つい最近まで、既存のネット企業株の上昇や新規に上場したネット企業の高すぎる株価から、インターネットバブル再来かとの懸念の声が多く聞かれた。また、この連載の2回目ではTim O'ReillyがWeb 2.0の概念の急速な普及によるバブルの発生を懸念していると紹介した。しかし、1999年から2000年当時の米国で起こったようなインターネットバブルが日本で起こることは当分ないだろう。
インターネットバブルという言葉は、シリコンバレーのハイテク業界専門誌「Red Herring」の編集者であるアンソニー・パーキンスとマイケル・パーキンスの兄弟が1999年11月に「The Internet Bubble」を著して以降、広く世の中に普及した。彼らが指摘したのはインターネットによる社会の変革の可能性は現実であるものの、インターネット企業の株価は現実離れしているということだ。彼らは更に一般の投資家に対してインターネット企業の株を手放せとアドバイスをしていた。
その後、当時もてはやされていた米国のインターネット企業の多くは淘汰され、2000年3月に5000ドルを超えたNASDAQの株価指数は、同年4月に史上最大の暴落を記録して、2002年には1000ドル台にまで下落した。このことで、パーキンスらの予測はほぼ正しかったことが証明された。
彼らの著書では、特にインターネットバブルを引き起こした当事者としてのベンチャーキャピタル(VC)や投資銀行といったインサイダーの様子が詳細に描かれており、インサイダーだけが得をして、一般投資家が損をした構図が非常にわかりやすく説明されている。この著書はその後、様々に解釈されているが、特にバブルの原因がインサイダーの代表であるVCの錬金術にあったことには異論の余地がないだろう。
確かに、インターネットバブルを引き起こした責任者としてのVCの錬金術に関しては色々な意見があろう。しかし、主にシリコンバレーのVCにはインターネット産業を丸ごと作り上げてきたという輝かしい功績もある。逆に考えると、産業を丸ごと作り上げるくらいのことができてはじめて、バブルを引き起こすこともできるのだろう。
翻って、我が国のVCを考えるとどうだろう。下のグラフは、2000年から2005年までの間の日本と米国のVCによるベンチャー企業への年間新規投資額を比較したものである。VCを経由してベンチャー企業に流入する金額には大きな差があることは一目瞭然である。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス