われわれは現在、一般にWeb 2.0として知られるウェブの時代にいる。このウェブの局面の特徴には、検索、ソーシャルネットワーク、オンラインメディア(音楽、動画など)、コンテンツの集約とシンジケーション(RSS)、マッシュアップ(API)などが含まれる。現在のウェブは主としてPCからアクセスされているが、モバイル機器(例:iPhone)やテレビセット(例:XBox Live 360)などからウェブを楽しむ例も増えている。
ウェブについて、今後10年ほどの間にどんなことを期待できるだろうか。今週の投票でNatC氏がコメントしたように、今後10年間でウェブに最大のインパクトを与えるものは、コンピュータの画面を通じて現れるものではないかもしれない。「オンライン活動は、存在感、移動、買ったり使ったりしたものなどがミックスされたものになる。」また、以下に示す10項目の(あるいはそれ以上の)潮流の相互作用も多く起こるだろうし、今の時点では予想できない、非常に人気を得るウェブ技術もあるだろう。
これらを念頭に置いて、以下では今後10年間のウェブの潮流を10個挙げていく。
Sir Tim Berners-Lee氏のセマンティックウェブのビジョンは、これまで長い間、「次なる目玉」だった。実際、これはほとんどモビー・ディックのような神話になりつつある。かみ砕いて言えば、セマンティックウェブとは機械と対話する機械のことだ。これはウェブをより「知的」にするものであり、またBerners-Lee氏自身による説明によれば「ウェブ上のコンテンツ、リンク、そして人間とコンピュータの間のトランザクションのすべてのデータを分析する」コンピュータだ。また他の場面では、Berners-Lee氏はこれを「データに対するウェブ的な設計の適用」だと言っている。例えば、情報の再利用の設計だ。
Alex Iskoldは、「The Road to the Semantic Web」という記事で、セマンティックウェブの核になるアイデアはデータを記述するメタデータを作り出すことであり、これがコンピュータが物事の意味を処理することを可能にすると述べている。一度コンピュータがセマンティクスを備えれば、意味上の複雑な最適化問題を解くことができるようになる。
では、セマンティックウェブが実現するのはいつだろうか。既にその構成要素は登場している。RDF、OWL、マイクロフォーマットはその一部だ。しかし、Alexが彼の記事で述べたように、世界の情報に注釈をつけ、そして個人の情報を正しい形で捉えるには一定程度の時間がかかる。Hakia、Powerset、そしてAlex自身のAdaptiveBlueなどの企業は、積極的にセマンティックウェブを実装しようとしている。このように、近いところまでは来ているのだが、セマンティックウェブの大前提が満たされるにはおそらくまだ数年かかるだろう。
dullhunk氏によるセマンティックウェブの絵も参照してほしい。
コンピューティングの歴史の究極の「次なる目玉」は、人工知能(AI)かもしれない。AIは、Alan Turingがチューリングテストを導入して機械が人間的会話を行う能力をテストしようとした1950年代から、計算機科学者の夢だった。ウェブの文脈では、AIは知的な機械を作ることを意味する。その意味では、これはセマンティックウェブのビジョンとも共通する部分がある。
まだウェブ上のAIは始まったばかりだ。Amazon.comは、タスク管理サービスである「Mechanical Turk」でAIのある側面を導入しようと試みている。これは、コンピュータには不可能なタスクを行える人間の知性をコンピュータプログラムに統合する可能性を拓くものだ。2005年11月2日の開始以来、Mechanical Turkは徐々に支持者を増やしている。Turker Nationと呼ばれる「Turkers」のフォーラムもあり、中程度の支持を得ているようだ。しかし、2005年の11月から12月に宣伝されたころほどはMturkは使われていないことを、われわれは2007年1月にレポートしている。
それでもなお、AIはウェブについては前途有望だ。AI技術は、ニューラルネットワークやセルオートマトンを使った新しい「search 2.0」企業で使われている。Numentaは、伝説的な技術者Jeff Hawkins氏による新しい企業で、脳の働きに近いコンピューティングパラダイムを構築しようとしている。これはつまり、Numentaという企業は、われわれ人間にとっては簡単な、顔を見分けたり音楽のパターンを理解したりするという問題を、コンピュータが解くことを可能にするということだ。コンピュータは計算能力に関しては人間よりもずっと高速であるため、新しい地平が開け、これまでには解けなかった問題が解けるようになるのではないかと期待されている。
Second Lifeは将来のウェブであるとして、多くの主要なメディアの注目を集めている。しかし、最近のSupernovaのパネルディスカッションでは、Sean Ammirati氏が出席し、多くの他の仮想世界のチャンスに触れる議論を展開している。要約すると次のような図になる。
韓国を例に取って考えれば、「若い世代」が育ち、インフラが整備されれば、次の10年間には仮想世界は世界中で大きな市場になるだろう。
これはデジタル生活に関する問題だけではなく、われわれの現実の生活をよりデジタルにするものだ。Alex Iskoldが説明したように、一方にはSecond Lifeが他の仮想世界よりも素早く台頭したという事実があり、もう一方には、われわれがGoogle Earthのような技術を通じてこの世界にデジタル情報を付加し始めたという事実がある。
モバイルウェブは、ゆっくりと成熟してきている「次なる目玉」の1つだ。これはアジアと欧州ではすでに大きくなってきており、今年は米国市場でもAppleのiPhoneの発表で後押しを受けた。これはまだ始まりに過ぎない。今後10年間には、位置を意識した多くのサービスが携帯電話を通じて利用可能になるだろう。例えば、近所のショッピングセンターを歩いていると個人向けのショッピングの提案が得られたり、車を運転する際に地図で方向が分かったり、金曜の夜に友達と急に集まることができたりという具合だ。携帯電話会社と平行して、YahooやGoogleなどのインターネット大手企業が重要なモバイルポータルサービスの提供者となるだろう。
現在はNokia、ソニー・エリクソン、Palm、Blackberry、Microsoftなどの企業がモバイルウェブに積極的だが、使いやすさは、常にモバイルウェブの大きな課題のひとつだった。iPhoneは革命的なUIを備えており、ピンチ(つまむ)やその他の方法でズームを行うことで、ウェブの閲覧を簡単にしている。Alex Iskoldはまた、iPhoneはAppleの勢力範囲をウェブの閲覧からソーシャルネットワーク、あるいは検索まで広げる戦略かもしれないと指摘している。
iPhoneの宣伝が過剰であることを差し引いても、少なくとも米国では(そしてiPhoneが使えるようになる他の国でも)、おそらく今後10年間のモバイルウェブ機器のブレークスルーであると見られるようになるだろう。
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