最終更新時刻:2008年10月10日(金) 23時50分

All Aboutの事業戦略について

野田幾子

2004/12/16 10:01  

 2000年6月、リクルートと米About社のジョイントベンチャーとして設立されたリクルート・アバウトドットコム・ジャパン(現 オールアバウト)。17分野の300テーマを揃え、それぞれ「ガイド」と呼ばれる専門家が厳選したWebサイトの紹介、オリジナル記事の掲載、メールマガジンの発行を行う。こういったテーマごとのインターネット検索と、「for L」「for M」などのWebマガジンから成り立つAll Aboutの現状と展望を、オールアバウト代表取締役 兼 CEOの江幡氏が語った。

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1987年、リクルート入社。情報通信ネットワーク事業部配属。在籍中、5つの新規事業立ち上げに携わったことから「立ち上げ男」の異名をとる。1996年、インターネット草創期に企業のIT導入キーマン向け1 to 1 Webメディア「キーマンズネット」を立ち上げ早期収益化、Web関連特許を14取得。1998年、同社経営企画室エグゼクティブマネジャー、M&A・中長期事業戦略担当。2000年、オールアバウトを設立した。
「個人」にフォーカスしたマーケットづくり

 江幡氏はまず、All Aboutの設立経緯や現状などを紹介した。All Aboutは、「ユーザー」「ガイド(専門家)」「クライアント(広告主)」という3本の軸で成り立つ。All Aboutの設立にあたっては、当時のネットユーザー約27万人に「ポータルサイトに対する満足度」の調査を依頼、回答を得た約1万人の意見を参考にしたという。

「調査の結果、メディアリテラシーが高い人はポータルサイトを使いこなせているが、そうでない人にとっては不満が多い。雑誌のような楽しみ方がしたい、各分野の知見を持った人が背中を押してくれる人間味の溢れたサービスを期待する--。こういったユーザーの渇望感は、今後インターネットユーザーが増えるにつれ増加していくだろうという読みがあった」(江幡氏)

 当時の米国では、米Google社のように検索エンジン技術開発へ力点を置く動きと、米About社のように「人による知見サイトの構築」へ力を入れる動きがあった。日本ではGoogleを利用したポータルやサーチエンジンの提供をするサイトはあっても、後者のような知見を元にしたサイトは存在していない。今後、Web媒体を使って個人で発信していく時代になったときに、匿名で発信した情報が本当に信用できうるものなのか。インターネットに不慣れなユーザーの、ネットに対する嫌悪感を払拭する意味でも、信用に値する仕組みを構築できるサイトがほしいと考えた。

 さらに、この構想は出資元であるリクルートのWeb戦略にも当てはまった。当時のリクルートには住宅や進学など、人生の転機に関する情報やデータベースは揃っていたが、日常的に提供できるコンテンツを持っていない。リクルートがタッチしていない領域にどう接点を作れるかという考えもあった、と江幡氏は言う。

 結果、ユーザーには「信頼できる情報を提供する場」、ガイドには「自分をPRできる場」を提供。ユーザーとガイドが揃ったことにより生まれるマーケティングの価値を、クライアントに提供するという構図が出来上がった。こういった背景から江幡氏は、「インターネット企業ではあるが、企業理念は『システムよりも人間』」と語る。

 All Aboutには、現時点で3万7800本ほどの記事がストックされている。コアな読者ターゲットは、「人生を愉しむ大人」--30、40代、いわゆる消費欲が盛んな「Hanako世代」を設定した編集、切り口だ。2004年3月には、月間ユーザー数が1000万人を突破。2004年9月度のネットレイティングス調査では、新聞社系サイトを抜いて「News・情報カテゴリーランキング」のトップになっている。

自社の強みを生かした戦略と展望

 次に江幡氏は、All Aboutの今後の戦略について話を進めた。他のポータルサイトとの差別化を計っていく点は従来通りながら、メディア自身--ターゲットユーザー設定、ガイド/ガイドコンテンツクオリティの向上、ユーザーとガイドのリアルな側面、ローカル to ローカル領域へのガイドモデル展開など--をより強化しなければならない、と語る。

「All About設立当時、10年計画で考えていた。現在は2合目の段階で、まだ8割は開拓/改善の余地がある。また、現在タイアップ記事の形で進めているような広告事業についてもさらなる発展が見込めるし、さらに力を入れていく」(江幡氏)

 また、先日発表したヤフーとの資本提携に触れ、これまでは自社サイトへ取り込む形式のアライアンスしかしてこなかったヤフーが、独立したサイトでのサービス、しかもブランド名を残したまま出資している例は初めてであることを強調。事業提携のポイントとしては、相互の補完によるメディア力の強化、広告商品などの広告開発、共同事業の展開--を挙げた。

 今後は、「ユーザーを取り巻く環境の変化」を鍵のひとつとして挙げる。インターネットが当たり前になった現在の10、20代がメインの消費層になるにはあと5〜10年かかるため、当面のターゲット層は30、40代であることは変わらない。しかし、こういったメディアリテラシーがさほど高くない、面倒くさがりな層は、過度な情報に溺れる「情報難民」になるだろうと江幡氏は予測しており、ますます人間的な目利きが求められるので、そのためのガイド/コンテンツの充実を計る。また、消費行動もニューラグジュアリーに代表される「一点豪華主義」への変化がすすみ、こだわりや、共感性を持ったマーケティングの必要性が高まっていくので、広告主にとってもAll Aboutの役割が拡大していく。

 こういった背景を踏まえ、企業(売り手)側は本質的にマーケティングのことを考えてインターネットを含めたいろいろなメディア活用に取り組んでいかなければならなくなる、と江幡氏は語る。ネットメディアも「例えば、クリックを誘発できるから、仕組み的にいいモデル、という単純な発想ではもう立ちゆかない」

 今後の新規事業展開として明らかにしたのは、All Aboutセレクトショップ、All Aboutサテライト、All Aboutカレッジ--の3つだ。All Aboutセレクトショップは、All Aboutユーザーに向けたライフスタイル提案型セレクトショップ。ガイドや各カテゴリーのスタイリストにつながりを持たせ、幅広い範囲のライフスタイル商材をセレクト、レコメンドして販売する。All Aboutサテライトは、仕事依頼付きの個人ホームページサービス。All Aboutの掲げる「パーソナルブランディング」価値を強化し、将来的には専門家支援サービスへと発展させる。All Aboutカレッジは、ユーザーに向けたライフスタイルカレッジ。リアルでの展開や、ブランドの強化を目的としている。

「All Aboutは、インターネットのテクノロジーオリエンテッドな会社とは正反対のところに身を置いている会社。自分たちの強みを生かし、中長期的なスパンでの展望を考えている」と江幡氏は語った。

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