって開発者と会い、モックアップ全体とすべての文書について説明し、彼らがどのようにシステムを組めばよいのかを知っていることを確認する必要がある。開発者と対面での関係を築いておくことは発注者にも開発者にも非常に価値のあることだ。

 9.開発の管理:クライアントとして開発を進めていくことには、多くの責任が伴う。クライアントは開発者とコミュニケーションを取るために、遅延やシステム上の問題をどう処理するか、開発者としての考え方などを知っておく必要がある。この段階の間、開発者がシステムの設計を始める際には、彼らが持っている細かい質問に答えるために、現地にいる必要がある。

 10.アルファリリース、ベータリリース:Aroxoは現在ベータテスターを募集している(“readwrite”の登録コードを使って自由に登録してほしい)。多くのテスターを獲得し、彼らのフィードバックに答えることは、強いビジネスを作り、スタート時で成功するためには必要不可欠だ。これを成功させる方法については、別の記事で述べる。

 ここでは順番に行うかのようにリストを並べたが、一部の項目については平行に進めても構わない。例えば、モックアップ作りを進めながら、ベンダの候補リストを作ることもできるし、RFIとRFQのプロセスを進めながら機能仕様を書いてもいい。しかし、品質の高い製品を作りたければ、各ステージは完了させなくてはならない。

 このようなプロセスを進めていくことが、「起業家」になるということだ。続く記事ではこれらの各ステージについて詳しく説明しよう。

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