Eコマース カテゴリーキラーの戦略

 11月22日、23日に宮崎シーガイアで開催された「New Industry Leaders Summit 2004」。初日、「セッション2-b」として、グロービス・キャピタル・パートナーズ パートナーの小林氏をモデレーターに、ケンコーコムの後藤社長、ゴルフダイジェスト・オンラインの中村氏、富士山マガジンサービスの西野氏をスピーカーに迎え、Eコマース市場の運営状況や今後の展開などが話し合われた。

 セッション2-bは、モデレーターの小林氏がスピーカーの3名に、Eコマース事業設立の経緯や運営方法をヒアリングすることからスタート。参加者からの質疑応答を交え、話はEコマース市場の今後や米国との違い、大手との競争環境、SEO対策、携帯電話端末での展開などに及んだ。ここでは、各サイト設立の経緯やEコマースの展望、競争環境についてレポートする。

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東京大学教養学部基礎科学科卒業後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。1994年に同社退職後、ケンコーコムの前身となるヘルシーネットを設立、家業の製薬会社が作る健康食品の販売を手がける。2000年5月に健康関連総合ECサイト「ケンコーコム」を開設。2004年6月、東証マザーズに上場した。
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1997年慶應大学理工学部卒。住友商事入社後、コンシューマ事業専門部署の消費流通事業部にて、事業投資会社の設立、運営などを担当。2000年にゴルフとインターネットに絡めた商売ができないかとゴルフダイジェストに個人で企画を持ち込んだ際、現ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)社長と出会い創業メンバーに加わる。GDOには主にオンラインゴルフショップ「GDOSHOP.com」の設立から運営を担当。現在リテールディビジョンとシステムディビジョンの担当役員を務める。
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NTTにて検索サイト「goo」およびシリコンバレーのベンチャー投資などを歴任。1998年ネットエイジに創業メンバーとして参画。以来、同社取締役を勤める。Amazon.comにてJapan Founder、その後、Amazon.co.jp, General Manager, Books。現在、ネットエイジポートフォリオ企業の1つである、雑誌定期購読専門サイト「Fujisan.co.jp」を運営する富士山マガジンサービス 代表取締役。明治大学卒業、ニューヨーク大学MBA。
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1998年、東京大学工学部卒業後、アーサー・D・リトル(ジャパン)に入社。エレクトロニクス・情報機器・通信関連の新規事業戦略立案に従事後、ベンチャー・インキュベーション事業の立ち上げ、ベンチャー企業に対するコンサルティング、および資金調達アドバイザリー業務を経験。2001年6月エイパックス・グロービス・パートナーズ入社、2004年同社パートナー昇格。担当先企業として、アクシスソフト、アリエル・ネットワーク、インタースコープ、バーチャレクスがある。

設立までの軌跡と、経験から得た成功への道筋

小林:ケンコーコム、GDOSHOP.com、Fujisan.co.jp--それぞれ業界トップのEコマースサイトとして認識されていますが、設立に至った経緯、運営方法などを聞かせてください。

後藤:ケンコーコムは、約3万3000種類の医薬品や化粧品、健康食品などを扱う、BtoCのEコマースです。血圧の上下、太ったり痩せたりという健康のニーズと商品のマッチングをインターネットで効率化させていこうと考えたのが発端でした。

 1994年に健康食品のダイレクトマーケティング会社「ヘルシーネット」を作り、60、70代の方を対象にCRMを活用した販売を始めました。そんな折、1999年に米国のDirect Marketing Associationのカンファレンスへ参加し、米国のEコマースの熱気をまともに浴びて・・・。21世紀はEコマースだと固く信じて、2000年の5月にケンコーコムを立ち上げたのです。

 ネットバブル崩壊後でしたので、正直言って苦しかったですね。月に約2000万円を費やしてバナー広告を打っても、最初の半年間はまったく売れませんでした。経験の中でわかったのは、このビジネスは品揃えをしっかりすれば、それに伴い売り上げも増えるということです。ですから品物を揃えることに専念し、健康関連品なら何でも買えるワンストップショッピングの場所としてケンコーコムを拡充していこうと決めました。さらに物流などを工夫しながら、昨年22億円の売り上げを達成し、今年は東証マザーズに上場できた--という流れです。

中村:私が住友商事にいた1999年当時、ネットバブルの中で自分でも何かをやってみたいと思っていました。インターネットとゴルフが好きなので、それらで何をやってみようと。なぜかメディアを押さえておかなくてはならないという発想があったので、ゴルフ雑誌でも一番メジャーな「ゴルフダイジェスト」を単身で訪れ、なんとか自分のサイトにゴルフダイジェストの冠を利用させてもらえないかとお願いしたのです。しかし、現GDOの石坂(社長)が先に話をつけていた状態だったので、断られてしまいました。最終的には2002年の2月頃、GDOの創業メンバーに加えてもらうことでEコマースに参画することになります。

 私は住友商事で物販に携わっていたこともあり、ゴルフ用品の販売を担当することになりました。2001年の1月にGDOSHOP.comを立ち上げ、やはり後藤さんと同じく品揃えの豊富さが鍵だと実感しました。17インチのモニターの中に無限大の商品を並べられるのがインターネットの特徴だと。

 今考えると結構いい加減だったなと思うのが、開始当時はサプライヤーのことを考えていなかったこと。いくつか問屋だけを押さえて、全品20%OFFで勝手に販売を始めましたから。すると翌日、いろんなメーカーからバンバン苦情が寄せられまして。この業界は非常に価格の規制が厳しくて、10〜15%割引がせいぜいなのに、20%引きなんてあり得ない・・・。こっぴどく怒られて、価格をすべて元に戻したという苦い経験があります。その後、さまざまなシステムを用いて問題をクリアにし、メディアの広告なども入ってくるようになりました。

西野:Fujisan.co.jpは、雑誌の定期購読を中心としたEコマースです。この2人が事業に邁進している頃、私はAmazonで、アマゾンジャパンを立ち上げるべく奔走していました。書籍を中心に販売する中、書籍の1.5倍は市場がある雑誌に誰も手を付けていないなということに気づきまして。ネットエイジの中で新しいビジネスをやってみたらどうだということで、Fujisan.co.jpを2年前に立ち上げました。

Eコマース市場の展望

小林:Eコマース市場の今後については、どう考えていらっしゃいますか。課題としていることや、取り組みなどを教えてください。

中村:Eコマースそのものはまだまだ伸びると思います。しかし、現在飽和しつつあるネット人口をEコマースサイトへ誘導しきれているとも言えないので、その獲得に力を入れつつ、しっかりしたコンテンツ作りや販売を推進しなければならないでしょう。

 ゴルフは用品だけで約4000億円、プレイなども入れれば2兆5000億円程の市場です。用品に関しては、我々のシェアが市場全体の1%ほど。ゴルフのEコマース市場全体が2%程度なので、我々が約半分のシェアを持っていることになります。ですから今後は顧客をEコマース側へ引き入れなくては。

小林:後藤さんも同じような問題意識をお持ちではないですか。

後藤:マーケット自体は非常に大きく、ドラッグストアが約3兆円、健康食品だけでも約1兆円の規模です。その中の1%をEC化するだけで数百億、10%では数千億円のマーケットができる。ですから、Eコマースにいち早く手を付けられてよかったと思っています。

 しかしEコマースのマーケット拡大を考えると、まだまだ気が遠くなるような話。カスタマーが薬や健康食品を求めてドラッグストアへ向かおうとするマインドを、1%でもインターネット経由で買おうと思わせるにはどうすればいいかを考えたときに、私たちが提供すべきなのは利便性だろうと思うのです。

 具体的には、「顧客サービス」「品揃え」「コスト競争力」。これら3点がリアル店舗よりも勝って初めてマーケットをとれるだろうと、いま取り組んでいる最中です。

西野:そういう意味では私が持っている数字は多少古いですが、本の業界では書籍が1兆円、雑誌が1.5兆円のマーケット。いま、書籍は3%程のEC比率だと思います。米国では10%ほどなので、最終的にはそれくらいの数字を達成するのではないでしょうか。

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