米国発の金融恐慌が世界を駆け巡り、日を追うごとに深刻化している。東京株式市場では、連日主力株に売りが継続し、先週末3日には日経平均株価が終値で約3年4カ月ぶりに1万1000円台を割り込み、今週10月7日には、約4年10カ月ぶりに一時1万円の大台を割り込む場面もあった。こうした中で、個人投資家の指標銘柄とされるソフトバンクの株価が、全般相場の低迷にも増して下落が加速している。その背景にいったい何があるのか。
ソフトバンクの株価は、同社がアップル社の携帯電話「iPhone 3G」を日本で発売した7月11日からブームがほぼ一巡した8月11日に高値2060円を付けて以降、下落トレンドを強いられている。10月入りした先週後半には、株価はとうとう1300円台を割り込んだ。
ソフトバンクの株価下落トレンドが加速した背景について外国証券のアナリストは「iPhone 3Gの人気一巡感もさることながら、ソフトバンクの場合は、6月末時点での有利子負債が2兆5400万円に達しており、投資家の間で“巨額な借入金を抱えている”というイメージが強い。米国発の金融恐慌が深刻化するにつれて、世界的に金融機関での資金の流れが滞る中で、ソフトバンクについては資金繰りに対する漠然とした不安感がつきまとっているようだ」としている。
確かに、ソフトバンクの株価は、8月11日以降先週末の10月3日までに38.5%下落しており、同期間のTOPIX(東証株価指数)の下落幅18%を大きく上回っている。
こうした中、ソフトバンクは10月1日、みずほコーポレート銀行など37行と総額2010億円の融資枠(コミットメントライン)計画を結んだと発表した。ただ、融資の総枠は前回に比べ10億円増えたものの、参加行数が10行減少したことが一部で懸念され、先週後半の株価大幅下落につながったようだ。米金融危機が深刻化する中、有利子負債の多い企業の資金繰りを懸念する見方が浮上しており、株価が1300円を割り込んだ水準では、連結PERは11倍台にまで低下して、一段と割安感が顕著となっている。
最近の株価下落の要因とされる有利子負債の多さと、それに伴う資金繰り懸念についても会社側では「割賦債権流動化は順調に進んでいる。キャッシュフローは引き続き問題なく循環しており、借入金の期限前弁済が続けられる十分な余力を備えている」としている。
株価が大きく下落してきたことについて、UBS証券は10月1日付のレポートで、投資判断を従来の「中立」から「買い」に引き上げた。また、日興シティーグループ証券も10月2日付レポートで、投資評価を従来の「中立」から「買い」に引き上げた。ただし、目標株価は従来の2050円から1770円に引き下げた。また、同レポートでは「一部メディアで同社の資金繰りの悪化を指摘する報道があったが、端末割賦債権の発生と回収のバランス、新たな証券化、コミットメントラインの設定など資金ショートの可能性は低い」と指摘している。
ソフトバンクの現在の株価は、中長期的な視野に立てば割安水準にあるといえよう。しかし、世界的な金融危機の深刻化という状況は、負債水準が高く、国内外の企業への投資を積極的に行ってきた同社にとって向かい風の環境ということは確かだ。
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