ゲームソフト大手のスクウェア・エニックスは12月12日、人気ゲームソフト「ドラゴンクエスト」シリーズの最新作を携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」向けに発売すると発表した。9作目となる最新作「星空の守り人」は、2007年に発売する予定だ。
ドラクエの最新作はSCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント)の「PLAYSTATION 3」(PS3)など次世代機向けにも同時リリースされる可能性は低いことから、事実上、12年ぶりにキラーコンテンツとなるドラクエが、SCEから任天堂へ“移籍”することとなる。
この動向はゲーム業界の大きな構造変化を反映しているとともに、関係各社の今後の株価動向にも大きな影響を与えることになりそうだ。
ドラクエは1986年の発売以来、すでに8作目までで累計3000万本以上、派生版も含めれば4100万本の出荷実績を誇る国内最大級の人気ゲームソフト。過去6作目(1995年発売)までは“ファミコン全盛時代”を築いた任天堂のゲーム機向けとして発売されてきたが、2000年発売の7作目以降は「プレイステーション」シリーズを展開するSCEのゲーム機向けに“移籍”していた。
ドラクエがSCEに移行した背景には、過去何度かあった次世代ゲーム機への移行において、種々の要因が絡み合い、結果としてSCEが当時最も普及している最新ゲーム機を提供している状況になったためだ。その要因に関する議論はここではしないが、それを象徴していたのがドラクエと並んでファミコン全盛時代を築いてきた人気シリーズ「ファイナルファンタジー」が、1997年にプレイステーション向けに発売されたこととなる。
ソフトメーカーとしては当然、普及しているゲーム機にソフトを出したい。ましてや、キラーコンテンツを持つメーカーであればなおさらだ。今回のニンテンドーDS向けにドラクエが発売されることは、前述のファイナルファンタジーの例と同じことが言え、つまり、今最も普及しているゲーム機がニンテンドーDSであることを象徴している出来事と見て取れる。
さらに、スク・エニは、「ドラクエ9」とは別のドラクエ派生版ソフトもニンテンドーDS向けに12月28日、任天堂の家庭用次世代機「Wii(ウィー)」向けでも2007年春にそれぞれ発売する予定だ。
Wiiの好調などにより、株価も破竹の勢いで3万円乗せが目前に迫っている任天堂にとって、今回の“ドラクエ移籍”はさらなる追い風となりそう。また、スク・エニにとっても、2枚看板(現時点でファイナルファンタジーはPLAYSTATION 3向けに展開する予定)の1つとなるドラクエが任天堂へ“移籍”することにより、ソフト販売部門の売り上げが上向きに加速する可能性も考えられる。
スク・エニの2006年9月中間期の連結決算は、売上高759億円(前年同期比2.8倍)、経常利益94億円(同3.4倍)、純利益33億円(同51%増)となった。これは、ゲームソフトや関連書籍の販売が好調なのに加え、連結対象に加えたアミューズメント施設運営子会社が寄与したためだ。
ところが、会社側は上期に発生予定だったゲームソフト開発費用の一部が下期に繰り延べられることなどを理由に2007年3月期の通期連結業績については、従来予想のまま売上高1500億円(前期比20.5%増)、営業利益190億円(同22.8%増)、経常利益190億円(同22%増)としている。しかし、実際には現在の好調が継続すれば、連結経常利益では250億円程度に上方修正される可能性が高まっているようだ。
ドイツ証券は12月13日付のスク・エニに関するリポートで、同社に対する目標株価を従来の2420円から3000円に引き上げ、レーティングを「Hold(中立)」で継続した。主な理由は、2007年以降のタイトルの発売予定および発売時期を一部公表しており、その情報を業績予想に反映させたためとしている。
スク・エニの株価は今回の“ドラクエ移籍発表”が好感されて、13日に株価を3000円に乗せてきた。その後は3000円を挟んだ動きとなっている。今年の年初来高値は2006年1月12日に付けた3440円。2007年春にかけてジリ高歩調をたどり、この水準に接近する期待感が高まってきた。
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