先週末の8月25日、株式市場に再びソフトバンクショックが走った。同日のソフトバンクの終値は前日比230円安(9.7%下落)の2140円と急落、この1銘柄だけで、日経平均株価を28円(同日の日経平均株価は前日比21円安)も引き下げる結果となった。
ソフトバンク株価急落の直接の原因は、外国証券のリーマン・ブラザーズが8月24日付で「あと2つある大きな懸念材料」と題して発表したソフトバンクについてのリポートで、投資判断を「アンダーウエイト」、目標株価を従来の1125円から900円に引き下げたことだった。
同リポートでは、ソフトバンクがボーダフォン日本法人の買収に際して支払った買収費用1兆8350億円に対して得られた有形固定資産の増加分が5370億円と少なかったことや、同社のADSL事業のキャッシュARPU(1加入者当たりの実質現金収入)は2863円に過ぎず、ブロードバンドインフラ事業の正味現在価値はすでにマイナスになっている可能性があることなどを取り上げた上で、ソフトバンクの負債額の増加を懸念材料視したものだ。
これについて、準大手証券の投資情報部では「実際には、リポートの内容よりも、時価と比較して半値以下の極端に低い900円という目標価格だけが個人投資家に衝撃を与え、見切り売りと目先狙いの空売りを誘い、これが株価の急落につながったようだ。ソフトバンクについては、メリルリンチ日本証券が7月6日付けで公表したリポートで投資判断を新規に“売り”とした上で、目標株価に関しても当時の株価(2600円水準)を大きく下回る約1800円と設定したことが個人投資家に大きな動揺を与え、7月19日には一時1900円を割り込み、年初来安値1894円まで下落した記憶が甦ったことが背景にあるのではないか」としている。
その後、8月8日にソフトバンクは2006年4〜6月期の連結決算を発表し、営業損益が543億円の黒字(前年同期は31億円の赤字)、最終損益も14億円の黒字(同111億円の赤字)と黒字転換したことが好感され、株価も戻り基調となり2400円水準まで回復していた。ただ、市場関係者の多くは、秋からスタートする携帯電話のナンバーポータビリティ(電話番号持ち運び)制度に向けての多額な設備投資やブランド変更費用に対して、本当にソフトバンクが携帯電話で勝ち組となり、収益を向上させることができるかどうかを見守りたいとの積極的な判断を避けるスタンスだ。
第1四半期の好決算を発表したにもかかわらず、三菱UFJ証券も8月14日付けで新規に「4(やや弱気)」とする投資判断を設定した上で、目標株価に関してはメリルリンチとほぼ同じ1870円と設定するなど、アナリストの同社に対する見方は弱含みの方へと傾いているようだ。当面は9月下旬にも明らかにされる携帯電話の新たなサービス戦略に関心が集まりそうだ。
外国証券のベテランアナリストは、「今回ソフトバンクの目標株価を900円としたリーマン・ブラザーズ証券は、今から6年半前のITバブル期末期の2000年2月3日に“ソフトバンクの目標株価をそれまでの10万円から40万円にする”というリポートを出して市場に衝撃を与えた過去がある。株価は短期間に急騰したものの、それからわずか2週間後の2月15日にソフトバンクの株価は19万8000円という上場来高値の大天井をつけて、一気に奈落の底に落ち込み、ITバブル崩壊を象徴する結果となった」と皮肉を込めて話している。
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