任天堂の株価がここにきて再び5万円台を割り込んできた。米国金融機関の経営危機観測が深刻化するなかで、東京株式市場の全般相場が下落トレンドとなる中、任天堂も売りのターゲットとなっている面もあるが、業績面では順調な推移をみせているだけに、市場からは「売られすぎでは」との声も聞かれる。果たしてどうしてここまで売られるのか、その背景を探った。
同社は8月29日、2009年3月期の9月中間期および3月期通期の連結業績を上方修正した。これは、会社側の前提為替レートを、従来の1ドル=100円、1ユーロ=155円から、1ドル=105円、1ユーロ=160円へと変更したことによる上方修正がある。さらに、家庭用ゲーム機の「Wii」のハードの販売台数見通しを2500万台から2650万台へ、同ソフトの販売見通しを1億7700万本から1億8600万本へ、「ニンテンドーDS」のハードを2800万台から3050万台へ、同ソフトを1億8700万本から1億9700万本へとそれぞれ上方修正した。
修正後の9月中間期の業績予想は、売上高8300億円(修正前:7600億円)、営業利益2450億円(同2100億円)、経常利益2800億円(同2150億円)、純利益1650億円(同1250億円)となった。さらに、通期の業績予想は、売上高2兆円(修正前: 1兆8000億円)、営業利益6500億円(同5300億円)、経常利益7000億円(同5500億円)、純利益4100億円(同3250億円)となり、売上高は初めて2兆円を突破する見通しとなった。
また配当金について任天堂はこれまで、連結営業利益の33%もしくは配当性向50%のいずれか高い金額を年間配当とし、9月中間期にそのうち140円を固定し、残りを期末に支払っていた。しかし、ここ数年の業績好調で、中間期と期末の配当金額に大きな差が出てきたため、今後は第2四半期の連結営業利益の33%を9月中間期に支払い、残りを期末に配当する方針に変更することを明らかにした。これにより、今期の配当金は、9月中間期に640円、期末に1040円、年間で1680円(前期実績は1260円)の予定となった。
任天堂の株価は、上方修正発表翌営業日の9月1日に5万4600円の高値をつけて、そこから下落トレンドをたどり、9月10日には5万円台を割り込んできた。外国証券のアナリストは「株価が下落しているのは、米国や欧州で比較的短期な投資スタンスを行っているファンドから利益確定の売りが継続的に出ているようだ」としている。
期中で上方修正するほど業績が好調にも関わらず、信用取り組み面で売り残に比べて買い残が多い(東証信用残の信用倍率は9月5日申込現在で4.55倍)銘柄をターゲットとして売りを仕掛ける動きもある。特に、任天堂は株価指数の日経平均225種採用の値がさ株で、指数への寄与度も大きいことから、株価の動き自体が乱高下する習性もある。
もし、今後も下落傾向が続き、年初来安値の4万5600円を下回ると、一段安となる懸念もある。しかし、一方では連結PERは16倍台、配当利回り3%台と株価指標面では十分割安水準にある。したがって、全般相場が反転上昇機運となった場合反発する可能性もある。
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