東京株式市場では日経平均株価の下落が加速して、3月17日に付けた年初来安値の1万1691円、主力銘柄にも年初来安値を更新する銘柄が目立っている。こうした全般下落基調の中にあっても、際立って堅調な値動きを保った銘柄がある。総合電機トップの日立製作所だ。
同社の2009年3月期の第1四半期(2008年4〜6月)の決算(米国会計基準)は、売上高2兆5435億円(前年同期比2.7%増)、営業利益776億円(同3.2倍)、税引前利益836億円(同96%増)、純利益315億円(前年同期は136億円の赤字)と好調なものとなった。これまで続けてきた構造改革の効果が出て、ハードディスク駆動装置(HDD)事業の黒字化が進んだことに加え、情報システム部門の採算が大幅に改善したことが寄与した。
部門別の状況をみると、情報通信システム部門は、ソフトウェアがミドルウェアを中心に好調に推移したのに加え、システムサービスでも金融機関向けを中心としたシステムインテグレーションやソフトウェアやアウトソーシング事業が堅調に推移した。また、ハードウェアも通信ネットワークやATM(現金自動取引装置)が伸長したことから、売上高は前年同期比7%増の5936億円、営業利益は前年同期から318億円改善され235億円の黒字転換となった。
電力・産業システム部門では、電力事業が国内の原子力発電施設や海外の石炭火力発電設備が堅調に推移したほか、鉄道車両システム、昇降機、日立建機などの好調が寄与し、売上高は前年同期比12%増の8178億円となり、営業利益は同7%増の262億円となった。さらに、高機能材料部門では、日立金属が自動車関連やIT(情報技術)関連部品が好調に伸長し、日立電線も情報ネットワーク事業が増収となったのに加え、日立化成工業の子会社売却の影響により、売上高は、前年同期比ほぼ横ばいの4556億円、営業利益は同25%増の360億円となった。
第1四半期決算の発表時点では、2009年3月期の業績予想の売上高11兆1000億円(前期比1.1%減)、営業利益3800億円(同10%増)、税引前利益3300億円(同1.6%増)、純利益1500億円(同2.5倍)を据え置いた。しかし、9月中間期のHDD事業だけで、すでに前年同期比500億円超の営業利益増が見込まれることなどから、上方修正の可能性が高まっている。
こうした、業績面での裏付けに加えて、日立の株価堅調には株式売買の需給面での背景があるという。日立と同じ総合電機大手の東芝の株価が6月4日の953円高値から9月5日には530円まで大幅に下落しているのに比べ、日立の株価は、6月4日高値791円から8月6日には843円の年初来高値をつけて、9月5日でも781円にとどまっている。
この株価の動きについて準大手証券の投資情報部では「東芝と日立の株価推移の極端な明暗を分けている要素のひとつは、株式の信用取引需給の差にあるようだ」としている。東芝の株価が下落に転じた6月以降の東証信用倍率は、2倍台程度から徐々に買い残が増えはじめ、現在(8月29日申込現在)は6.31倍(売り残高551万株、買い残高3478万株)へと膨らんでおり、将来の売り要因となる買い残高が、株価上昇の重荷となっているようだ。
一方、日立は7月上旬から売り残高と買い残高が逆転して、売り残高が買い残高を上回る売り長状態とっており、現在(8月29日申込現在)の信用倍率は0.3倍(売り残高491万株、買い残高146万株)となり、将来の買い要因となる売り残高が買い残高を大きく上回っていることが、先高期待感となって株価の堅調さにつながっているようだ。
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