バルセロナで開かれる世界最大の携帯電話イベント「GSMA Mobile World Congress」にどうせ行くんだったら、なんか記事でも書いてみましょうか、とCNET Japan編集部の永井さんと相談したのが1週間前。しかし多忙にかまけ、事前登録をすませたのが、中継で立ち寄ったロンドン・ヒースロー空港でのこと。
現地に入って会期を迎え、朝からいくつかカンファレンスに出たあと、よしじゃあなんか書こう、とネットにつないだら、本家米国CNETの翻訳をはじめ、もう続々と記事が掲載されている。さすがにプロの方々は仕事が早い。
というわけで通りいっぺんの紹介記事はそちらに任せて、私は「私家版バルセロナ報告記」を徒然なるままにしたためてみる。普段CNET Japanブログ「クロサカタツヤの情報通信インサイト」をお読みいただいている方は、番外編としてご照覧いただければと思う。
昨年の記事を眺めてみると、Android一色だった様子。あれからもう1年が…としみじみするのはいささかオッサンくさいのでやめるとして、今年のメインテーマを探してみると、やはり「インフラ技術」という言葉が浮かび上がる。
これは別に私自身がインフラ周りの仕事をよくしているからそちらに目が向きやすい、というのではなくて、実際あちこちでLTE(Long Term Evolution:第3.9世代携帯電話)の文字が躍っている。それもそのはず、昨秋にようやく規格がまとまって、製品として出せるタイミングになったというのが大きい。主要ベンダーはこぞってLTE関連機器を展示している。
一方、Androidといえば、影も形もない。この原稿を執筆している時点でまだ見切れていない展示会場も1つあるのだが、それを勘案しても、まったく見かけないといっていい。プレスだけが入れてもらえるエリアにしても同様である。
ここまで姿が見えないと逆に、このあと大きな発表を控えていて、何らかの報道規制でもかけているんじゃないか、とさえ思える。もしそうだとしたら陰影のつけかたが非常にうまいマーケティングコミュニケーションだな、と思うのは谷崎潤一郎を愛する日本の私だけか。
インフラに話を戻すと、LTEについては前述の通りあちこちに展示されていた。Ericsson、Nokia Siemens、Motorolaといった大御所はもちろん、韓国勢(サムスン電子、LG電子)や中国勢(Huawei Technologies、ZTEなど)も負けじと基地局とサービスの両方で展示を競っていた。
また初日の共同記者会見でも、イベント主催者であるGSM協会会長のロブ・コンウェイ氏が「LTEは私たちの未来だ」と力強く宣言していた。この先の携帯電話エコノミーを支える求心力として、このコミュニティの人々の期待が集まっていることがうかがえる。
ちなみに日本勢もNECやNTTドコモ、パナソニックがLTEの展示をしていたが、やや控えめな扱いという印象を受けたのが正直なところ。今回の会場全体のLTEイケイケな雰囲気を読み違えてしまったのか、あるいは日本企業には入れないエコノミーがまたもやできつつあるのか、はたまたLTEに対して冷ややかなのか、定かではない。
LTEといえばHSPA+(※編集部注:現行の第3世代携帯電話(3G)を高速化した規格で、2009年中に下り最大28Mbpsの通信が可能になるといわれている)はどうした、という話となるが、こちらも元気。ただしまだどこに着地できるかが定まらないLTEに対して、すでに見えている技術でもあることから、派手な展示というよりも、すでに商談モードである。後述するが、特にカンファレンスでは新興国のインフラ整備の話題でもちきりであり、そこでの主役はHSPA+だった。
モバイルWiMAXは、正直プレゼンスが小さい。総本山のIntelや北米でサービスインしているMotoloraではそこそこの展示規模だが、サムスン電子をはじめ先日まで威勢のよかった人たちの構えが小さく感じる。
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