大手企業のマーケティングに使われるモバイル広告--ディーツーコミュニケーションズ

永井美智子(編集部)2006年04月12日 14時37分

 特集第1回では、モバイル広告市場の概況を紹介した。ここからは、業界のキープレイヤーたちの現状と今後の戦略について見ていこう。今回はキャリアレップ最大手である、ディーツーコミュニケーションズ(D2C)を取り上げる。

 キャリアレップとは、通信キャリアのポータルサイトや公式サイトの広告を取り扱う広告会社だ。広告を掲載したいさまざまなサイトの広告枠を管理し、広告主や広告代理店に対して提案する。

 D2Cは携帯電話業界の最大手であるNTTドコモが、広告代理店最大手の電通、NTTアドと合弁で2000年に設立したキャリアレップだ。ドコモのiモードの広告業務を中心に、公式サイトのピクチャー広告(バナー型の広告)やメール広告などを取り扱う。

購買行動に直結するメール型広告

 D2Cは電通の流れをくんだ広告やマーケティングの企画開発力と、ドコモのiモード契約者数である約4600万のユーザーに向かって広告を配信できる点に強みを持つ。

メッセージF(フリー) 画面:メッセージF(フリー)の例。文章だけでなく、画像も表示できる

 それを生かして、現在、同社がもっとも力を入れているのがプッシュ型広告の「メッセージF(フリー)」だ。メッセージFは、あらかじめ受信許諾をしたドコモのユーザーに対して広告をメールのような形で配信するサービス(画面)。ただし、メールとは別の専用受信ボックスに配信される。広告の受信にパケット通信料がかからないこともあって、3月26日時点で約880万人のユーザーがいる。現在も、週10万人前後のペースで増加しているという。

 D2CはメッセージFのほかに、公式サイトのピクチャー広告や、企業のキャンペーン情報を掲載するサイト「とくするメニュー」などで収益を得ているが、代表取締役社長の藤田明久氏によれば、2006年はメッセージFが最も大きな売上になる見込みだという。なお、2005年まではピクチャー広告が最も大きな割合を占めていた。

 メッセージFの大きな特徴は、ユーザーの性別、年齢、居住地という属性別に、時間帯を指定して広告配信ができる点だ。商品の特性に合わせて広告を見せる相手を選べるうえ、購買行動の直前に配信できるため、効果が上がりやすいという。

 ビデオリサーチインタラクティブの調査によれば、メールを受信したらすぐにそのメールを開くと答えた人は、全体の74.9%にのぼるという。また、モバイルを使うシーンは外出先が多いため、実際の買い物につながる可能性が高い。

 例えば実際にあったキャンペーンの例として、百貨店に新しい化粧品フロアを開設したときに、周辺の一都三県に住む30代の女性に対して午前中に広告を配信したところ、大きな効果が得られたという。これまでは新聞の折込み広告や駅広告などで広く周知するしかなかったが、ターゲットを絞って午前中に配信することで、広告を受け取ったユーザーが友人たちと一緒に、夕方以降に店舗を訪れたというのだ。

 「今までの広告媒体では、できそうでできなかったことが可能になる」(藤田氏)

 こういった特性のためか、広告主は公式コンテンツプロバイダに加え、飲料や消費財などのナショナルクライアントと呼ばれる大手企業がキャンペーンの一環として利用するケースが増えているという。さらに、選挙で投票に行くよう呼びかける広告が配信されるなど、広告主の広がりも出てきている。

 2005年7月にはテキストだけでなく、画像の添付もできるようにした。配信単価はテキストのみの場合よりも20%高くなっているが、より表現力を高めたい広告主に受け入れられているようだ。

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