人々はBill Gatesを誤解している。Gatesが望んでいるのは世界(あるいは、少なくともそのコンピュータ化された部分)を支配することではない。心の底ではLinuxのソースコードが丸ごと自然に消えくれたらと思っているかもしれないが、それは彼が一番望んでいることではない。
昔に戻りたい--それがGatesの願いだ。たとえば、1990年代初頭のExcelの開発がどんな風だったかを思い出してほしい。重要なのは、作成できる図表の種類と、スプレッドシートに埋め込める計算式の数だけだった。ユーザーは(少なくともその大半は)、新バージョンのソフトウェアに300ドル、400ドルを支払うことをいとわなかった。セキュリティとは、記者会見場で開かれる豪華なパーティから、私のような記者を締め出すガードマンが考えることだった。
しかし、時代は様変わりした。この9か月間、Gatesは自社の選り抜きのプログラマと数億ドルを費やして、オペレーティングシステムの--しかも、いまだ適用を見送っている人も多いWindows XPの無料修正版を開発することを余儀なくされた。
数年前から、世界最大のソフトウェア会社であるMicrosoftは、自社のWindowsとInternet Explorerを狙った絶え間ないセキュリティ攻撃に、なかば手足を縛られた状態にあった。しかし昨年、GatesとMicrosoftの最高経営責任者(CEO)Steve Ballmerはついに立ち上がり、Windows XP Service Pack 2(SP2)の開発に乗り出した。SP2をインストールすれば、Windowsの重大なセキュリティホールの大半を修正できると同社はいう。
8月上旬、ついにSP2の出荷が始まった。しかし、出荷と同時にMicrosoftは慌ただしい1週間を送ることになってしまった。主要な顧客企業にSP2の完成を報告したあと、Microsoftが最初にしたことといえば、自らSP2を入手困難なものにすることだった。
まず、MicrosoftはSP2との互換性問題が懸念される約50種のプログラムを発表した。この手の問題はWindowsのアップデートでは珍しいことではない。不運だったのは、そこに企業ユーザーがSP2のインストールに用いる可能性のある同社製のシステム管理ツールが含まれていたことである。
そこでMicrosoftは、顧客企業の社員がSP2をインストールした結果、問題の50種のプログラムがいくつか稼動しなくなるといった事態になることを恐れて、(SP2の大きな長所であるはずの)自動更新を一時的にブロックすることになった。個人ユーザーに関しては、すでにWindows XP Home Editionやその他のバージョンを対象にSP2の提供が始まっている。しかし、企業の方は様子見ムードで、最近の調査では、多くの企業が欠陥が修正されるまではSP2をインストールしないと答えているような状況である。
さらに8月18日には、セキュリティ研究者がSP2に重大なセキュリティホールを発見したと発表した。このセキュリティホールを悪用すれば、少なくとも理論上は、SP2を適用したPCにも侵入することができるという。
MicrosoftのSP2リリースに手抜かりがあったのだろうか。私はコラムニストとして、迷うことなくイエスと答える。SP2はWindows XPの重要なアップデートであると誰もが認めているだけに、今回の事態は残念だ(Windows XPは過去最良のWindowsでもある)。しかし、心配はいらない。Microsoftはこれらの欠陥を必ず解決するだろうし、またそうしなければならないのだから。
Microsoftや同社のセキュリティに対する姿勢に向けられてきた厳しい非難は、SP2が登場したおかげで、今後多少はやわらぐだろう。たしかにSP2は無料だが、今もWindows 2000を利用している多くの企業を説得し、Windows XP、さらにはOffice XP等へのアップグレードを促すことができれば、長期的にはMicrosoftの収益に貢献することにもなる。
また、SP2はWindows XPの内部システムに微調整を加え、(最新のハードウェアを利用している限りは)悪意ある攻撃に対する防御力を高めることも忘れてはならない。この巨大なダウンロードファイルのなかにはService Pack1、最新のセキュリティ・パッチ、そしてバグ修正ファイルも含まれている。
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