Googleが検索のパーソナライゼーションを目指している。
Googleは先頃、パーソナライゼーションを強化した検索機能を提供する一連の新サービスを発表した。しかし、ユーザーのことをより深く把握し理解しようとする同社の試みは残念ながら本筋を外れている。
現状では、Googleは検索クエリを処理し、検索結果の適合度をユーザー個人の検索履歴のみに基づいて絞り込んでいる。しかし、このアプローチには欠陥がある。その欠陥について考えてみることは、パーソナライゼーションを深く理解するよい機会になる。また、「検索エンジンがこちらの興味や意向をわかっている」とユーザーに実感させるにはどのような手順を踏めばよいのかも明確になる。検索フィールドに単語を入力するとき、自分が探そうとしているものをお気に入りの検索エンジンが直感的に理解してくれることをだれもが願うものだ。それはまだ夢物語ではあるが、いくつかのプロセスを経ることでその目標に近づくことができる。パーソナライズされた検索は、個人の好みとWebサイトの特性を分析することによって、今よりもはるかに信頼性の高い結果を返すことが可能となる。この2つの異なる要素を理解した者だけが、ユーザーに合わせた検索結果を返せるようになるのだ。
個人の好みを完全に把握するには、単なるキーワードからの推測の域を超えて、その人が検索を実行しようとしている瞬間の意向をとらえる必要がある。時間が経っても変化しない振る舞い(例えば節約志向か贅沢志向か、冒険派か慎重派かなど)に加えて、そのときどきによって変化する振る舞い(新型コンピュータの購入、プロジェクトのリサーチ、休暇の計画など)も考慮するのが、本当の意味でパーソナライズされた検索というものである。個人のオンライン上での最近の振る舞い(可変要素)と個人の人物履歴とでもいうべきもの(不変要素)を組み合わせれば、その人の本当の好みと検索時点での意向を汲み取るためのコンテクストを検索エンジンに渡すことができる。通常は時間が経っても変化しない振る舞いのほうを重視し、ユーザーが明示的した時点で一時的な興味を優先させて検索を行う。
また、ウェブサイトにも同様に注目する必要がある。ブログやニュース、ショッピング、フォーラムといったサイトの種別がわかると、ユーザーに適合する検索結果を特定しやすくなる。この考え方を実現するには、ニュース、有料ダウンロード、評価、レビューといったコンテンツタイプだけでなく、自動車、個人資産管理、住居、家庭菜園といったテーマ別にサイトを分類する必要がある。さらには、特定のライフスタイルの要求を満たすサイトもある。ライフスタイルは、個人の好みにあわせて適合する検索結果を返すうえで無視できない属性だ。
Googleは現在、あいまいさを排除する戦略を用いてユーザーの意向をより精確に把握しようとしている。例えば「ジャガー」という単語が入力されると、Googleはその人の個人履歴を参照して、それが高級車なのか、フットボールのチームなのか、猛獣なのかを判断するようになる。しかし、この戦略には限界があることに注意しなければならない。というのは、検索パラメータが刻一刻と変化する可能性があるため、検索結果がその個人により適合したものになるという保証がないからだ。
これに対して、ウェブサイトとユーザーの振る舞いの両方に基づいてパーソナライズされた検索では、スポンサードリンクやターゲット広告も適合度の高い順に表示される。これは、ユーザーだけでなく、キーワードやスポンサーリンクに多額の広告掲載料を支払う企業にとっても大きな価値がある。パーソナライズされた検索では検索結果が高度に絞り込まれているので、購入条件の揃ったユーザーだけが広告リンクをクリックすることになるからだ。また、ユーザーのほうも求める情報を簡単に見つけることができるだけでなく、検索エンジンが自分のことを本当にわかっているのだと実感でき、そのエンジンを使い続けようという気持ちが強くなる。
検索エンジンがユーザーの好みと検索対象コンテンツの両方を把握することの重要性を十分に認識するまで、真の検索のパーソナライゼーションが実現することはないだろう。そろそろ現代の多忙なユーザーたちが楽をできる機能を考えてもよい時期だ。ユーザーは、信頼できる検索エンジンが、検索ボックスに入力した簡単なキーワードだけでなく自分のさまざまな意向を理解してくれることを期待している。
パーソナライズされ、毎回その人に最も適合する検索結果を返してくれる、そんなエンジンが登場したら、業界トップのエンジンとして時の試練にも耐えることができるだろう。
著者紹介
Steve Johnson
マサチューセッツ州ケンブリッジのパーソナライゼーションソリューションプロバイダChoiceStreamの最高経営責任者。
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