私は、自分の間違いを認めるのが嫌いだ。しかし、そろそろ間違いを認め、本当のことを話すときがきたようだ。
2人の人物、Steve JobsとBill Gatesにまつわる逸話を抜きにして、この25年間のテクノロジー業界の歴史を語ることはできない。2人はどちらも、パーソナルコンピュータが大きく世界を変えるというビジョンを持った夢想家としてスタートした。そしてどちらも、そのビジョンの実現に自らのキャリアを費やした。
両者が明暗を分けたのは1980年代の後半だった。Gatesは、現代資本主義の歴史の中で、最も収益力が高く、最も厳重にコントロールされた独占企業を着々と築き上げていた。一方、Jobsは自分が創設した会社から屈辱的な形で追い出されることになる。Jobsの奇抜な行動は、周囲をことごとくコントロールしようとする性格から とっぴなマネジメントスタイルまで、すべてプロとして受け入れがたいものであった。Nextの失敗とその報復に駆られた戦略によって、Jobsは業界に影響を与えるような人物ではないという評価が決定的なものとなった。かつての奇才も、時代遅れの持ち前の奇行によって、企業向けのテクノロジーがもてはやされる時代に取り残されてしまった。
私は当時、こう思っていた。「いい厄介払いだ」と。Forresterが10億ドルを超える規模の企業がいかにテクノロジーを利用しているかという特集記事を組んだとき、私は、NextとAppleを異端児としてテクノロジー企業から除外した。両社とも、当時、分析の対象になっていたエンタープライズビジネスからはずれた重要度の低い企業だったからである。
それが1990年代半ばのことだ。Appleは消えようとしていた。Steve Jobsは相手にされなくなった。そのことを悲しんだのは、せいぜいマックオタクくらいのものだった。
時間を現在に戻そう。デジタルテクノロジーを使って世界を変えるというビジョンを実現しているのは、MicrosoftでもBill Gatesでもない。Steve Jobsである。Jobsは、Pixarで映画業界に革命をもたらした。音楽業界の変革の立役者でもある。大成功を収めた携帯型ミュージック・プレイヤー(iPod)も彼のアイデアである。iLife ソフトウェアスイートは、楽曲の管理、写真の整理や格納、ビデオのキャプチャや編集、動画の作成などの機能を備えたすばらしい統合アプリケーションである。Appleが音楽の録音、編集、アレンジ用に開発した最新のソフトウェアGarageBandは、新しい世代をAppleに引きつける役割を果たしている。Steve Jobsこそ、デジタル化の夢を実現する「デジタイザー」である。
Jobsは、以前失敗した戦略を逆手にとることで、ここまでの成功をもたらした。1990年代、Macintoshはソフトウェア不足に悩んでいた。Appleは、ソフトウェアメーカーを説得し、ときには泣きついて、なんとかMacをサポートしてもらおうとした。しかし、ほとんどのソフトウェアメーカーはMacをサポートせず、Macは衰退した。
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