ソニーの株価が8月9日以来の6000円台を回復し、上昇基調に拍車が掛ってきた。このところ人気が高まってきている直接的な背景にあるのは、11月26日にアラブ首長国連邦(UAE)ドバイ・インターナショナル・キャピタル(DIC)がソニーに資本参加したことを明らかにしたことがポジティブサプライズとなっている点だ。
先週はこのDICのような、いわゆるSWF(ソブリン・ウエルス・ファンド)と呼ばれる海外の政府系投資ファンドに関するニュースが相次いだ。
同26日にはほかにも、中国のSWFである「中国投資有限責任公司」の日本株への投資が伝えられた。さらに、同27日にはアブダビ投資庁(ADIA)が米シティグループへの出資を発表。そして、同29日にもロシアが投資規模約2兆円で政府系ファンドの運用を2008年からスタートすることが報じられた。
この政府系ファンドは、中東諸国が原油販売で得た潤沢なオイルマネーを運用したり、中国が急速な貿易拡大で膨らんでいる外貨準備高の一部を運用したりしているもので、米財務省の推計によると運用総額は2兆5000億ドル(約275兆円)に達しているとされ、すでにヘッジファンドの資金総額を超えている。7〜10年後には10兆ドル(1100兆円)を突破する見通しという。
国別では、アラブ首長国連邦の約1兆ドル(推定)を筆頭に、サウジアラビア、クウェート、ロシアなど産油国の比率が高く、ここ数年の原油価格の急上昇に伴って運用資金量が飛躍的な拡大をみせている。
今回とくに、サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題に関連した巨額損失に苦しむ米国最大の金融機関シティグループに対して中東の政府系ファンドが“救済”ともいえる金融支援に踏み切ったことは、グローバルマネーの大きな流れの変化の象徴的な出来事といえる。
ただ、中長期投資を原則とする中東資金がソニーを選択したことは、国際優良株としての一定の評価を受けたとの印象を市場関係者に与え、これが買い材料となっているようだ。
外国証券のアナリストは「ソニーは、デジタルカメラなど主力のエレクトロニクス製品で依然として世界的にブランド力を保持している」と指摘。さらに、任天堂の優勢を許してきた家庭用ゲーム機でも11月半ばの米国での「プレイステーション3」の値下げを行うと同時に低価格版を発売したことで、最近数週間の売上高が以前の2倍以上に増加するなど、クリスマス商戦でも健闘をみせている。
また、ソニーが世界で初めて商品化した有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)テレビを11月22日から全国で予約販売したところ、1日でほぼ完売するなど注目を集めた。現在の11型で販売価格20万円、月産2000台では普及は限られるものの、同社の有機ELテレビは薄さ3ミリという画面と高精細で注目を集めており、今後の大画面化および量産による価格低下により、液晶、プラズマに次ぐ第3の薄型テレビとして世界市場を席巻する可能性も秘めている。
さらに、2007年10月11日に東証1部に新規上場した子会社のソニーフィナンシャルホールディングス(SONYFH)が11月16日に発表した2008年3月期の9月中間期の連結決算が、経常収益4046億円(前年同期比14.1%増)、経常利益275億円(同54.2%増)、純利益167億円(同51.8%増)と大幅な増収増益となったことも今後のソニーの株価にも大きなプラス要因となりそうだ。
ソニーの株価は8月17日に年初来安値の5050円をつけて以降、最近までほぼ5100〜5900円の値幅でのボックスで相場となっていた。ところが、今回の中東政府系資金の資本参加やPS3の販売好調、有機ELテレビの商品化などを好感して、11月22日の5190円を底に急反騰に転じ、一気にボックスを抜けて6000円に乗せて、11月29日には6090円までの上昇をみせている。株価6000円でも連結PERは18倍と割高感はない。中期的には7000円台を目指した展開も期待できそうだ。
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