携帯電話向けコンテンツ開発大手のドワンゴの株価が、9月25日につけた安値9万4700円から、先週末10月12日には一時、20万円高値をつけるなど、わずか12営業日で2倍以上にハネ上がる急騰を見せている。この短期間に株価がなぜこれほど急騰したのか、その背景と今後の株価動向を探った。
株価急上昇の背景には、ドワンゴの子会社であるニワンゴが運営する動画サイトで、ネット上に投稿された動画に掲示板のような感覚で文章を書き込めるサービスが大きな特徴の動画共有サイト「ニコニコ動画」への高い評価がある。
略して「ニコ動」とも呼ばれるこのサービスは、書き込んだコメントは保存され、動画にオーバーレイして一緒に再生される。これにより、不特定多数の人間がその動画(の特定の場面)に対するコメントを共有することができるというものだ。
このサイトは2007年1月15日の正式開設以来、爆発的な人気を集めているが、その一方で一部からは「著作権侵害の温床になる」として問題視する声も浮上していた。
株価の上昇に拍車が掛ってきたのは10月2日。2日のドワンゴの株価が一時、前日比2万円ストップ高の13万6000円まで一気に買い進まれ、当日の出来高も前日に比べて約6倍増の1万2342株に膨らんだ。これは、前日の1日に同社が、「ニコニコ動画(RC)」について、投稿される動画の権利保護に向けた権利者との対話を強化すると発表したことが好感された。
「著作権侵害の温床になるのでは」との声に対して、今回権利者からの包括的な削除といった申し入れに対して、監視・削除体制を強化するなど、権利者保護の姿勢を鮮明にしたことが好材料と受け止められたようだ。具体的には、著作権や権利保護に関する理解・教育を目的としたページも新設するという。
ニコニコ動画は2007年10月9日時点で、ID登録者数342万人、有料の「ニコニコプレミアム会員」は10万9000人に達している。さらに、ニコニコ動画の1日当たりのページビュー数は5500万を突破し、平均滞在時間は1時間にも及んでいる。
さらに同社は、10月10日に「ニコニコ動画RC2」(バージョンアップ版)の発表を行うと同時に、ニコニコ動画の海外進出も発表した。同社は、PCとモバイルの融合により、視聴媒体を広げニコニコユーザーの囲い込み、カスタマーロイヤリティーの向上を目指している。海外進出では、手始めに10月18日から台湾向けサービスを始める。
今後、欧州や米国、他のアジア地域への進出が現実のものとなれば、業績が飛躍的に向上する可能性を秘めている。
株価面で大きく評価されたのは、10日の会見の席上でドワンゴの小林宏社長が「2008年9月期には単月ベースでも黒字化する見通し」との発言をした点だ。これまで、先行投資負担の増大で赤字が続いていた「ニコニコ動画」の黒字化の可能性に加え、携帯電話向けの電子書籍などこれまで育成中だった事業が相次いで収益化してくる見通しを示した。
ドワンゴの株価は2006年9月期、2007年9月期と2期連続した最終赤字の業績が嫌気されて、株価は低迷を続けてきた。しかし、今回「ニコニコ動画」の将来性が評価されて短期間での株価上昇につながった。短期間での株価2倍という急騰後だけに、しばらくは波乱展開が予想されるが、11月中旬に予定されている2007年9月期の連結決算発表時に合わせて明らかにされる2008年9月期の業績見通しの数値次第では、株価が一段高に進む可能性も十分期待できそうだ。
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