ソニーの業績が順調な回復をみせている。携帯音楽プレーヤー「WALKMAN」の健闘に加え、デジタルカメラ、液晶テレビなどの復調もあり、2010年3月期の連結業績見通しに上方修正の可能性が高まっている。
まず注目したいのが、「WALKMAN」の健闘ぶりだ。WALKMANは世界シェアでアップルの「iPod」に大きく水をあけられていたが、ここにきて、若者向けの新機種の投入などが功を奏して、日本国内のシェアではiPodをWALKMANが一時的ながら上回るという調査結果も出始めている。
高精細な有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)の採用や、CDやインターネットの配信サービスを通じて取り込んだ楽曲に合わせて、歌詞を画面に表示する機能を搭載して「カラオケ」としても楽しめるようにした。さらに、WALKMANは、iPodとの差別化戦略として全モデルでの音質の向上を打ち出している。ファッション性や操作性の斬新さに優れたiPodに対して、WALKMANは音質の追及にウエイトを置いている。現在は、依然として世界シェアでは圧倒されているものの、徐々にその差を詰めて行くことが予想されている。
ソニーは2010年3月期の連結営業損益について1100億円の赤字を見込んでいる。その背景には、液晶テレビを中心としたエレクトロニクス部門をはじめ、家庭用ゲーム機器、携帯電話機の3部門で営業赤字が継続すると見込んでいたためだ。ところが、これらの部門の業績がいずれも予想を上回る好調推移となり、赤字幅が縮小する可能性が浮上している。
さらに、2010年3月期下期からは、液晶テレビでは、発光ダイオード(LED)をバックライトに使用した「LEDテレビ」や3D(3次元)テレビの本格投入を目指す。また、家庭用ゲーム機では、「PSP go」「新型PS3」の投入、携帯電話では、スマートフォンの投入効果が顕在化してくる見通しだ。
特に、ソニーは3Dテレビの分野で主導権の獲得を狙っている。同社のハワード・ストリンガーCEO(最高経営責任者)がドイツ・ベルリンで現地9月2日に開催されたコンシューマー・エレクトロニクスショー「IFA2009」で「3Dによる新たな映像体験を魅力的なハードウエアおよびコンテンツを通じて家庭に届ける」と発言し、3Dテレビを2010年の早い時期に発売すると発表した。
同社は、既に3D対応の映画用プロジェクターを販売しているのをはじめ、グループ会社を含めて3Dコンテンツの制作体制も整えている。グループで保有している映画などのソフトや、AV機器、ゲームなどのハードを含めて総合的に家庭向け3D市場の開拓を目指す。
同社の株価は、8月10日に年初来高値2810円を付けて以降調整を強いられていた。9月15日の2410円を底に、反転上昇軌道に乗り、先週末の18日終値は2615円となっている。今後中期的には、業績の改善を背景に3000円台乗せに向けての上昇が期待できそうだ。
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