大手ポータルが雑誌との連携に積極的だ。ヤフーはタグボードと組んで「XBrand」というサイトで主要10雑誌と提携して各雑誌の内容を紹介している。マイクロソフトはマガジンハウスと組んで「MSNマガジンサーチ」を開始し、「Hanako」、「Tarzan」、「クロワッサン」などのバックナンバーを閲覧できるようにした。
手法は違うがそれぞれ人気雑誌のコンテンツをポータルに取り込もうとしている。出版社が各社のホームページで雑誌の立ち読みやバックナンバーの閲覧ができるようにしている場合もあるが、やはり大手ポータルのように人の集まる場所に出版社の垣根を越えて一覧できる方がユーザーにとって圧倒的な利便性がある。
雑誌を発行する出版社は、崩壊しつつあるビジネスモデルの再生を電子媒体に求め、ポータルはより多くの集客を雑誌コンテンツに求める。ポータルはこれまでもニュースや天気予報などの一般的な情報コンテンツを新聞社などとの提携で集めていたが、ここにきてよりリッチなコンテンツを自らのサイトに導入しようとしている。
問題山積みの出版界の中で雑誌がいち早く動き始めているのには理由がある。販売部数は減り、広告が取れなくなってきている雑誌は出版の中でも生き残り戦略の緊急性が高い。
2007年、インターネット広告費が雑誌広告費を超えたが、それは単なる象徴としての出来事でしかなく、事態はより深刻である。つまり販売部数が激減し広告が取れなくなったということは、マス媒体としての雑誌の存在が問われているということだ。
元々雑誌はマス媒体とミニ媒体の中間を漂っているような存在であった。テレビや新聞のようなマス媒体としての性格と対象に深く切り込むミニ媒体またはターゲットメディアとしての性格を合わせ持っていた。
それがインターネットの台頭により、そのどちらにもなりきれずに漂流を始めたといえる。多くの雑誌が今年も消えていこうとしている。それも歴史のあるユニークな視点を持った雑誌が廃刊されていく。
結論としては紙媒体の雑誌の多くは何らかの形で電子媒体に移行せざるをえず、同時にその電子雑誌は広告モデルに重心をおいた無料化へ大きく舵を切ることになるだろう。
インプレスは毎年「電子書籍ビジネス調査報告書」の中で電子出版市場の規模を計っているが、2008年3月度での市場規模は355億円で前年比2倍近くの伸びを示している。その中で特に伸びているのは携帯電話向けコンテンツだ。携帯電話向けコンテンツ市場は前年比2.5倍の伸びで283億円である。つまりPC向けの電子出版市場はほぼ横ばいの72億円である。
7月に行われたデジタルパブリッシングフェアでも携帯電話向けコンテンツ制作ツールやサービスは大きなスペースを占めていた。特に今年はフェアの期間中にソフトバンクがiPhone 3Gの発売を開始したため、ショーの中でもいくつかのブースで実際にiPhone にコンテンツを配信するデモを行い、多くの人を集めていた。
だがPC上での電子雑誌のビジネスはまだ始まったばかりで、そのリッチなコンテンツの表現を考えると実際には携帯電話以上のビジネスチャンスが考えられる。ただその場合、ビジネスの主戦場は単に紙媒体上のコンテンツを電子紙芝居にしたものだけではない。
ポータルとの連携以外でも雑誌社は各社とも電子メディアでのビジネス展開を積極的に始めている。主婦の友社の「ef」は電子媒体専門の雑誌だ。
マガジンハウスは自社のサイトで最新雑誌の一部を見本誌という形で公開している。小学館は「Sook」というサイトで電子雑誌を公開している。「Fujisan.co.jp」は従来からの雑誌の定期購読売りと同時に電子雑誌の配信も始めている。
10月からはスクエア・エニックスが「ガンガンONLINE」というサイトで電子雑誌を始める。これは彼らの持っているゲームのユーザーとコンテンツをベースにしたビジネスだ。もともとのコンテンツがPC上でのサービスを前提にしていることから、電子雑誌に移行した場合でもその誘導は非常にスムーズである。
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