最終更新時刻:2008年10月6日(月) 19時43分

Web 1.0に学ぶ失敗しない法則--グーグルをつくれなかった男の話

文:Michael Kanellos(CNET News.com)
翻訳校正:吉井美有

2006/06/28 21:22  

 Gary Cullissという人物をご存知だろうか。彼は世界でもトップクラスの大学で行われた起業家コンテストで優勝し、ベンチャーキャピタルから3000万ドルの融資を獲得した。専門家たちは、彼の会社は検索の世界に革命を起こすと断言していた。

 しかし、彼の名前を覚えている人は少ないだろう。

 Culliss氏はDirect Hitの共同創設者として、検索の世界に2年間君臨した。1998年にはForbes誌が「市場にはこれに匹敵するテクノロジーは存在しない」と書き立てた。Googleは当時まだMetacrawlerなどの無名サイトと同列に扱われていた。

 Washington Post紙は、Culliss氏をNetscapeのAndreessen氏やYahooのYang氏やFilo氏などに肩を並べるインターネットのパイオニアに位置づけた。

 CNET News.comでも、最初に署名入りの記事でGoogleのことに触れたのは、Direct Hitに関する記事のずっと後ろのほうだった。

 彼は敗者になったことを悔しがっているのだろうか。まったくそんなことはないようだ。

 「ああ、『あの人は今』的な記事を書いているというわけですね」とCulliss氏は自分のオフィスで笑いながら答えた。彼は現在、August Capitalというインキュベータを設立し、ニューヨークにオフィスを構えている。融資を募るときのような落ち着いた物腰は昔のままだ。

 Web 2.0が全盛を極めている今、そろそろWeb 1.0時代のことを振り返ってもよいときだろう。GoogleのLarry Page氏とSergey Brin氏、amazon.comのJeff Bezos氏など、莫大な富と世界的な名声を手に入れた人たちもいる。一方では、Floozの創設者Robert Levitan氏のように返り咲きを狙っている起業家たちもいる。しかし、大抵は当初の高らかな宣言とは違う結末を迎えている。

 それでも、少し環境が違っていれば、成功を収めていたかもしれない人たちが、とりわけベイエリアにはたくさんいる。彼らは、もしかすると今ごろは大規模なカンファレンスで将来について奇抜なビジョンをしきりにわれわれに聞かせていたのかもしれない。しかし、今はステーキハウスで順番待ちをするような平凡な市民だ。

 Web 2.0の隆盛期が過ぎたときにも同じような失敗が繰り返されるのだろう。そうしないためには、すでにWeb 1.0で失敗を経験した人に助言を求めるのがいちばんだ。以下は、Culliss氏と話した内容をまとめたものである。

1.頭の良さはやはり大事

 たとえ短い期間でも起業して成功を収めている人たちは、はっきり言ってかなり頭が良く、相当な努力家である。

 Culliss氏は、90年代半ばからインターネット上で特許検索サイトの運営を開始した(当時は「ソフトウェア特許は悪である」などと言って腹を立てる人は誰もいなかった。GoogleもYahooもたくさんの特許に依存していることを思い出してほしい)。その後、ハーバードロースクールに入学し、卒業後すぐにDirect Hitを設立した。母親は大反対したが、彼と共同設立者はすぐにMITの起業家コンテストで優勝し、3万ドルを手にした。

 わたしはといえば、そのころは何とか転職してデッキを水で洗い流す方法を覚えたところだったかな。まさに凡人そのものである。

2.提携先は慎重に選べ

 その後もDraper Fisher Jurvetsonなどのベンチャーキャピタルから次々と融資を受け、彼らの事業は順調だった。Direct Hitは、HotBot、Apple Computer(Sherlockシリーズ)、Lycos、LookSmartなどに自社の検索技術を提供する契約をする。しかし、どれも飛躍を実現するような大きな契約ではなかった。GoogleがYahooと契約をかわしたのとは対照的だ。

3.名前も大事

 「最初にGoogleという名前を聞いたときには正直参った。最高の名前だったからね。みんなこの名前に惚れたんだろう」(Culliss氏)

 つまらない名前の会社で鳴かず飛ばずで終わってしまった会社はいくらでもある。TeomaはAsk Jeevesに買収されてしまったし、DogpileはInfoSpaceの傘下に入った。WisenutはLookSmartに吸収され、AtomzはWeb Side Storyに買収された。Yep.comはWeb Side Storyにも見放され、ラトビアの会社に拾われた。

 「Yep.comはすでにわれわれの製品ラインから外れている。今では思い出すこともないし、あまり話したくもない」(Web Side Storyの担当者)

4.大衆は謎に満ちている

 Direct Hitは、サイト内でのクリック回数とサイト内で過ごした時間でWebサイトをランク付けする。Googleは、最初、他のサイトからのリンク数でWebサイトをランク付けした。直感的には、Direct Hitのアプローチのほうが成功しそうに思える。

 「例えば、DellのFAQサイトのようなページを考えてみてほしい。そんなページにリンクを張る人はいないが、でもみんな読むでしょう」とCulliss氏は言う。しかし、現実は反対の結果となった。

 有料の検索サイトにも同じことが言える。90年代半ばには、ユーザーは有料検索などインターネットの行動規範に反するとして拒否した。しかし、6年後には歓迎されるようになった。

5.安さも大事

 Culliss氏が唯一後悔しているのは、Sun E10Kサーバをインフラに選択してシステムを構築したことだという。Direct Hitは、Sunのマシンに数百万ドルを費やした。

 「その年に年間のハードウェア予算を使い果たしてしまい、すぐに資金が底をついてしまった。小型で安価なマシンをネットワークで繋いだほうがはるかに賢明だ」とCulliss氏は言う。

 対照的に、Googleはx86サーバでインフラを構築し、ハードウェアを増設し続け、数十億ページを処理できるまでになった。「それで浮いた予算を他のことにあてることができた」(Culliss氏)。

6.お金はお金になる

 Direct Hitは1999年までは堅調で、株式上場の申請も出した。SunのサーバをIntelベースのマシンで置き換える作業も始めた。しかし、他の検索会社のようにブランドとして認められることもなかったので、2000年1月、Ask Jeevesに同社株の12%(約5億ドル)で売却する道を選ぶ。

 ドットコムバブルがはじけるとAsk Jeevesの株価は反騰し、2005年にInteractive Corpに18億5000万ドルで買収された。それでも、Direct Hitには2億2200万ドルの値がついたことになる。Googleの敷地に灯されているすべてのラバランプの代金にも満たない額だが、それでも大金であることに間違いはない。

 「皆、そうやって会社を売って金に換えていた」(Culliss氏)

7.会社勤めに比べれば

 Direct Hitを売却した後、Culliss氏はSoundBite Communicationsという会社を興し、700万ドルの資金を集めた。その後、株式を売却してカリフォルニアに引っ越す。子供が生まれると、再び東海岸に戻る。その後にペンシルヴァニア大学のウォートン校でMBAを取得し、現在のAugust Venturesを興した。「研究開発の資金を稼ぐことが目的です。特許は買っていません」(Culliss氏)

 この大冒険は8年足らずの間に起こったことだ。ハーバードロースクールの彼の同期は、同じ8年を法律事務所の共同経営者を目指して開示文書の山から証拠を探し出す作業に追われて過ごしたのではないだろうか。

 まかりまちがえれば、Culliss氏も同じ道をたどっていたかもしれない。

著者紹介
Michael Kanellos
CNET News.comの副編集長。ハードウェア、研究開発分野、新興企業、海外のテクノロジー産業などの分野を幅広くカバーしている。弁護士、旅行作家、共用リゾートの街頭販売など、さまざまな職業を経験している。

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