ブログやアフィリエイトがECの流れを変える--NILSレポート1

 これから数週間にわたって、7月1日と2日にNILAが開催したNew Industry Leaders Summit(NILS) 2005 Summerの模様をの一部を紹介していく。

 第一弾は気鋭のEコマース関連会社のトップが集まったセッション『Eコマースの新潮流』。このセッションは、モデレーターであるゴルフダイジェスト・オンラインの中村壮秀氏の、「昨年末頃から、メールによるユーザーへのアプローチの効果が薄れてきた」という言葉からスタートした。

 これはスパムメールの横行により、ユーザー自身がスパムメールやHTMLメールを除外するようにメールソフトを設定するケースが増えているからだという。その一方で、ブログやアフィリエイトなど、今までとは異なるユーザーに対するアプローチの仕組みも登場しており、これがEコマースの集客や販売にどんな影響を及ぼしているのかが最初の焦点となった。

 スピーカーのひとり、健康食品のネット通販を行う「ケンコーコム」の後藤玄利氏は、「グーグルが日本語化された2001年秋頃から、ユーザーの行動パターンが変わってきたのを強く感じたが、ここ1、2年のブログの定着にも、ユーザーの大きな変化を感じる」と語った。

ケンコーコム代表取締役社長 後藤玄利氏
ケンコーコム代表取締役社長の後藤玄利氏

 後藤氏自身も、インターネットの利用時間のうち、半分以上はブログの閲覧に時間を割いているという。自身の経験を振り返り、ユーザーの行動パターンがブログベースに移行してきているというのだ。

 ブログは口コミ効果が高く、ブログからのコンバージョンレートは比較的高いという結果が出ている。「ケンコーコム」では、そのような状況を鑑み、2004年からブログのトラックバック機能を利用した健康関連情報コミュニティーサイト「ケンブロ」の提供を開始している。

 ここにトラックバックしてくる人の多くは、「ケンコーコム」自社のアフィリエーター。情報がこのサイトに集積されるほか、アフィリエーターのモチベーションも向上し、なおかつ被リンク数をアップできる(他サイトからリンクされている数が多いサイトはSEO的に有利とされる)など、一石三鳥の効果が上がっているという。

 特に、ヤフーの検索エンジンがグーグルからヤフー独自の検索エンジンであるYST(ヤフー・サーチ・テクノロジー)に移行して以来、検索エンジンでなかなか上位に表示されず、集客に大きな影響を受けたという「ケンコーコム」にとっては、被リンク数が増えたというのは、非常に大きなメリットとなった。

 2003年第4四半期と2004年第4四半期を比較した場合、ブログやアフィリエイト経由でサイトを訪問するユーザーの数は、2.7倍に増えたというから、かなりドラスティックな変化だと言えるだろう。

 ブログシステムや検索エンジンの開発・提供を行うドリコムの内藤裕紀氏は、マクロな視点から、ブログには「メディア」と「コンテンツ」という、2つの側面があると分析する。ライブドアブログの1日のトラフィック量は3000万だという。その他のブログを合わせれば、非常に大きな数字になるだろう。このポータルサイト並のトラフィックを「モノを売る」ことにつなげるためには、3つのポイントがあるという。

 1つは、トラックバックの利用、2つ目がブログの利用、3つ目が同社が昨年から提供している、コンテンツマッチング広告だ。これらを活用し、商品を情報と結びける糊のような役割を持たせることが、Eコマースの活性化の鍵になるというわけだ。

新メディアとしてのRSSの役割

 また最近注目されている仕組みの1つに、RSSがある。ゴルフダイジェスト・オンラインの中村氏は、RSSをメールに代わるプッシュ型メディアと位置づけている。

 これについてケンコーコムの後藤氏は、「ブログとの組み合わせでユーザーの行動体系が変化する」と予測する。後藤氏自身、RSSリーダーを導入してから、ブラウザの「お気に入り」を利用することがほとんどなくなったという。結果、インターネットを利用する際の入り口は、グーグル、メール、RSSリーダーの3つに集約された。RSSもまた、インターネット上でのユーザーの動線を大きく変える可能性を秘めている。

 この点について、ドリコムの内藤氏は、「テレビそのものが普及しないと、テレビ番組が揃っていてもCMが成り立たないように、RSSもRSSリーダーがある一定、普及しなければ、メディアとして成り立たない」と考える。RSSリーダーの普及は、今年後半から来年前半がポイントになるのではないか、というのが内藤氏の考えだ。

アクシブドットコム 代表取締役CEO 宇佐美進典氏
アクシブドットコム代表取締役CEOの宇佐美進典氏

 ちなみにアマゾンでは、アマゾンWebサービスというものを提供しているが、内藤氏はRSSによって、このサービスに近いものを提供できると考えている。アマゾンのようなサービスは構築に大きなコストがかかるが、RSSならそういったことはない。そういう意味で、中小のECサイトにとっても、RSSはユーザーへの浸透が待たれる技術と言えそうだ。

 ちなみに、価格比較サイト「ECナビ」では、RSSリーダーに代わる簡易ブログリーダーを搭載しているという。同サイトを運営するアクシブドットコムの宇佐美進典氏は、これがRSSに近い役割を果たしていると言う。

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