ADSL(電話線を使用したデジタル高速通信)接続大手で、携帯電話事業にも参入しているイー・アクセスが連結利益の黒字化に向けて積極的な姿勢をみせており、それらが徐々に功を奏しはじめている。こうした動きに連動して株価も反転上昇の兆しをみせている。同社の今後の業績動向と株価の先行きを探った。
携帯電話会社各社が1月9日に明らかにした2008年(1〜12月)の携帯電話の純増数累計で、イー・アクセス傘下のイー・モバイルは91万4200件となった。2007年3月に携帯通信事業に参入したイー・モバイルは、ワイヤレスデータカード、データ通信専用端末と低価格パソコンのセット販売などが功を奏した。
イーモバイルの12月の新規契約数から解約数を差し引いた月間純増数は10万8600件(11月は9万7300万件)となり、2008年12月末での携帯電話契約数は112万100件と100万件の大台を突破した。この100万件の突破は、同社の参入した携帯電話事業が軌道に乗ってきた証拠といえる。同社は、足元で年400億円程度の連結営業損失を計上しているが、2010年3月期の第3四半期には四半期ベースで黒字転換する可能性が高まってきた。
さらに、イー・アクセスは、従来45.1%出資してきた同業のアッカ・ネットワークスに対してTOB(株式公開買い付け)を実施することを発表している。2009年5月をメドに吸収合併する予定だ。高速大容量の光ファイバー回線に押されて、今後ADSL市場の縮小が避けられない中で、吸収合併により、設備の集約などにより合理化を狙っている。
また、イー・アクセスは昨年2008年12月17日に、同社と米AOLの間で、日本市場におけるAOLサービスに関する戦略的事業提携の再構築について合意したと発表した。
その内容は、ADSLを中心としたインターネット接続事業の強化を目指すイー・アクセスと、ポータル事業での広告収入拡大を見込むAOLとの間で意見が一致した結果、2009年1月から、現在のAOL事業を接続事業とポータル事業に分離し、接続事業は従来通りイー・アクセスが提供主体としてAOLブランドでサービスを継続することとした。一方でカスタマーサポート機能の強化や、国内アクセスポイント利用料金の低廉化、海外ローミングのブロードバンド対応などを行うことで一層の強化を図ることにしている。
ポータル事業はAOLの関連会社であるAOLアジアリミテッドが提供主体として各種コンテンツサービスを開発し、イー・アクセスはAOLアジアが提供するポータルの運用を支援する。
イー・アクセスの株価は、昨年のリーマン・ショック直前の9月11日に6万8300円をつけて以降下落トレンドとなり、10月28日には3万9050円の安値をつけた。その後は4万〜5万円をレンジとしたボックス相場が続いたあと、12月半ばから上放れの兆しをみせはじめ、現在は5万円台での推移となっている。先週末17日の終値5万3500円で試算した配当利回りは4.29%と非常に高い水準にある。中期的には、7万円台の株価上昇も期待できそうだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス