先週末の7月7日、ソフトバンクの株価に異変が起きた。寄り付きから大量の売り物が先行する展開で下落幅を拡大し、一時前日比295円安の2280円まで急落。終値も同275円安の2300円となって6月9日の安値2270円に迫り、2006年の年初来最安値である6月2日の2160円も目前となってきた。IT・ネット関連の盟主であるソフトバンクになにが起きているのだろうか。
7月7日にソフトバンクの株価が急落した直接の原因とされているのが、7月6日付で大手外国証券のメリルリンチ証券が発表したソフトバンクに関するレポートだ。それによると、「投資評価“売り”でソフトバンクのカバレッジを開始する。セグメント別の妥当株式価値合計では1株あたり約1800円と計算された」としている。
準大手証券の投資情報部では「このメリルリンチ証券のレポートが、あっという間に市場関係者やネット利用の個人投資家に広まり、寄り付きから大量の売りを浴び、大幅安する結果となった。特に、レポート内容の詳細が伝えられないまま、投資評価の“売り”と妥当株価の1800円という情報だけが一気に広まり、これを嫌気した現物の売りや、目先株価の下落を期待した空売りが加速したようだ」と分析している。
同レポートでは、ソフトバンクの経営戦略の基本は孫正義社長が提唱する「タイムマシン経営(インターネット先進国である米国のビジネスモデルを日本国内にいち早く導入することで、先行者利益を得る)のが基本的なビジネスモデルであった」とした上で、このタイムマシン経営は移動体通信事業(ボーダフォン日本の買収による参入)には適用することができず、過去のソフトバンクの経営の成功を受けて移動体通信事業に関しても成功につながると期待するのは危険だとしている。
さらに、「モバイルはPCインターネットを後追いしているというのが一般的な見方だろうが、モバイルはカメラ、GPS、FeliCaなどの“感覚器官”を持ち、PCとは異なるメディアとして進化を始めている。従っていかにヤフーが圧倒的なポータルだとしても、それはあくまでPCインターネットメディアとしての力であって、その競争力をそのままモバイルの競争力に転化可能かは自明ではない」とも指摘している。
ソフトバンクの株価は、2005年11月から12月までの2カ月間に、IT・ネット関連銘柄の一斉高や株式分割に関連した株価上昇期待などから、ほぼ2倍の急上昇をみせ、2006年年初の1月4日には5190円の年初来高値をつけた。それ以降、業績面では改善を見せているにもかかわらず、ライブドアショックなどを経てほぼ一貫して下落トレンドをたどり、年初来高値に比べて半値以下の水準にまで下落幅を広げている。
大手ネット証券の役員は「ソフトバンクは、値動きにかかわらずここ何年間も個別銘柄の売買代金ではトップの座を占めている。特に個人投資家の人気は絶大で“個人投資家の指標株”としての存在価値は、誰しもが認めるところだ。また、日経平均株価225種への寄与度も大きく常に投資家の注目度は非常に高い。したがって、売り方にとっては全体地合を悪化させるためには格好の売り仕掛けターゲット銘柄との見方もできる」としている。日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)以上にソフトバンクの株価が全体相場の動向をより鮮明に反映しているという見方にも一理ありそうだ。
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