ソニーが12月9日に発表した全世界で1万6000人(正社員約8000人、非正社員8000人)という大規模な人員削減計画が株式市場にも大きな衝撃を与えている。この人員削減を含む今回の構造改革が、今後の同社の株価にどうゆう影響を与えるのかを探った。
今回明らかにされた構造改革は、2009年度末までに1000億円以上のコスト削減を狙ったもの。大幅な人員削減のほかに、世界の製造拠点57カ所のうち約10%(5〜6カ所)を閉鎖。また、2009年度のエレクトロニクス分野の投資については、選択と集中を推進することにより、従来の中期計画に比べ約30%削減するとしている。
具体的には、2008年度内に半導体事業において、携帯電話向けCMOSイメージセンサーの増産計画の一部を外部へ生産委託することにより、投資の削減をする。また、テレビ市場での急激な需要減速を受け、欧州市場への供給拠点のひとつであるスロバキア・ニトラ工場の液晶テレビ増産投資の延期を決定した。さらに、テープなど記録メディアの生産拠点である仏・ダックス工場など海外2拠点での生産を終了するとしている。
同社は、最近では2005年9月にも大規模なリストラを発表している。この時は、総人員15万人のうち1万人(国内4000人、海外6000人)の人員削減、生産拠点については65カ所から54カ所への削減などにより約2000億円のコスト削減を目指した。
今回の構造改革について外国証券のアナリストは「前回の構造改革は、いわば攻めの部分が多かったように思うが、今回は世界的な金融危機に伴う突然の不況深刻化や、円高の進行に対応するために、緊急的に打ち出さざるを得なかった計画のように見受ける。年明け1月の2009年3月期の第3四半期(2008年4〜12月)決算発表時に明らかにされる今後の業績への影響に注目したい」としている。
ソニーの最も大きな課題は、国内メーカーとしてはトップシェアを占めている液晶テレビ事業で、依然として赤字が拡大する恐れを抱えていることだ。これは、とりもなおさず同社の主力事業であるエレクトロニクス事業の分野で、いまだに将来の業績拡大をけん引する成長ドライバーとなりうる商品が見出せていないということになる。世界的なブランド力はあるものの、競合メーカーの技術力の向上により、商品の品質に差が小さくなり、価格面でのプレミアムが成立しにくくなっている。
さらに、世界シェアトップの韓国サムスン電子は、ウォン安の影響もあり、海外での価格面での優位性が今後も十分に発揮される可能性が出てきた。1円の円高で約40億円の損失を被るソニーにとって一時1ドル=88円台まで進み、今後も円高にふれる可能性が否定できない中で、利益が大きく棄損される懸念は大きい。
ソニーの株価は、今年2008年年初(1月10日)につけた年初来高値6300円からほぼ一貫して下落トレンドを辿り、12月2日には、2000年3月に実施した株式分割を考慮したベースで、1992年以来ほぼ16年3カ月ぶりの安値をつけ、同4日には1717円の年初来安値をつけた。
今3月期の連結営業利益は、2000億円(前期比47%減)を見込んでいるが、不況による販売低迷や価格競争激化、円高による利益の目減りなどを考慮すると、今3月期業績のさらなる減額修正は避けられそうにない。したがって、現在1860円(12月12日終値)の株価で、連結PERでも12.4倍と割安水準となっているものの、今後来春にかけて、一度は1500円レベルにまで下落する場面も覚悟したほうがよさようだ。
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