需給面の懸念を改善したグリー、野村証券の目標株価引き上げ契機に大幅高

 年の瀬を迎えた株式市場で、モバイル中心にソーシャルネットワーキングサービス(SNS)「GREE」を運営するグリーが存在感を高めてきた。株価は足元で急上昇しており、12月21日には11月9日に付けた株式分割を考慮した上場来高値5710円に急接近している。

 グリーは11月13日に株式売り出しの実施を発表。リクルートやグリー代表取締役社長の田中良和氏などが保有する株式811万3000株(オーバーアロットメント分含む)を売り出す。新たに株券を発行するわけではないので1株あたり価値の希薄化はないが、固定株主の保有株が市場に流出するため、需給関係が急速に悪化。11月9日に5710円まで上昇していた株価は需給悪化懸念の浮上を受けて4000円を割り込む水準まで下落する場面もあった。株式売り出し価格は4520円で、株価は売り出し価格を意識した上値の重い展開となっていた。

 業績自体は絶好調を継続。2010年6月期業績計画は10月の第1四半期決算発表に合わせて早くも増額修正を発表しており、非連結売上高は233億円から271億円(前期比94.3%増)、経常利益は119億円から139億円(同66.9%増)、最終利益は64億円から74億円(同65.5%増)へ、それぞれ修正している。GREEの会員数が計画を上回る伸びとなっており、広告収入、課金収入とも好調に推移する。広告宣伝費やデータセンター増強のための費用などを積み増ししても、期初計画を上回る利益を計上できる見通しとなっている。

 足元でグリー株が躍進した直接的なきっかけは、野村証券による大幅な目標株価の引き上げ。投資判断「1(買い)」を継続し、目標株価を6700円から9000円に引き上げた。「自社開発SNSゲームや積極的な広告宣伝を背景に足元の業績は想定以上と推察。今後世界的にSNSゲームのモバイル展開の重要性が増すと見られ、世界に先駆けモバイル市場が花開いた日本市場で、持続的な開発、運営力を発揮しトップランナーの地位を確立した当社の投資魅力は大きい」とコメントしている。グリー株は株式売り出しの発表後、需給関係が悪化して動きが鈍っていたが、それも売り出し株の受け渡し期日を通過して最悪期を脱していた。需給関係が改善傾向に向かい始めた矢先、野村証券が目標株価を引き上げ、株価に大きなインパクトを与えた格好だ。

 株式市場は年内営業日を残り数日とし、例年通り、高い売買シェアを握る外国人投資家の休暇入りなどを背景に閑散としている。時価総額の大きい東証1部上場銘柄を手掛けづらい環境であり、自然と個人投資家が売買の主体である新興市場上場銘柄がクローズアップされやすくなっていた。値動きの良さを好む短期的な資金がグリーを始め、サイバーエージェントやディー・エヌ・エー、カカクコムなどに流入。マザーズ市場の売買代金は12月18日、21日と連日で今年最高を記録した。需給面の懸念がほぼ払拭されたグリーは、そのマザーズ市場の中核銘柄として業績面を再度評価される展開に入っている。

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