米国株式相場が史上最高値に急接近し、6年8カ月ぶりの高値水準に達するなど強調展開となっているのと比べて、日本の株式市場は依然として薄商いで方向感に乏しい相場が続いている。
こうした状況下、主力ハイテク銘柄の中で株価が再び1000円に急接近するなど異彩な強さをみせているのが三菱電機だ。いわゆる重電系の総合電機3社(日立製作所、東芝、三菱電機)のなかでも最も売上規模の小さい三菱電機の株価が、日立(600円台)、東芝(700円台)を大きく引き離しているのだ。三菱電機の業績好調の背景と今後の展開について探った。
三菱電機は9月19日、2007年3月期通期の連結業績見通し(米国会計基準)について上方修正を発表した。売上高の3兆7000億円(前期比2.7%増)は据え置いたものの、営業利益は1750億円から1800億円(前期比14.1%増)へ、税引き前利益は1600億円から1650億円(同8.3%増)へ、純利益も1050億円から1200億円(同25.4%増)へとそれぞれ上方修正した。
同社が9月中間期の連結決算の集計を前に業績の上方修正に踏み切ったのは、期初見通しがかなり控えめだったことに加え、電子デバイス部門を除く重電、産業メカトロニクス、情報通信、家電などすべての部門の営業利益が会社側の当初予想を上回ったためだ。
こうした業績の好調な推移を受けて、増配も明らかにし、1株当たりの中間配当は前年の3円から4円に増額する。年間配当(前年度実績は8円)予想は未定だが、佐藤行弘専務執行役は「デジタル家電から従来型産業まで設備投資需要はすそ野が広く底堅い。過去には(年間配当が)10円の実績もあり、それに向かって努力したい」と前向きな姿勢をみせている。
会社側では、銅価格など素材市況の高騰によるコストアップや薄型テレビや携帯電話の需要のみ悩みを見込んで、下期の業績を慎重に見込んでいるものの、アナリストなど市場関係者からは再上方修正への期待感が高まっている。
外国証券の電機担当のベテランアナリストは「ひと言でいって“脱総合電機”を順調に実現できていることが収益の好調につながっているようだ。三菱電機はITバブル崩壊後の2003年4月に、不採算だった半導体事業の大半を分離して日立と統合することに踏み切った。さらに“3年連続で営業赤字なら”撤退するといった非常に厳しい原則を掲げて、欧州での携帯電話事業などに見切りをつけてきたことが収益の回復を支えているようだ」と指摘している。
中部電力浜岡原発と北陸電力志賀原発で起きたタービン損傷に伴う補修費用、米国の石炭火力プラントでの大幅な追加費用発生などで約750億円の損失を計上するほか、ハードディスクドライブや家庭用エアコンなどの事業も不振なため、9月15日に2007年3月期の連結最終損益を従来予想の550億円の黒字から550億円の赤字に転落を強いられることを明らかにした日立とは対照的な業績推移となっている。
株価面でも、今年の年初に700円水準にあった日立の株価が現在600円台後半と低迷しているのに比べて、年初に500円水準だった三菱電機の株価は1000円目前とほぼ2倍の上昇を遂げている。株価1000円としても、今期の連結予想PERは18倍前後に過ぎず、割高感には乏しい。今後は1000円台固めから1200円を目指す展開も期待できそうだ。(超眼)
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